Interview
インタビュー

「出る杭は打つ!」「いや、打たない!」兄弟バトルで前進する中村勘九郎と七之助の仕事論

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歌舞伎役者・中村勘九郎さんと中村七之助さんに「仕事」への思いを聞きました。

プロフィール

歌舞伎俳優中村勘九郎(なかむら・かんくろう)

1981年10月31日、東京都出身。故・十八代目中村勘三郎の長男として誕生。1986年1月歌舞伎座「盛綱陣屋」の小三郎で、本名の波野雅行の名で初お目見得。1987年1月歌舞伎座「門出二人桃太郎」の兄の桃太郎で二代目中村勘太郎を名乗り初舞台。2013年には「読売演劇大賞」で最優秀男優賞を受賞した。1月から放送を開始するNHK大河ドラマ「どうする家康」に茶屋四郎次郎役で出演する。

歌舞伎俳優の中村勘九郎と中村七之助を中心に、中村座一門で全国12カ所24公演を展開する「中村勘九郎 中村七之助 春暁特別公演2023」を3月6日からスタートします。
中村屋一門の巡業のひとつ「春暁特別公演」は、「地方にいると交通費や宿泊費がかかって、なかなか歌舞伎を観に行くことが出来ない」という若いファンからの手紙をきっかけに、中村勘九郎さん、七之助さんを中心にしてスタートした公演。本公演ではなかなか観ることができない作品に取り組むほか、トークコーナーを設けるなど楽しい企画が満載です。
2012年に父の勘三郎さんが逝去した後は、ふたりで中村屋一門をけん引してきた勘九郎さんと七之助さん。伝統芸能を次代に継いで行く者として、「仕事」への思いも聞きました。

中村勘九郎×中村七之助 仕事論

1回1回のチャレンジが47都道府県制覇につながった

勘九郎:春暁特別公演は、歌舞伎ファンの方はもちろん、初めてご覧いただく方も楽しめるよう、本公演ではお見せする機会が少ない演目を選ぶなど、毎回チャレンジと思い私たちも新鮮な気持ちで取り組ませていただいています。2022年の3月に栃木県で公演を行い、47都道府県全てを巡ることができました。公演をきっかけに、歌舞伎座に足を運んで下さる方も増え、ありがたく感じています。

中村勘九郎 ©福岡諒祠(株式会社GEKKO)

「出る杭は打つ!」「いや打たない!」

勘九郎:鶴松(中村鶴松)など、若手が活躍してくれるようになりました。『出る杭は打つ』という気持ちでやっています(笑)。役者は一生勉強ですから、僕らもまだまだ若手です。とはいえ、歌舞伎は、先人の思いを受け継いで、次の人たちに渡すことが使命。その精神を持ち続けてやって行きたいです。

七之助:僕は出る杭は打ちません。むしろ、若手にどんどん出ていただいて、僕らが楽になれば良い(笑)。今回一緒に踊る鶴松は、コロナ禍で半年以上舞台に立つことができず、苦しんだ時期がありました。その苦しさは、僕らの200倍くらいはあったと思います。スポンジのように吸収できる時期に舞台に立つことができなかった思いを、今後は舞台にぶつけて、たくさんのことを吸収してほしいですね。

中村七之助 ©福岡諒祠(株式会社GEKKO)

『中村勘九郎 中村七之助 春暁特別公演 2023』スペシャル対談


気が狂った踊りは役者冥利に尽きる―勘九郎/花見気分で歌舞伎の世界を―七之助

――2005年に始まった同公演。昨春は、全国47都道府県を制覇するという偉業を達成しました。

勘九郎:始まった当初は、こんなに長く続くとは思っていませんでした。継続は力なりですね。私たちはもちろん、中村屋の弟子たちも含め、みんなの力になっています。

七之助:東京や大阪などに行きづらい地方のお客さまの元へ、私たちが出向くことで歌舞伎を見る機会を作ることできることが、本当にうれしいです。

中村勘九郎・春暁特別公演2018「浦島」

――ことしの公演は、「元禄花見踊」「仲蔵狂乱」「相生獅子」の3本と「トークコーナー」で構成されますね。元禄時代の花見の様子を舞で表す「元禄花見踊」は春にぴったりの演目です。

勘九郎:元禄期の男と女が華やかに踊るので、まずビジュアルが見どころ。衣装の美しさや当時の頭のかつらの結い方にも注目してほしいです。

七之助:何も考えず、一緒に花見をするような気分でご覧いただき、歌舞伎の世界観に入っていただきたいです。

中村七之助・春暁特別公演2018「枕獅子」

――「仲蔵狂乱」は、「文化庁芸術祭」のテレビ・ドラマ部門で大賞を受賞した「忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵 出世階段」(NHK、2021年)で勘九郎さんが演じた稀代の歌舞伎俳優・中村仲蔵の代表的な舞ですね。本興行では1960年の歌舞伎座以来となる上演です。

勘九郎:本来の演目名は『狂乱雲井袖』と言いますが、彼の踊りの素晴らしさから、『仲蔵振り』として親しまれています。『仲蔵振り』は、気が狂っていると偽っている役なので、細かな踊り分けもあります。本興行ではなかなか披露されない珍しい踊りができることは役者冥利につきます。

――公演の最後は、七之助さんと鶴松さんが美しいお姫さまを演じる「相生獅子」です。

七之助:石橋物の中でも古い作品です。前半は二人のお姫さまが可憐な舞を見せますが、最後は獅子の精となって、お姫さまの恰好で毛を振ります。鶴松と二人でがっつり踊ることもなかなかないこと。格式がある踊りと、狂った獅子となり毛を振る様子を楽しんでいただきたいです。

――「トークコーナー」には、勘九郎さん、七之助さん、鶴松さんが登壇されます。

勘九郎:全国どこに行っても歌舞伎に縁がある史跡があるので、トークコーナーでは、地元の方とお話できることが楽しいです。歌舞伎は伝統芸能で、堅苦しくて敷居の高いイメージがあるので、お客様に心の壁を取っ払っていただけるように、できるだけ素の部分を感じていただけたらと思っています。

七之助:何度かうかがった土地には、なじみの店や場所ができました。MCを務めているラジオ番組の公式インスタグラムに投稿をするため、劇場の近くの名所や神社、歌舞伎に縁のある場所に行くようにしていて、トークの幅も広がったと思います。事前に募ったお客さまからの質問を通じてコミュニケーションを取ることも楽しみにしています。

(左から)中村七之助、中村勘九郎。トークコーナーでは事前に書かれた観客からの質問に答える。地元の人たちと交流を持つため、劇場周辺の名所には足を運ぶなどし、思いを通わせる時間を大切にしている。 
©福岡諒祠(株式会社GEKKO)

――最後に、公演を楽しみにしているファンにメッセージをお願いします。

勘九郎:コロナという流行り病が出てから早3年。これまでと勝手が違う日々の中で、鬱々とした気分を持たれている方もいらっしゃると思います。本当に短い時間ではございますが、劇場で芝居を見ている間だけは、その気分を忘れていただけるような美しい世界に誘いたい。春爛漫のひとときを楽しんでいただきたいです。

七之助:毎年恒例の巡業が今回もできる喜びを噛みしめながら、全国12か所24公演、ひとつひとつの公演を一生懸命踊りたいと思っております。私たちの体調面やスタッフもコロナ対策バッチリで、安全安心に見ていただけるよう気を引き締めて参りたいと思います。ぜひ足をお運びください。

*石橋物―歌舞伎舞踊,三味線音楽,箏曲,尺八楽,胡弓楽などにおいて,獅子を題材とするもの。能の『石橋』の系統に属する。

取材・文/翡翠
編集/MARU


公演情報

『中村勘九郎 中村七之助 春暁特別公演 2023』
出演: 中村勘九郎 中村七之助 中村鶴松 他
日程:3月6日(月)~3月23日(木) 全国12ヶ所
企画・制作:株式会社ファーンウッド、株式会社ファーンウッド21 協力:松竹株式会社
制作協力:サンライズプロモーション東京

2023年
3月
6日(月) 東京都北区 北とぴあ さくらホール
9日(木) 千葉県千葉市 千葉市民会館 大ホール
10日(金) 埼玉県川口市 川口総合文化センター・リリア メインホール
11日(土) 東京都江東区 ティアラこうとう 大ホール
12日(日) 長野県松本市 まつもと市民芸術館 主ホール
13日(月) 神奈川県相模原市 相模女子大学グリーンホール 大ホール
15日(水) 大阪府大阪市 サンケイホールブリーゼ
18日(土) 岩手県盛岡市 盛岡市民文化ホール 大ホール
19日(日) 宮城県名取市 名取市文化会館 大ホール
21日(火) 福岡県福岡市 キャナルシティ劇場
22日(水) 広島県広島市 広島文化学園HBGホール
23日(木) 愛媛県松山市 松山市民会館 大ホール
公式サイト:http://shungyo2023.com/
公式ツイッター:https://twitter.com/shungyo_

この記事を書いた人

翡翠
翡翠執筆・写真
音楽や映画、舞台などを中心にインタビュー取材や、レポート執筆をしています。強み:相手の良いところをみつけることができる。弱み:ネガティブなところ。

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