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「遺言」を書くと人生が変わる? 50代女性が安心して生きていくために必要なこと3つ。 

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将来の不安を抱えやすい50代女性が安心して自分らしい生き方を追求するにはどうすればいいのか。50代の女性弁護士で「人生開花コンサルタント」としても活動している中原都実子さんに聞いた「キャリアや人生を諦めないためにやるべきこと」とは。

弁護士で人生を開花させる方法を伝えるコンサルタント、キャリアカウンセラーでもある中原都実子さんに聞く50代女性がセカンドキャリアを成功させる方法の後編です。人生100年時代にあって、定年退職も見えてくる50代はまだ人生の中間地点。既婚、未婚に関わらず、更年期も相まって、「これからの人生や働き方、どうしよう」と不安になりやすい時期。安心して次のステップに踏み出すためにやるべきことについて、中原さんに伺いました。

早めに人生の棚卸しをすることでセカンドキャリアが楽になる

こんにちは。弁護士で人生やキャリアのコンサルタントとして活動している中原都実子です。前編では、パートで働く50代女性が抱えがちな103万円の壁の乗り越え方についてお伝えしましたが、今回は、50代の女性が抱えるセカンドキャリアへの不安や自己実現するためにやってみてほしいことについてお伝えしていきますね。

50代は、親の介護や遺産相続などで親族と揉めやすい年代でもあります。先日ご相談にいらした方も、定年を機に再雇用枠で雇用されてみると年収がこれまでの7割減になり、さらに親の介護のことに関して家族と揉めているという内容でした。

「再雇用の条件がそんなに悪いとわかっていたら、もう少し早くに働き方について考えたのに」とおっしゃられていたのですが、意外にもなんとなく定年を迎えて「他に選択肢はないし」と、再雇用を受け入れてしまう人が多いように思います。

例えば額面で600万あった年収が実際に180万になってみるまで、自分の身に起きることとして実感ができない。リアリティがないから、早めに備えて生きることが難しくなるのも無理はありません。

特に企業で正社員として働いてきた人は、自分の強みや特性について把握されていない傾向があります。将来に漠然とした不安を抱くのも、「自分のことを知らないから」だと私は思います。

では、将来に希望を見いだせる形で自分のことを知るにはどうしたらいいのか、というと、意外と簡単です。就活生に戻ったつもりで、周囲に何が強みか客観的に聞いて意見をもらって他己分析をしたり、就活サイトの診断テストを受けてみるのが有効です。また、転職エージェントに登録してみてキャリアアドバイザーと一緒に自分の強みを整理してみると、「自分が社会に対してどんな価値を提供できる人間なのか」が明確になります。

遺言を書くことで「自分の現在地」が見えてくる

もうひとつ、有効なのが「遺言を書いてみる」ことです。

「え?50代で遺言?」と思われるかもしれませんし、私の周囲も、ほとんどの方は書かれていないのですが、遺言を書くことであることが見えてきます。

それは、「今のまま人生を歩んでいくと、自分の人生が終わる時にどうなるのか」という現実と、「本当は、どんな人生を送りたいのか」という願望です。

自分が生き抜いた先に、一体、何を残せるのかーー。

「死ぬまでにやりたいことは何か」について考える良い機会になりますし、「自分の人生」について真正面から向き合う機会になりますが、いきなり遺言を書くというと荷が重い感じがするかもしれません。

遺言書を作る前段階として、まず、自分がどのような資産を持っているのかを整理してみることから始めてみてください。土地や建物、所有するマンション、預貯金、株式や暗号通貨、保険など、何をどのくらい、どこにどれだけ持っているのかを、書き出して可視化するのです。

「そんなことで、人生が良くなるの?」と思われる方もいるかもしれません。でも、「今何を持っているのか」を知ることは、自分の現在地を知ることにもつながります。そして「何がどこにあるのか」を確認することは、自分の人生を俯瞰し、自覚すると言うことでもあります。

今いる場所がわからなければ「次ここへ行こう」とは思えません。自分が今いる場所がわかってはじめて「どこへ行こうか」と考えられるようになるものだと思います。

トラブルに巻き込まれないために契約書にはきちんと目を通す

揉め事を可能な範囲で予防することが安心して生きる鍵

法律と心と、両面から悩みや問題のご相談に乗っていて思うことがあります。

それは、人生において、揉め事とは心を疲弊させ、人生の歩みをストップさせてしまうものだということです。親や親戚の遺産問題などは事前に整理するのが難しい場合もありますが、人生の揉め事を最小限にするために、どなたにでもできることが一つあります。

それは、普通に暮らしている中で何回かある「契約」を結ぶ際に、「契約書には必ず目を通し、理解してから判を押す」ということです。

現在は非常に便利になって、多くのことがネット上で完結するようになりました。そして、多くの人が、ネット上のさまざまな「同意書」に、目を通さずに簡単にチェックして送信しているのではないでしょうか。この気軽さは自分の人生に責任を取らないという選択でもあります。いざというときに非常に不利な状況に陥ったり、大事なことを諦めざるを得なくなり、他人に流される結果になることもあります。

個人的なことになりますが、引っ越しを検討していた私達夫婦は、とても素敵な物件を見つけたのですが、賃貸借契約の内容があまりに借り手に不利なものだと判断して借りることを断念したことがあります。物件を借りる際にきちんと契約内容を把握されていないことに起因して、退去時に予想外の金額を借主が支払わなければならなくなった、とか、昔は大家さんが対応するのが普通だったことでも借主の責任でやることになっていて、納得できないというようなトラブルが少なからず起きているように思います。

契約書を読んで判を押すことは自分の人生に責任を持つこと

契約書を理解して判を押すことが習慣になると、何より、トラブルに巻き込まれるのを事前に防ぐことができ、人生の大切な局面で他人の意見に流されることなく、自分の判断で決めることができるようになります。また、契約書の内容を理解することは「私に与えられている権利をきちんと理解すること」でもあるため、必要な時に必要な権利、情報を使って自分を守ることも容易になります。また、自分が人生で行う「契約」にきちんと目を向けるということは、自分の人生にきちんと責任を取るということでもありますから、人生への取り組み方が少し変わってきます。

「契約書の内容が読んでもいまいちわからない」「何が不利で、何が有利なのかよくわからない」というときは、弁護士に目を通してもらうのもおすすめです。「弁護士を頼むってハードルが高い」と思われるかもしれませんが、私が弁護士になった頃によく先輩や上司からは、「これからの弁護士は、トラブルが起きてから駆けつけるのではなく、トラブルを未然に防ぐために活用してもらう存在になることが大切」と言われました。

便利な世の中になった分、自分主導で動くことが大切です。そして、自分で頑張るところは適度に頑張ってみて、自分ができないことはプロの手を借り、解決法を知る人の手を借りることを意識してやってみてください。

そうすると、自然と人との関係も良くなり、一人で孤独に苛まれながら困難を抱え込むことも少なくなっていきます。そうすると、心に余裕ができ、「安心」が生まれます。この状態で次のキャリアを考えてみると、明るい未来を描いていけるのではないでしょうか。

取材・文/MARU

中原都実子
弁護士。人生開花コンサルタント。1966年東京都生まれ。 津田塾大学を卒業し、大手金融会社に就職後結婚を機に25歳で転職。 様々な職場を経験するうちに「専門知識を身につけたい」と思うようになり、たまたま手に取った民法学者の書籍に感銘を受け、28歳のときに法律家を志し、32歳で弁護士に。著書に『いつもの自分がやらないほうをやってみる』(鳥居ミコ名義・サンマーク出版)がある。

この記事を書いた人

MARU
MARU編集・ライティング
猫を愛する物書き。独立して20年。文章で大事にしているのはリズム感。人生の選択の基準は、楽しいか、面白いかどうか。強み:ノンジャンルで媒体を問わずに書けること、編集もできること。弱み:大雑把で細かい作業が苦手。

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