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みらいのとびら 好きを仕事のするための文章術映像・音声主流の時代でも、ストーリーを作るのは結局「文章力」!【第 7 回】

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文章のプロ・前田安正氏が教える、好きを仕事にするための文章術講座。第 6 回は、映像・音声主流の時代に、ストーリーを生むことのできる文章の役割について考えます。

プロフィール

未來交創代表/文筆家/朝日新聞元校閲センター長前田安正

ぐだぐだの人生で、何度もことばに救われ、頼りにしてきました。それは本の中の一節であったり、友達や先輩のことばであったり。世界はことばで生まれている、と真剣に信じています。
2019年2月「ことばで未来の扉を開き、自らがメディアになる」をミッションに、文章コンサルティングファーム 未來交創株式会社を設立。ライティングセミナー「マジ文アカデミー」を主催しています。

ストーリーを生み出す文章

いまは Instagram や TikTok の時代。映像と軽いおしゃべりで伝えれば、集客もできるはず。そう考えている方も多いと思います。確かに映像や音声はスマートフォン一つあれば誰でも手軽につくれるし、相手の感情に訴える効果もあります。


ところが、実際はなかなか思うようにはいきません。それは映像には見てもらうための、音声には聴いてもらうためのストーリーがうまくつくれないからです。


ストーリーをつくるには文章力が必要になります。言語能力とともに、構成・編集の力が重要になるからです。


僕は企業の文章コンサルティングをしています。すると、次のような課題を相談されるのです。


広報部門であれば、サービスや製品の特長がうまく伝えられず、ニュースリリースを出しても反応が薄い。
開発・営業部門では、クライアントに説明するパワーポイントなどの投影資料が整えられず、質問ばかりが増えて信頼関係を醸成できない。


こうした課題を解決しようと、多くはデザイン会社に依頼して、資料をいかに綺麗に見せるかに注力します。
ところが、いかに資料を綺麗に整えても内容がそれに伴っていないと意味がないのです。


そうした資料を読むと、伝えるべき要素は書き込まれているのです。しかし、伝えるべき順番が違っていたり、不必要な内容が紛れ込んだりしているのです。


総じて、伝えたい内容について一生懸命、丁寧に書いてあるのです。「丁寧に」という意識が強すぎて「回りくどい文章」になっているのです。いわば、枝葉ばかりに覆われた木のようで、肝心の幹が見えてこないのです。枝葉を刈り込んで、幹をしっかり見せる編集作業ができていないため、ことばを弄した割には「結局、何を言いたいの?」という疑問だけが残るのです。


文章は幹をしっかり見せる作業です。それには、伝えるべき内容が何か、それをどう伝え、どう表現すればいいのか、を理解しないとなりません。

当然と思っていることにこそ、魅力が詰まっている

僕が企業の文章をコンサルする場合、まずは枝葉を刈り込むことから始めます。そして、サービスや製品の魅力が何かを確認します。


ところが時々、「サービスや製品の魅力と言われてもなあ」と頭を抱える担当者がいます。それは、魅力がないのではなく、魅力に気づいていないだけなのです。日常の中に当然のものとして存在しているからなのです。


これは、「好きなことを仕事にしよう」としているあなたにも言えることなのです。


先日、僕が主催しているマジ文アカデミーという文章講座で「趣味」をテーマに作文をかいてもらいました。
受講生の一人から、趣味の野球について書こうと思っているが一向に書けない、という相談を受けました。

話を聞くと、月に7回ほど球場に足を運んでいる、大好きな唐揚げとカツサンドを携えて、試合が始まると速報アプリで 1 球ごとの配球を確認しながら見ていると言うのです。


それを聞いて僕は、月に7回も球場に通うことに驚き、そんな風にして試合を見ているのかと感心したのです。
ところがその人にとって、そうした行動はごく当たり前のことだったのです。


ほぼ毎週、2回球場に通い詰めるモチベーションって何だろう。そして1球ごとに配球を確認し、選手に応援したり叱咤したりする姿は、かなり「沼にはまっている」感じがします。その趣味との向き合い方は、僕には魅力的に映ります。


ところが、当人はそれに気づいていないのです。日常の当然の姿だからです。当然と思っていることにこそ、魅力が詰まっているのです。


「そこを書きましょうよ。1球ごとの配球とその時に思ったことをモノローグにして綴ってみたら面白い。その際に、球場の空気やカツサンドの味も織り交ぜて。おそらく場面ごとに球場の空気もカツサンドの味も変わるはずだから」


僕はそう伝えました。次回、どんな作品が届くのかが楽しみです。

より説得力のあるコンテンツを生み出すには「目標の見える化」

企業も個人も、自らの魅力を一歩引いたところで見ることが難しいのです。もちろん、漠然とその魅力に気づいてはいるのです。


ところが、漠然とした部分=枝葉に引きずられて、魅力の核心部分=幹を見失ってしまうのです。


組織内で常に「何を目的にしたサービス・製品なのか」を確認していくことが重要になります。日々のルーティンワークの中にいると、目標や作業目的が見えなくなるからです。


個人の場合も、たとえば楽器の練習を繰り返す際に、「何でこんなことをしているのだろう」という疑問を持つことがあるはずです。常に目標を確認していないと、単純な練習に嫌気がさして辞めてしまうこともあります。


文章を書くということは、そうした目標を見える形で残すことでもあります。それを何回も読み返すことで、単純なルーティンワークの意味を理解することができます。


ニュースリリースを書く場合も、説明用の投影資料をつくる場合も、その目標・目的がしっかり理解できていれば、簡潔でわかりやすくなります。そして、何から伝えれば、相手が理解しやすくなるのかが見えてきます。


それができるようになれば、映像や音声でも、より説得力のあるコンテンツを生み出すことができます。

この記事を書いた人

前田 安正
前田 安正未來交創代表/文筆家/朝日新聞元校閲センター長
早稲田大学卒業、事業構想大学院大学修了。
大学卒業後、朝日新聞社入社。朝日新聞元校閲センター長・元用語幹事などを歴任。紙面で、ことばや漢字に関するコラム・エッセイを十数年執筆していた。著書は 10万部を突破した『マジ文章書けないんだけど』(大和書房)など多数、累計約30万部。
2019年2月「ことばで未来の扉を開き、自らがメディアになる」をミッションに、文章コンサルティングファーム 未來交創株式会社を設立。ことばで未来の扉を開くライティングセミナー「マジ文アカデミー」を主宰。

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