Interview
インタビュー

フリーランス小説家に聞く「好きを仕事にする」方法好きなことを仕事にするには、会社を辞めるしかない? 二者択一ではなく、「仕事は3つ持つとうまくいく」という新事実!

ログインすると、この記事をストックできます。 ログイン

小説家になるためには会社を辞めて、フリーランスになって小説に専念すべきか、副業でもコツコツ小説を書き続けるか? 小説家を目指すなら読んでおくべき、現役小説家が教える小説家になるための働き方。

プロフィール

小説家額賀澪

1990年、茨城県生まれ。東京都在住。日本大学芸術学部文芸学科卒。広告代理店に勤めた後、2015年に『屋上のウインドノーツ』で松本清張賞を、『ヒトリコ』で小学館文庫小説賞を受賞し、デビュー。その他の著書に『タスキメシ』『転職の魔王様』などがある。

会社員の人が「好きを仕事にしたい」と思うときに出てくる課題のひとつが、「会社を辞めるか、副業でやるか」。会社員を続けながら小説を書き続け、松本清張賞を受賞した小説家額賀澪さんに、フリーランスになるタイミングや見極め方などについて自身の体験と考えを語ってもらいました。(第1回/全3回)

好きなことを仕事にするとき専業でいくか兼業でいくか

ライター顔写真

会社員を続けながら小説を書かれて、松本清張賞を受賞されましたね。

インタビュアー顔写真

はい。大学卒業後は広告出版系の会社に勤務し、25歳でデビューが決まっても1年は、会社員を続けながら小説を書いていました。

ライター顔写真

会社を辞めてフリーランスになったきっかけは何でしたか?

インタビュアー顔写真

デビューが決まった瞬間に「いつまで会社員を続けるか」で悩んだんです。そんなとき、松本清張賞の審査員だった石田衣良さんから貴重なアドバイスをいただいたんです。

「松本清張賞受賞会場に向かう電車の中でも『会社、辞めようか、どうしようか』と考えていました」
ライター顔写真

具体的にどんなアドバイスをもらったんですか?

インタビュアー顔写真

「会社員を続けるか辞めるか悩んでいる」という話をしたところ、石田さんが「『会社を辞めて専業作家になろうか、兼業作家として会社員を続けようか』と日々悩みながら作家をやるのは大変だから、この場で思い切って『これが達成できたら辞める』と決めるといいよ。3年続けられたら辞めるとか、本を5冊出せたら辞めるとか」とアドバイスしてくださったんです。

ライター顔写真

その場で決められたんですか?

インタビュアー顔写真

はい。そこで「5冊出したら辞めます」って決めました。そうしたら、石田衣良さんが「じゃあ、5冊出すまでは『兼業でいくか、専業でいくか』について悩まないで、とにかくがんばってね」と言ってくださったんです。

2015年に、『ヒトリコ』(左)で第16回小学館文庫小説賞を、『屋上のウインドノーツ』(右)で第22回松本清張賞を受賞してデビュー。
ライター顔写真

それで、5冊出してから会社を辞めてフリーランス、つまり専業小説家になられたわけですね。

インタビュアー顔写真

そうなんです。実際に5冊出してからなんですよ。兼業作家で「専業になるべきか? いつなるべきか?」と悩む人は多いはずです。だから、石田さんのアドバイスは、すべての新人さんに伝えたいアドバイスだなと思っていて。声を大にして伝えたいです。

フリーランスになる条件を決めておく

ライター顔写真

「好きなことを仕事にする」ために会社を辞める必要はあると思いますか? 

インタビュアー顔写真

独立するか、兼業でいくか。いつ独立するか、本当に独立して食べていけるのか。こればかりは人それぞれですからね。小説家だけでなく、多くの好きを仕事にしたい人たちが抱える共通の悩みだと思います。私がそうしたように「●●ができたら独立する。それまではとにかくがんばってみる」と決めることで余計な悩みや不安を抱えなくて済むのではないでしょうか。

ライター顔写真

「好きなことを仕事にしたら好きなことを嫌いになるのでは」と不安になる方がいますが、「好きなことを仕事にして、さらに好きでい続ける」コツはありますか?

インタビュアー顔写真

「好きなことを嫌いにならないための予防策」を講じるのが良いと思います。まず、兼業になることでのメリットは、収入源が2つあることです。最悪、作家業に何かあったとしても、会社員をやっているから生きてはいける。そのくらいの気持ちでいれば、作家業を嫌いになることはないと思うんです。少なくとも私はそうですね。

ライター顔写真

ひとりで不安に苛まれたり、思いつめたりしないことも大切ですね。

インタビュアー顔写真

「必ず小説家だけで食べていかなくてはならない」と自分を追い込まないことが大切なのではないでしょうか。例えば、私の場合は、将来本があまり売れなくなって収入がすごく減って、「好きなことを仕事にしているのにお金が稼げなくてつらい」「好きなものを嫌いになってきたな」って思ったら、きっと、何か違う仕事をすると思います。

「『食べられない時は、これをやればいいや』という仕事を考えておくと、結果的に、そういう状況にはならない気がします」

兼業と専業のメリットデメリット

ライター顔写真

会社員を続けながら兼業で書き続けることと、独立して専業で書き続けることのメリット、デメリットについて教えてください。

インタビュアー顔写真

私は、「体を壊しやすいのが兼業」「精神を病みやすいのが専業」と思っています。兼業のメリットは、お金の面での不安が減ることですよね。ただ、睡眠が取れなかったり締め切りに追われていたりしても、会社を休むわけにいかないというような体力的なつらさがあると思います。

ライター顔写真

逆に専業のほうは体力的には楽だけど、精神を病みやすい?

インタビュアー顔写真

はい。明らかに専業のほうが孤独だし、それで食べていけるのかという不安がいつも付きまといます。「自分が書く小説が自分の人生を握っている」と思うと、楽しいばかりじゃいられなくなることもあります。

ライター顔写真

ズバリ、好きなことを仕事にするときは専業と兼業、どちらがいいんでしょうね。

インタビュアー顔写真

会社でやっている仕事の内容や、性格にもよるかもしれませんね。ただ、兼業でも専業でも、心と体のバランスが取れるほうを選べばいいのではないでしょうか。自分の働き方や心身の状態をトータルで見た時に、多少つらいことがあったとしても、「でもこの仕事楽しくて好きなんだよね」と思えるために何かしらのバランスを取ることが大切だと思います。自分なりの「好きを仕事にし続ける方法」をいくつも持っておくといいですね。

「『やっぱりこの仕事が楽しい』と思えるところに自分を持っていく」
ライター顔写真

額賀さんご自身は今、これをやっているからバランスが取れているというものはありますか?

インタビュアー顔写真

私の場合は、いくつかの小説やエッセイを並行して書いていることが多く、煮詰まったり担当編集と意見が合わなかったりするときは、とりあえずその原稿を置いておいて別の原稿を書くんです。また、好きを仕事にしているといっても、同じ仕事だけをやるのではなく、3本くらいは違う種類の原稿があったほうがいい。1本だけだと1年間これだけで生活、みたいになると飽きもきますし、違うものがやれるほうが楽しい。青春もの、社会人もの、エッセイ、って、種類があるだけで、すごくリフレッシュできます。

【額賀澪さんインタビュー 第2回はこちら】


【額賀澪さんインタビュー 第3回はこちら】

ログインすると、この記事をストックできます。 ログイン

この記事をシェアする
  • LINEアイコン
  • Twitterアイコン
  • Facebookアイコン