Interview
インタビュー

スケジュールや予算の枠に器用に収めるのが映画作りじゃない。「小さくまとまらない」葛藤と戦う映画監督・前田哲の仕事論

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自身のエンタメ作品を、誰もが幸せな社会を実現するきっかけにしたいと考えるのは、政治家たちに任せていたらいけないとの危機感から。映画への思いを聞きました。

プロフィール

映画監督前田哲

映画監督。撮影所で大道具のバイトから美術助手を経て、助監督となり、伊丹十三、滝田洋二郎、大森一樹、崔洋一、阪本順治、周防正行らの監督作品に携わる。1998年相米慎二監督のもと、オムニバス映画『ポッキー坂恋物語・かわいいひと』のエピソード3で劇場映画デビュー。本年公開作として、6月に『水は海に向かって流れる』と『大名倒産』がある。

松山ケンイチさんが42人の高齢者を殺した男を演じる話題作『ロストケア』が、3月24日から公開されています。前田哲監督が語る仕事論。常に意識するのは、かつて師事した相米慎二監督から言われた「映画を器用に作るな、小さくまとめようとするな」という金言だといいます。

映画『ロストケア』のイベントの様子

誰もが幸せな社会へ、エンタメできっかけを

誰もが幸せに生きていけることを目指す。それは政治家や行政の領域であるはずなのに・・・、状況は悪化するばかりで、暗澹たる気持ちになります。映画の力で、エンタテインメントの力で、社会の問題をみんなで考えるきっかけを作ることができるのではないかと思っています。映画を観て、その事を家族と話す、友達と話す、仕事仲間と話す。そこが出発点となって、社会問題について意識を持つ人たちが増えていったら、きっと社会は変えることができると、希望を持って映画作りをしています。

「小さくまとまった自分」との葛藤を超えて

デビュー作を観た相米慎二監督から「映画を器用に作るな、小さくまとめようとするな」と言われたことがありました。映画製作では、出されたスケジュールや予算の中で何かできるのか、全体のバランスについて考えることが求められますが、考え過ぎると思い切ったことができない。小さくまとめようとしていないか、しかし時間と予算は守りたい・・・、葛藤は、いつも自分の中にあります。監督はスタッフ・キャストと共に映画を生み出すことはできるけれど、作品を育てることができるのは観客の皆さん。子どもたちの未来に向けて作品を撮り続けていきたいです。

映画のメイキングの様子/映画「ロストケア」 全国公開中 / 配給:日活・東京テアトル ©2023「ロストケア」製作委員会

取材・文・写真/翡翠
編集/MARU

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