Be Career
キャリア設計

95万円の助成金? 介護離職を防いで働き手不足も解消、会社も助成金がもらえる!

ログインすると、この記事をストックできます。

介護離職は、企業に介護休業の制度がないために起こるケースが多い。しかし企業にとっても介護休業にかかるコストは大きく、介護離職は人員不足という大きな痛手となる。そこで介護離職を防ぐ企業側の解決策について解説。

介護離職をする人は中小企業の従業員が多いという実態。大企業じゃないと介護休業は取れない? 中小企業が介護休業を積極的に導入できる解決策をIamでは独自取材によって調べました。

データから見える介護離職の実態

Iamではハローワークに介護離職者の実態についても調査しました。ハローワークによると、介護離職者は中小企業の従業員が多いそうです。大企業は介護休業制度に恵まれています。一方、中小企業で制度を導入している会社は少ないという実態があります。

また、介護が必要な状態になってから半年以内に辞めてしまう人が半分以上いるそうです。介護認定は最低1カ月ぐらいかかってしまうため、認定される前に辞めてしまう人が多いのです。中でも介護離職率が高いのが非正規雇用労働者。令和2年1年間の介護・看護を理由とする離職率をみると、40歳以降のパートタイム労働者は一般労働者に比べどの年代でも高くなっていることがわかります。40代は一般労働者の離職率が0.1パーセントであるのに対しパートタイム労働者は0.5%です。しかし、これが55~59歳では一般労働者が0.4%であるのに対し、パートタイム労働者は0.7パーセント。つまり、55歳を過ぎると全体的に介護離職率が上昇することが分かります。

介護離職する人は中小企業の従業員が多いという実態

なぜ中小企業では介護離職者が多いのでしょうか?それには、従業員個人の問題と勤務先の支援体制の問題があります。

【中小企業で介護離職者が多い理由①】従業員個人の問題

家族に介護者がいる人は、誰にも相談しない傾向があります。そのため、会社に相談することなくなく辞める場合が多いそうです。

かりに会社に介護制度がある場合でも、介護休業が必要な社員がいることを会社が把握できないケースもあります。また、介護保険サービスの利用方法がわからないと、従業員は介護保険サービスを利用することなく、一人で介護を抱え込んでしまい、辞めることになってしまうのです。また、企業に介護中であると従業員が打ち明ける段階で、既に退職を決意しているケースも多いといいます。介護は、長期間に渡る場合が多く、子育てと違い、見通しが立ちにくいという特徴があります。こうした点から、介護の問題はより複雑になってしまうのです。

【中小企業で介護離職者が多い理由②】勤務先の支援体制に問題がある

そもそも多くの中小企業では後述する両立支援制度が整備されていないという実態があります。従業員が介護休業の取得を会社に申し出ても、「制度がないからできない」「解雇する」などの不当な対応をされるケースもあります。

また、中小企業独自の問題もあります。中小企業は従業員が少ないため、従業員が介護のために会社を休むと代替要員がいません。古い世代の経営者は「介護は女性がやるもの」という意識があるため、従業員はそのような経営者に「仕事と介護を両立したい」と言いづらい環境があります。

さらに、企業が介護休業制度を取り入れたいと思っても方法がわからないという企業も存在します。このように介護離職は複雑な問題が絡み合っているといえるでしょう。

中小企業が介護離職を放置した場合のリスク

では、中小企業で介護離職を放置するとどうなるのでしょうか? 介護離職する人は40~50代のベテランの社員がほとんどです。しかも、管理職である場合も多いといいます。優秀な技能を持った従業員が辞めると、中小企業は人材不足になってしまうでしょう。また、それだけではありません。会社の中で活躍してきた方が突然辞めるのは大きな社会的損失になるといいます。なぜなら、「人手不足の国難」と呼ばれる現代では、介護制度を充実させないといい人材を採用できないという実態があります。優秀な人材ほど介護や育児が充実している企業を選ぶもの。そのような企業は社会に対しブランド力の低下も否めません。

中小企業が従業員の介護離職を防止するには?

【中小企業が介護離職を防止する方法①】両立支援制度を利用する

会社に制度がある・なしに関係なく介護休業や介護休暇は育児・介護休業法で定められている当然の権利です。ですから、従業員が介護休業や介護休暇を申し出たら企業は拒否することができません。また、介護休業や介護休暇は正規雇用労働者だけではなく有期契約の非正規雇用労働者も取得できます。制度がない場合、就業規則への記載も必要です。

以下は育児・介護休業法で定められている仕事と介護のための両立支援制度です。

制度の種類概要
介護休業制度・通算93日まで(3回を上限に分割可能)・要件を満たせば介護休業給付金の申請が可能(休業前の賃金の約67%が雇用保険から支給)
介護休暇制度・5日/年度/対象家族1人・10日/年度/対象家族2人以上※介護休業や年次休暇とは別に取得可能
介護のための短時間勤務などの制度事業主は以下の制度の最低1つを措置する必要がある・短時間勤務の制度・フレックスタイム制度・時差出勤の制度・介護サービス費用の助成制度
介護のための残業免除などの制度・介護終了まで残業免除の請求が可能

【中小企業が介護離職を防止する方法②】専門家の無料サポートを受ける

上記のような制度があっても、介護離職が改善されない原因として中小企業が現状を把握できていなかったり、対応策がわからなかったりすることが挙げられるといいます。

・介護している従業員がどれぐらいいるかわからない

・従業員から介護について相談を受けたが対応方法がわからない

そうした中小企業を支援するための仕組みとして厚生労働省が実施する「中小企業育児・介護休業等推進支援事業」があります。「仕事と家庭の両立支援プランナー」がスムーズな介護休業の取得や職場復帰のために無料でサポートしています。

●「中小企業育児・介護休業等推進支援事業」サイト

【中小企業が介護離職を防止する方法③】従業員が働き続けられる環境を整える

従業員が働き続けられる環境を整えると、ベテラン従業員の介護離職の防止につながります。従業員が介護について企業に悩みを打ち明けやすいようにすると、退職を踏みとどまるかもしれません。そのためには、介護休業制度を就業規則に入れて従業員への周知を図ることも必要です。

介護する従業員が介護についての全責任を負わないようにし、ヘルパーや家族の協力も得ながら仕事と両立できるようにすることが重要です。

「両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)」を利用する

コストがかかるからと介護制度を導入することをためらう企業には、「両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)」があります。助成金の申請について分からない場合、上記の両立支援プランナーに相談することで申請方法も把握できます。助成金をもらえるのは介護休業の場合と介護のために柔軟な労働形態にした場合のどちらかです。

厚生労働省「介護離職防止支援コース 」

【中小企業のための助成金①】介護休業の場合

要件をすべて満たすと後述する③の加算金額を合わせ、95万円の助成金をもらうことが可能です。

休業取得時

介護に直面した従業員と面談をし、面談記録を記録したうえで「介護支援プラン」を作成します。従業員に介護休業を連続2週間以上取得させると30万円が助成されます。また介護休暇は合計5日以上の取得が必要です。

職場復帰時

介護休業を取得した従業員が、職場復帰し面談実施後に面談内容を記録します。3ヵ月以上継続して雇用すると30万円が助成されます。ただし、該当従業員が介護休業を取得していることが必要です。

代わりの従業員を雇用

介護休業を取った従業員の代わりに新規に従業を雇用した場合、20万円助成されます。

また新規雇用ではなく、既存従業員にカバーしてもらった場合、5万円の助成となります。代わりの従業員は非正規社員であっても可能です。

【中小企業のための助成金②】介護のために柔軟な労働形態にした場合

要件をすべて満たすと後述する③の加算金額を合わせ、45万円の助成金をもらうことが可能です。

介護休業の場合と同様に「介護支援プラン」を作成します。以下の労働形態を1つ以上設け、介護中の従業員が連続6週間以上制度を利用した場合、30万円が助成されます。

・短時間勤務の制度

・残業の制限制度

・フレックスタイム制度

・時差出勤の制度

・介護サービス費用の助成制度

・深夜残業の制限制度

・育児・介護休業法を上回る介護休業制度

【中小企業のための助成金③】従業員へ介護休業制度の周知

①と②どちらにも加算される仕組みです。介護中の労働者に対し介護休業制度の説明を行ったり、社員に周知させたりすると15万円もらえます。ただし社員への説明資料(就業規則・社内報・メールなど)が必要です。

ログインすると、この記事をストックできます。

この記事をシェアする
  • LINEアイコン
  • Twitterアイコン
  • Facebookアイコン