Interview
インタビュー

移住を夢見て、地域おこし協力隊から起業深海魚で地方創生!? 漁業の常識からはみ出した「深海魚販売」で起業〈深海魚直送便/青山沙織さん〉

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移住のネックは「仕事をどうするか?」。地方での就職は都会での就職よりハードルが高いこともあり、自力で稼ぐ起業・独立マインドが求められる。地域おこし協力隊から起業に成功した青山沙織さんに話を聞いた。

プロフィール

起業家青山沙織

「深海魚直送便」代表。大学を卒業した後、OL、留学、オーストラリアでのワーキングホリデーを経験した後、2018 年 4 月に沼津市の地域おこし協力隊に就任。日本で唯一の深海魚専門の地域おこし協力隊として、「駿河湾の深海魚アートデザインコンテスト」や「深海魚フェスティバル」などのイベントを企画。さらに、深海魚の皮を使った特産品の開発にも関わっています。

静岡県沼津市戸田町で、深海魚の通信販売を行う青山沙織さん。戸田での地域おこし協力隊としての経験が、深海魚のビジネスアイデアに繋がったという。

地域おこし協力隊で出会った深海魚

ライター顔写真

地域おこし協力隊として戸田に移住されてから、どんな活動をされているのでしょうか?

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地域おこし協力隊としては、戸田を深海魚で盛り上げるために3年間活動しました。道の駅での深海魚にまつわるイベントの企画運営、深海魚グッズの開発、深海魚を入れた水槽の管理、そして3年目の時から「深海魚直送便」をスタートして、協力隊の任期が終わった今も継続しています。
深海魚直送便は、これまで食べられない、すぐ傷んでしまうことから市場に出ずに漁船で捨てられていた深海魚を持って帰ってきてもらって、その日のうちに直送する通信販売サービスです。食べれる魚だけを詰め合わせたセットや、食用に向かない深海魚を詰め合わせたヘンテコ深海魚便なども販売しています。

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もともと深海魚が好きだったんですか?

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いえ、そういうわけではないんです。今も愛着はありますが、好きというよりは、興味があるという感じです。

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深海魚が好きなわけではないのに、どうして深海魚の町である戸田で地域おこし協力隊になろうと思ったのですか?

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地域おこし協力隊のことを調べている時に、戸田は深海魚で町おこしを目指していると知り、面白いなと思ったんです。元々起業に興味があって、ハンドメイドで起業しようと思っていたのですが、なかなか難しくて。ただのハンドメイドだとライバルが多いけれど、深海魚グッ
ズなら、深海魚が強みになるし、個人で起業するよりも起業しやすいのかなと感じて。

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地域おこし協力隊として活動することで、起業アイデアが生まれたんですね。

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そうですね。

ビジネスは、思いついて2週間でスタートできる!

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深海魚直送便を始めるにあたって、まず誰に協力してもらいましたか?

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漁師さんと、ヤマトさんですね。漁師さんには深海魚を持って帰ってもらうこと、ヤマトさんには集荷や代引きができるようにお願いしました。
深海魚直送便は、やろうと決めてから 2 週間後ぐらいには始めてるんですよ。

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2週間ではじめたんですか?!

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そうですね、4 月 15 日ぐらいに企画を思いついて、4月末にはもう発送してるので。

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何故そんなに早く決断できたんですか?

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理由はあまりないんですけど、いけると思ったんですよね。お試しでやってみて、駄目ならやめてもいいかなと思ったんです。結果として、メディアに取り上げていただけるなど、反響は大きかったので、続けています。やってみて無理だなと思ったらやめていたと思います。

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今では漁師さんにもしっかり協力してもらえているんですか?

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未だに協力してくれないところもあります。でも、自分の独自のルートで、同じように深海魚便を販売し始めたところもあるんですよね。それを見ていると、私の取り組みに賛同してくれているわけではなくても、影響はあったのかなと思います。一緒にやっていなくても、色々な人が深海魚を販売していたら、自分一人だけの時よりも認知度が上がると思っていますし、戸田が盛り上がることに繋がりますから。私の取り組みが、戸田を盛り上げることにプラスになったのかなと思っています。

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真似される事がかえってプラスになる。戸田が、より深海魚の町として認知されるということですね。テレビにも取り上げられて、反響もあったのですか?

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はじめは、「そんなゴミを売ってどうするんだ」「そんなの売れるのか?」ってって漁協さんに言われたこともあったんですよ。でも段々と、今まで飲食店では出していなかった魚が出るようになったり、「なんでそんなことやるんだ」って言っていた商店が同じような商品を出すようになったりしているんです。今まで捨てていた魚がそうではなくなっているので、魚の価値が全然変わってきてますね。

ビジネスを立ち上げるには、自分を知ってもらうことが大事

朝3時ごろにトロール船は出港する。取材日は直前に出港が中止になった。出港は天候にも左右される。
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地元の人に話を聞きに行くことって、移住したばかりの頃は難しそうですね。

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そうですね。周りは知らない人ばかりですし。私は、地域のお祭りとかのイベントに積極的に参加して、関係を作っていきました。あとは、漁船がいつも 4 時ぐらいに港に戻ってくるので、その時間に港に行って漁師さんたちに話しかけていました。

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最初に話しかけたときってどんな反応でしたか?

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最初はなかなか話してはもらえませんでした。皆さんシャイなので向こうから話しかけてもらえるということはあまりなくて。
でも、外に出て行かないと何やってるかわからないって言われちゃうので、いかに人の目につくかが最初は大事だと思います。誰も見てなかったらやってないのと一緒になってしまいますから。

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他には、認知を広げるためにどんなことをしたんですか?

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初めは観光協会さんがやってるイベントや、地域の一般社団法人さんのイベントに顔を出してお手伝いをしていました。

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そこから、ご自身でも深海魚フェスティバルや、アートデザインコンテストのような、イベントを企画されるようになったんですね。イベントを運営する中で大変だったことはどんなことでしたか?

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地域の人をまとめるのは難しかったです。私だけでは難しい時は、観光協会や、商工会議所を巻き込むことで、協力してもらえることもありました。

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周りを巻き込むことって昔から得意でしたか?

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私はむしろ人付き合いが得意じゃない方だと思っています。人を巻き込むことも、得意ではないです。でも、やるって決めたら、やるしかないですから。だから、「イベントありますよ」って告知を新聞に投げ込みしたり、観光協会に協力してもらったりしました。協力するとなると、観光協会の方が協会員さんを連れてきてくれたり、商工会議所の青年部が出店で焼きそばを出してくれたりしてくれて。
よその人が、よその人だけのイベントをすると、よその人しか来なくなっちゃうんですよね。でも地元の人が出店するとなると、地元の人が来てくれる。地元を巻き込んでイベントを運営することが、反響に繋がったと思います。

テレビでバズるより持続可能な認知

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テレビ取材によって売り上げは上がってきているんですか?

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上がってはないです。最初の頃に取り上げられたときが一番良かったです。
テレビで紹介された後は、1日で100件以上注文が来ることもあるんですが、それが船が出ない時期だとそんなに発送できないんです。テレビを見て買う人は、深海魚のことをわからず買う方が多いので、クレームも多くて。2 日、3 日届かないだけで、「物が届かない!」とか、「こんなに生の魚を送ってきてもさばけない」といった問い合わせがたくさん来ます。いいことばかりではないなと思います。

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どういう形が一番良いのでしょうか?

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1 日に一気にきても大変なので、コンスタントに安定して注文が来るといいかなと思います。今はリピーターさんが多いので、クレームも減ってきています。

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そのためにされてることは?

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SNS へのアップですね。取材に取り上げていただくこともありがたいです。

珍しい魚は写真を撮って SNS にアップする

取材、文、写真/I am 編集部

この記事を書いた人

I am 編集部
I am 編集部
「好きや得意」を仕事に――新しい働き方、自分らしい働き方を目指すバブル(の香りを少し知ってる)、ミレニアム、Z世代の女性3人の編集部です。これからは仕事の対価として給与をもらうだけでなく「自分の価値をお金に変える」という、「こんなことがあったらいいな!」を実現するためのナレッジを発信していきます。

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