絶対に失敗するカフェの作り方カフェや個人でお店がうまくいかないときに、お客さんの声に耳を傾けてはいけないその理由
マスター1人で経営する小さなカフェを立ち上げて、長く続けていく方法をお伝えしていくこの連載ですが、驚くほど具体的に、かつ「絶対に失敗する方法」をお伝えしながら、逆張りをすることで成功へと導くメソッドを公開しています。今回は、個人店、マスター1人の小さなカフェをオープンする際に、絶対にやってはいけない「お客様へのアンケート」について。赤澤智が語ります。
目次
うまくいかない時にお客様の要望を聞いてはいけない
開業前、または開業後にお客様のニーズを探りそれに応えようと思いネット上でアンケートをとったり、または来店されたお客さんに直接訊いてみたり「しないで」ください。
開業前ならまだいいのですが、開業後なかなか客足が伸びず不安な毎日が続いている時に「どうにかしなきゃ、きっと今のこの店どこか問題があるに違いない!」という考えが脳裏によぎるもので、それはもうよ~ぉぉぉくわかります。
が、これ実は、すごく危険で、大失敗する要因になるので注意してください。
では、実際に開業後のお客さんに「ここのお店でもっとこうしてほしい、こういうメニューがあればいいなぁと思うことありませんか?」と訊いてみた場合の予測回答を挙げてみます。
「モーニングやってほしい」
「ランチやってほしい」
「夜はお酒をもっと出してほしい」
「ヘルシーな自然食を出してほしい」
「カフェインレスのコーヒーを出してほしい」
「駐車場及び駐輪場作ってほしい」
「安くしてほしい」
「おいしくしてほしい」
「イケメン(または美女)のバイト入れてほしい」
はい、だんだんエスカレートしてきたのでこの辺にしておきますが、ここ赤澤メソッドで提唱している運営方法でいざ開店してみた場合に考えらる回答だけでもこれだけあります。もちろん、実際に創業当初私も言われました。
ひとつ強調しておきたいことはこれら回答してくれたお客さんというのは本当に純粋にあなたのお店の為を思って言ってくれていることは間違いないということです。
または純粋な要望であることも間違いありません。
しかしながら、要望を叶えることは店の繁栄にはつながらなんです。
もちろん感謝の気持ちは持ってほしいのですが、そもそもが、お客様に対してアンケートやアドバイスを求めた時点で既にあなたのお店に対するコンセプトが甘いかブレています。
何よりも、ここが問題。
とりわけ、前回の記事で私が推奨した「サイレントプレオープン」でオープンしたお店は、当然創業当初の客足は芳しくありません。
来店してくれた貴重なお客さんもきっと我が事のように心配しながら、真剣に考えてアドバイスしてくれると思いますが、そこは感謝しつつもグッと歯を食いしばって聞き入れない努力をしてください。
そう、これは「努力」レベル、それが「仕事の一部」だと思ってください。
お客様は「ないものねだり」で「思いつき」のアドバイスをする
こんな話があります。
誰でも知っている世界的に有名な某巨大ハンバーガーチェーンでのことです。
社内で販売促進会議が行われ、社内の若い女性をはじめ一般の人にも広くアンケートをとったところ、多かった回答が「ヘルシーなメニュー、特にサラダを充実させてほしい」でした。そして「サラダ」を中心としたヘルシーメニューを実際に投入したところ、見事に大コケしたのでした。
なぜだかわかりますか?
そもそもそこのお店にはハンバーガーを求めて、ジャンクなものをたまには食べたいという人や、ここに来てまでヘルシーは求めないというのがこのお店のユーザーなのです。
回答した人もその時けっして嘘をついたわけでもなく、「ないものねだり」的に、そして「思いつき」でそう答えたに過ぎないのです。
莫大な資本力を持つメガ企業の某社はその後すぐ立て直しを図ったことで、キズを最小限に抑えました。が、これを、同じことを弱小個人店であるあなたのお店がやったならかなりのダメージを負います。
お客様の希望を叶えたことによって売上が下がり続ける?
もう1つ身近な例を挙げます。
同じ飲食店を営む私の友人の店は開店前に「トイレは男女分かれていたほうが絶対いい」と言われた結果安くない工事費用をかけて男女別のトイレを設置しました。
そもそも、おそらく「カフェのトイレについてどう思うか」「男女一緒がいいか別々がいいか」を確認したら、世の女性の百人中百人が「男女別がいい」と答えると思いますので、確認した時点で「負け」なのですが、ここでの問題は工事費ではありません。
そのトイレのスペースが仮に1~1.5坪だとしましょう。
そこのスペースの分が客席だったとしたら一か月で売上にして10万円くらい違いが出て来るとしたらどうでしょう?
年間百万円以上、10年で一千万円以上、差が生まれ続けて行くならどうでしょうか?
他にもこうした例は枚挙にいとまがありません。
大切なのは創業の計画時のぶれないコンセプト
ぜひ冷静になって、それより何より創業計画でコンセプトを決める段階で何度も何度も自問自答し、多くの事例スやタンダード(トイレなら例えば洗面台の標準値など)を徹底的に調べたり様々な脳内シミュレーションを繰り返すことです。
他人にアンケートをとったり、アドバイスを求めたりしても、返ってくるのは「部分的な要望」「その時の思いつき」に過ぎず、全体像を俯瞰して見ることが出来るのは他ならぬオーナーであるあなたしかいないのです。
さて、今回お伝えしたいことはここまでなのですが、何を隠そう私は創業時アンケートをとったことがあるんです(笑)。
そしてこれは今回述べていることと実は矛盾もしないことなのです。
そのアンケート内容はといいますと「コーヒーにミルクは入れますか?」「タバコは吸いますか?」「一日に何杯くらいコーヒーを飲みますか?」などのよくある本当に純粋な統計を知るためのような内容でした。
そしてそれへの回答の中身は実はどうでもよかったんです(爆弾発言!?)。
ではなぜこんなことをしたのか?それは今回の趣旨と全く別のそれはそれで超重要事項(大袈裟ではなく長きに渡る運営の生命線といえるかもしれません)ですので次週詳しくお伝えしますのでお楽しみに!
珈琲文明店主・赤澤智でした。