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ミシュランの星の獲得は、飲食店の売り上げに直結するのか?ミシュランの星の獲得は、飲食店の売り上げに直結するのか? 6年連続ミシュランシェフに聞く

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予約が取れない東京広尾のイタリア料理店「ボッテガ」のオーナシェフ笹川尚平さん。ミシュランだけではなく「ゴ・エ・ミヨ」や「ヒトサラ」でも掲載。はたしてこれらの星は飲食店の経営に何をもたらすのか?

ミシュランで星を取っても変わらないもの

控えめにさりげなく。何よりも目の前の今日のお客様を大事にするという笹川尚平氏(撮影/I am 編集部)

ありがたい気持ちが 200%

僕が立ち止まるのは、感情の勢いに任せて言葉を発しないようにするときなので、外部からの評価というのはあまり関係ないかもしれないですね。ミシュランや食べログさんの「百名店」など、高い評価をいただいていることは本当にありがたいです。90 度でお辞儀して「ありがとうございます!」という気持ち。でも僕もスタッフも、正直、そこには固執していなくて。ただ、ありがたいという気持ちはもう 200%あります。

ミシュランがきっかけで思い出していただける

僕が嬉しいのは、ご来店してくださるお客様と応援してくださる方から、「よかったね、今年もとったね」と声をかけてもらえることなんです。こんなことを言うと、商売上、ちょっとやらしいかもしれないですけれど、ミシュランをとったことで、おめでとうって伝えたいからご来店くださるとか、「ボッテガしばらく行ってなかったな」って思い出してくださるとか。それがまた嬉しいんです。

対話が生まれることのありがたさ

ミシュランは雇われシェフだった「カーザヴィニタリア」で5回、独立後「ボッテガ」で6回いただきました。自分のお店を開くまで約1年かかったんですけれど、その間も「ミシュラン5回とってるから大丈夫」と言ってくださった方々がいて。そういう応援してくださる気持ちが一番身に染みるんです。
ミシュランをとったことで、料理の大先輩からも「よかったな」と声をかけてもらったり、「お金払っていくよ」と言ってもらって、「ボッテガ、けっこうお金かかるんです」と冗談を返せたり。そんな対話が生まれることが、本当に、いろんな意味でありがたいです。

ミシュランをとったら安泰か?

こだわりのパスタはすべて自分の手で作る。(撮影/I am 編集部)

常連客の方が喜んでくれる

実際皆さんに聞けているわけじゃないんですけれど、ミシュランありきで来られてるお客様って、そういらっしゃらないような気がします。年間でいうと何十組だと思います。何回か来てくださったお客様は、自分が贔屓にしている店を世間が評価しているのは嬉しい、満足度が高いと言ってくださるんですね。

何度も足を運んでいただけるほど緊張?

大企業の社長さんが、接待まではいかないけれど、こういったカウンターで気軽に楽しみたいとか、芸能人の方がいらして、周りも気づくけれど誰も声をかけないでいる静けさとか。
客層は大事なのかなって思います。二度目、三度目、四度目と来てくださって、「なんでうちなんだろう」って嬉しい反面、緊張しますね。僕はどのお客様にも緊張するんですよ。「こんなに何回も来ていただいて」と勝手に緊張しています。

星が再認識させてくれる「生かされている」

素材の配合だけでなく、その日の天候なども見極めながら作るパスタ(撮影/I am 編集部)

勘違いしてはいけないという戒め

シェフと経営者の両立で悩むことはたくさんあります。自分のことだけを考えたら苦しいのかもしれないですが、「生かされている」と思ったらそうはならないんです。30 歳ぐらいのころに読んだ本の中に書いてあった言葉なんですけれど、僕にとっては喜怒哀楽のブレーキ。ミシュラン一つ星を連続でいただいて、自分の力を勘違いするようなことになりかねないときも、「生かされている」に戻るんです。

独立直前。40 歳の僕を兄や友人が心配してくれる

「生かされている」の核心に迫ったのは、ボッテガを開くと決めてからです。「カーザヴィニタリア」を辞めて、自分のお店を開くための物件探しをしたのですが、ここだと思う場所に出会うまで 7 カ月かかりました。その期間は働いてもいないですし、社会と遮断されるような生活を送っていました。
そんな状況で、兄や、これまでにつながりのあった方々から、「どう?」「困っているなら何とかしてやるよ」って連絡がくるんです。40 歳にもなっていて、心配してくれる方々がいるのはありがたいなあと思いました。僕にも小さな応援団がいるんだと思ったら、責任も感じました。

渡してもらったものを次の世代へ

転職するときに確認されること

料理の世界で次の就職先を探すとなったら、今までいたお店が世間からどんな評価をされていたかが影響します。たとえばミシュラン、食べログさん、ご来店してくださったお客様の数とか。あとは、誰のところで働いていたかも見られるようです。「カーザヴィニタリア」での僕は、厳しいシェフだと評価されていたと聞いた時は驚きました。「あの店は毎日満席で、どうやらシェフは厳しいらしい」。僕の一つ年下の後輩からそう言われてますよと。技術をしっかり身につけてほしいと思っているんですけれど、語尾とか、口調とかで厳しいと思われたのかもしれないです。バランスを取るのは難しいですね。

原田慎次シェフがしてくれたことを次に

ボッテガは、スタッフが「チームとして働いていてよかったな」と言って、次へ進めるお店にしたいです。他のお店に行くにしても、自分のお店を開くために辞めるにしても、彼らの看板になれるようなお店でないといけないって思っています。看板になったら、「ああ、あそこにいたんですか。ぜひ来てください」ってなるんですよね。僕は、アロマフレスカグループの原田慎次シェフからそういう恩恵を受けました。だからこそ、スタッフの力になれる場所にしたいとの思いを強く持っています。

後輩がお店を開きたいなら共同出資する

後輩が自分を生かせる道ならば、おもしろいことができると思えれば、共同出資を考えます。正直、お金最優先で仕事をするのは短期間で終わるほうがいいと思っていて。少なからず「ボッテガ」を 7 年経営してきた信用がありますから、力になりたい。大変なことでも、おもしろいことが上回るようになったらいいじゃないですか。そういうふうに人と関わりを持って、仕事をしたいなと思っています。

第2話はこちら

取材/I am 編集部

文/村上いろは

バナー写真/有賀傑

この記事を書いた人

I am 編集部
I am 編集部
「好きや得意」を仕事に――新しい働き方、自分らしい働き方を目指すバブル(の香りを少し知ってる)、ミレニアム、Z世代の女性3人の編集部です。これからは仕事の対価として給与をもらうだけでなく「自分の価値をお金に変える」という、「こんなことがあったらいいな!」を実現するためのナレッジを発信していきます。

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