人生を変えるI amな本今年は縁起のいい1年にしたい人が知っておくべき身の回りにある「ふくもの」
人生が変わる I am な本。今回は本間 美加子さんの著書『縁起のいいモノ、コトを知って開運招福 ふくもの暦』(マイクロフィッシュ)を紹介。
正月三が日も慌ただしく通り過ぎ、小正月の時期となりました。
小正月とは、 1月15日を中心とする数日間を指し、旧暦ではその年最初の満月の日にあたります。かつては、この時期に農作物の豊凶を占うなど、農業にまつわる種々の行事が行われていました。現代ではそれは、木の枝に小さく丸めた紅白の餅をつける「餅花」の伝統として、各地で受け継がれています。
餅花は、農作物の豊穣を願う縁起のよいもの。こうした縁起物を「ふくもの」という造語にして広めているのが、イラストレーターの上大岡トメさんを隊長とした「ふくもの隊」です。
その「ふくもの隊」で文章を担当してきた本間美加子さんが、昨年末に書籍『縁起のいいモノ、コトを知って開運招福 ふくもの暦』(マイクロフィッシュ)を上梓されました。本書は、四季ごとの「ふくもの」が紹介されたガイドブックで、島田涼子さんのイラストが添えられた注目の1冊です。
今回は本書の中から、日本人が忘れかけている「ふくもの」の世界の一端を、紹介しましょう。
目次
伊達巻のルーツはポルトガル?
おせちには欠かせない伊達巻。巻物に似ていることから、「知恵や文化の象徴、学業成就や文化興隆への願い」が込められた「ふくもの」だそうです。
ところで「伊達巻の日」は、意外にも5月24日の春。これは、戦国武将・伊達政宗の好物が伊達巻で、この日が彼の命日であったことにちなんでいるそうです。政宗の料理好きは有名な話ですが、伊達巻の発明者ではありません。ルーツは、中世の南蛮貿易で渡来したポルトガルのロールケーキ。これを日本で再現したのが「カスティラかまぼこ」です。それが江戸時代にはいって、今に伝わる伊達巻に変わっていったそうです。
風鈴は魔除けグッズだった!
夏の風物詩である風鈴も、「ふくもの」であるのはご存知でしたか?
はるか昔、仏教とともに中国から日本に伝わった「風鐸(ふうたく)」が風鈴の祖先です。形状は釣鐘に似ていて、風が吹くと荒々しい音が響きます。これが「災いや魔を退けると当時の人々は考え、仏堂や仏塔の軒の四隅に吊り下げる」ようになったそうです。
平安時代になると、貴族たちが自邸に、魔除けとしてあしらうようになりました。時代とともに風鐸は、さまざまな工夫が施され、風鈴へと変わっていきます。ちなみに、風鈴の名付け親は、鎌倉時代の浄土宗の開祖・法然上人です。法然は風鈴(当時は「ふうれい」と発音)を、「極楽浄土に吹く風の様子を伝える聖なる道具と考え、大切にした」そうです。
十五夜にススキを飾るのはなぜ?
冒頭で、旧暦では15日が満月の日であると記しましたね。年に12回ある満月の日ですが、「1年で最も明るく美しい満月が昇る」旧暦8月15日の夜が、いわゆる「十五夜」。現代に生きるわれわれも知る中秋の名月です。
この日の満月を特別に愛で、鑑賞するならわしは、古代中国から伝わったものです。奈良・平安時代には宮中で月見の祝宴が催され、庶民は収穫祭として作物を月にお供えしました。お供え物の代表が、子孫繁栄を表す縁起物である里芋、五穀豊穣を象徴するススキ、そして満月の形に見立てたお月見団子です。ちなみに、ススキは稲穂を見立てたもの。稲の実る時期が十五夜よりも先にあることから、代わりにススキを供えるようになったそうです。
――
本書を読むと、今ではその由来も忘れられながら残っているものに、実は深い歴史や意味があることに気づかされます。そして日常の何気ない風物に、改めて興味が持てるようになります。小正月を迎えた今、「ふくもの」の世界に目を向けてみてはいかがでしょうか?
書名 | 縁起のいいモノ、コトを知って開運招福 ふくもの暦 |
著者 | 本間 美加子 |
出版社 | マイクロフィッシュ |
出版年月日 | 2022/12/2 |
ISBN | 978-4910445007 |
判型・ページ数 | B6・143ページ |
定価 | 1650円(税込) |
関連記事
この記事を書いた人
- 都内出版社などでの勤務を経て、北海道の老舗翻訳会社で15年間役員を務める。次期社長になるのが嫌だったのと、寒い土地が苦手で、スピンオフしてフリーランスライターに転向。最近は写真撮影に目覚め、そちらの道も模索する日々を送る。