「役者に向いていない」かもしれない中村蒼が、役者にしがみついてでも「周囲のために演技する」仕事論
中村蒼さんが「人からこう見られたい」という欲を捨てて役を演じるために心がけているのは、その役を依頼してくれた人の思いに応えること。感謝の気持ちが、前に踏み出す力になっています。
プロフィール
俳優中村蒼
俳優、福岡県出身。2006年、寺山修司原作の舞台『田園に死す』で主演デビュー後、多くのドラマ、映画、舞台に出演。毎週水曜22:00~フジテレビにて放送中の連続ドラマ『わたしのお嫁くん』に古賀一織役で出演中の他、WOWOWにて放送中の『ながたんと青と-いちかの料理帖-』(毎週金曜23:00~)にて、主人公・いち日が務めるホテルのレストランのヘッドシェフ・田嶋明丞役にて出演中。
誰かと比較せず、好きなものがある自分に自信を
たくさんの選択肢がある中で、「好きだ」と思えるものがあるのは素敵なことだと感じます。僕達は無意識に誰かと比べる事で幸福感を得る生き物だと個人的に思っているので、自分が好きだと言えるものに対しての気持ちなどは、他者と比較するものではありませんよね。好きなことがある自分に自信を持って人生を楽しんでほしい。一番大切なのは、周りの目を気にしない強いメンタルを持つことだと思います。
できると信じてくれたスタッフに応えるために
16歳でデビューして、今年3月に32歳になりました。16年の間、役者という仕事以外したことがありません。向いていないのかもしれないと思った時期もありましたが、ほかにこれといった特技もないので、役者という仕事にしがみつくしかないと思っています。未知のことに対して意欲的というよりは、声をかけて下さった方の声に励まされて、新しいことを取り入れていくタイプ。実生活で経験したことがない役の依頼があるので、正直しんどいなと思うこともあります。例えばプライベートで料理をほとんどしないのに、料理人の役が来たときは最初に「大変なことになったな」ということが頭をよぎるのですが、僕にできると信じて声をかけてくれた方に対して誠実でいたい。話を持って来てくれたスタッフの頑張りに応えたいという気持ちが、前に踏み出していく力になっています。
自分に依頼が来た理由を考え、周囲のために演技すること
他人から自分がどう見られているのかについて、僕はすごく気になる方なのですが、「こう思ってほしい」という欲や、プライドは捨てた方がバランスを取りやすくなるなと気が付きました。ドラマや映画はみんなで作るもの。僕が口にするセリフは、僕のためだけではなく、相手のためにあるのだと考えると、僕だけが目立てばいいというような欲は少ない方がいいと思っています。役者として演じる役について想像力を働かせますが、毎回この仕事はどうして僕に依頼されたのだろうというところまで考えて、作品に臨んでいます。テレビに出たい、役者になりたいと思っていても、その機会をつかめるのは、一握りの人間だけですよね。奇跡的なことが続いていることのありがたみが分かるようになったので、自分のためにというよりも、喜んでくれる周囲のために頑張っていきたいです。
取材・執筆・写真/翡翠
編集/MARU
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この記事を書いた人
- 音楽や映画、舞台などを中心にインタビュー取材や、レポート執筆をしています。強み:相手の良いところをみつけることができる。弱み:ネガティブなところ。