花輪陽子の「経営者3年目」までのお金のこと老後資金2000万円よりハードル高い⁉︎ フリーランスに必要な老後資金は“一人当たり ”1500 万円
会社員とは社会保障が違って、厚生年金が支給されないフリーランスに必要な老後資金は一人当たり 1500 万円?貯金をする手立てとなる、フリーランスが活用したい制度を紹介します。1級 FP 花輪陽子の連載・第7回!
目次
フリーランスの老後はどうなる?
老後資金は一人当たり 1500 万円?
フリーランスで「老後のお金が不安」という悩みを持っている方は非常に多いです。体が資本のフリーランスにとっては、病気などで働けなくなった時が一番のリスクになります。
老後のお金はいくら必要なのでしょうか。家計調査によると、60 歳以上の単身無職世帯の 1ヶ月の実収入は約 12 万円。これに対して支出は約 15 万円と、毎月 3 万円の赤字になっています。
65 歳でリタイアして 90 歳まで年金と貯金で生活をする場合、25 年間で生活費だけでも 900 万円必要になります。これに医療費や介護費などの予備費として数百万円を加えると、最低でも 1500万円程度は貯金があった方が安全です。夫婦の場合は、この金額の 1.5〜2 倍で考えるとよいでしょう。特にフリーランスの場合は、会社員が保障されている厚生年金と比べると年金が薄いため、多めに見積もる必要があります。こちらはあくまでも現在のインフレ率で考えています。
国民年金納付が 65 歳までになる可能性も
加えて、2025 年に予定される次期年金制度改正の議論が本格化しており、国民年金(基礎年金)の保険料納付を 65 歳まで延長することなどが焦点となっています。
国民年金の保険料納付期間が延長になると、給付水準の低下幅が抑制され、現行制度を維持するのと比べて受け取る年金額は増えます。しかし、5 年間分の新たな保険料負担が生じることになります。国民年金保険料の金額は 1 カ月あたり 16,520 円です。年間 20 万円弱の負担になるので大きな違いが出ます。
しっかり備えるために活用したい制度は?
退職金制度にもなる小規模企業共済
不透明な老後はどのように備えたらよいのでしょうか。できるだけ現役時代を引き伸ばし、引退をしないという選択肢もフリーランスにとっては考えられます。老後資金を育てるためには、「小規模企業共済」、「国民年金基金」、「個人型確定拠出年金(iDeCo)」などを活用したいものです。
「小規模企業共済」とは、小規模企業の経営者やフリーランスの方が、廃業や退職時に備えて積み立てる制度です。掛金が全額所得控除できる税制メリットに加え、事業資金の借入れもできるなどメリットが多いです。
月々の掛金は 1,000〜70,000 円。500 円単位で自由に設定が可能で、加入後も増額・減額ができます。確定申告の際は、その全額を課税対象所得から控除できるため、高い節税効果があります。
共済金は、退職や廃業時に受け取ることができます。満期や満額はなく、共済金の受け取り方は「一括」「分割」「一括と分割の併用」などが可能です。一括受取りの場合は退職所得扱いに、分割受取りの場合は公的年金等の雑所得扱いとなり、受け取り時の税制メリットもあります。
また、契約者は、掛金の範囲内で事業資金の貸付を受けることもできます。低金利で、即日貸付けも可能で、事業資金として必要になった場合にも活用ができます。私も日本でフリーランスとして活動をしていた時に月額マックスの 7 万円を積み立てていました。
(小規模企業共済 中小機構)
年金を増額できる国民年金基金
「国民年金基金」とは、自営業やフリーランスなどの国民年金第1号被保険者が、1階部分しかない老後保障を、国民年金基金に加入することで2階建てにすることができるものです。加入時の年齢やプランに応じた掛金を払えば、老後はずっと一定の金額を受け取れる終身年金が基本となります。掛金は社会保険料控除として全額所得控除できます。iDeCo(イデコ)のように自分で運用指示を行う必要もありません。
自分で年金を運用 iDeCo(イデコ)
個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」とは、公的年金制度に上乗せして給付を受け取れる私的年金制度で、2017 年 1 月から原則として 60 歳未満のすべての人が利用できるようになりました。
60 歳まで毎月一定額を拠出して、自分が指定した金融商品で運用をし、それを老後資金に充てることができます。
iDeCo には 3 段階で税制優遇があります。
① 拠出時
拠出した金額が全額所得控除され、所得税率が 10%の人の場合は、住民税と合わせて 20%の節税効果となります。
② 運用時
一般的な預金の口座や証券口座では、利益に対して約 20%の税金がかかりますが、この制度では非課税です。
③ 受取時
年金受け取りの場合は公的年金等控除が、一時金受け取りの場合は退職所得控除が適用されます。
拠出したお金は原則 60 歳まで引き出せません。さらに、加入期間が 10 年未満だと受給開始が可能となる年齢が 60 歳ではなく 61〜65 歳になります。
老後のために運用をする場合、国民年金基金や iDeCo などを活用してもよいでしょう。もう少しフレキシブルに考えたい場合は小規模企業共済や NISA の活用が考えられます。
非課税枠が拡大される NISA
少額投資非課税制度(NISA)で「一般 NISA」を利用すると、年間 120 万円の投資枠の中なら、株式投資に対する収益、つまり配当や売却益には税金がかかりません。非課税で運用できる期間は投資をした年から 5 年間です。
2018 年から新たにスタートした「つみたて NISA」は、定期・定額での積立投資に限定した制度で、年間 40 万円までの投資枠に対し、その利益が 20 年間非課税となる制度です。一般 NISA とは非課税期間と年間の非課税枠、投資対象などが違います。
NISA は 2024 年から新しい制度に変更され、非課税枠が拡大される予定です。
このようにフリーランス向けに準備されている小規模企業共済や国民年金基金などにまず加入をした上で、長く働ける工夫をしたり、NISA などの資産運用を検討していけばよいでしょう。