Interview
インタビュー

くさりまくっていた滝藤賢一「必死こいて」24年目ではじめての主演映画

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現在公開中の映画「ひみつのなっちゃん。」主演・滝藤賢一さんと田中和次朗監督の対談。

プロフィール

俳優滝藤賢一

1976年11月2日、愛知県生まれ。1998年から2007年まで、仲代達矢が主宰する俳優養成所「無名塾」に所属。映画「クライマーズハイ」(08年)で脚光を浴びる。3男1女の父でもあり2022年には「第41回ベスト・ファザー」賞に輝いた。

プロフィール

映画監督・脚本家田中和次朗

1984年6月5日、埼玉県生まれ。日本大学藝術学部映画学科卒業。短編映画の自主製作や劇団への戯曲提、アニメの脚本の共同執筆などを経て、「ひみつのなっちゃん。」で脚本・監督デビュー。

現在公開中の映画「ひみつのなっちゃん。」は、俳優の滝藤賢一さんの長編映画初主演作であり、田中和次朗監督のデビュー作。長年夢を追いかけ、掴んだふたりに聞いた「好きなことを仕事にする」人生。

滝藤賢一×田中和次朗

人間力を磨くために「人と違うことをやる」

――滝藤さんはくじけそうになったときに、支えにしている言葉はありますか?

滝藤:所属していた「無名塾」の主宰者でもある仲代達矢さんに教わった「生涯修行」という言葉です。

田中:生涯修行ですか。

滝藤:映画の演出を学ぶために19歳で上京して、21歳のときに仲代さんの俳優養成所に入ってからは、芝居漬けの日々でした。

「生涯修行」の役者人生について語る滝藤賢一

――仲代さんに「君は40歳を過ぎてから、チャンスが来る」と言われたとか。

滝藤:はい。とにかく「チャンスがくるまで技術を磨きなさい」とよく仰ってました。60代、70代……。遅けりゃ80代になって花開く人もいる。仲代さんの言葉を信じてやり続けるしかないと思いました。

田中:脚本も同じです。自分が見聞きしたことなどから、発想をふくらませていくので、人間力を上げることが大切だなと感じます。

苦しかった時代「必死こいてやった」

――華やかなお仕事の裏側では、歯を食いしばるような出来事もあったのでは?

滝藤:そうですね。映画「クライマーズ・ハイ」(2008年)まではくさりまくっていました。当時はまだ無名だった僕に、原田眞人監督が声をかけてくださって。オーディションで、いただいた神沢周作という新聞記者の役をきっかけに、少しずつお仕事をいただけるようになったんです。

田中:そうだったんですね。

滝藤:そこからは、踊る大捜査線シリーズ(2010年、12年)などのオーディションも受かっちゃたりして(笑)。人間って悪い時期もあれば、良いこともあって。最終的には、とんとん(どちらも同じ配分)なんだって思いました。

田中:やっぱり、信じて頑張るしかないですね。僕も企画が通らない苦しい時期があっても、好きで始めたことだから、続けることができたって思います。

田中和次朗監督「信じて頑張るしかない」

滝藤:それを言うとね、僕は別に舞台は好きじゃなかったんですよね。観たこともなかった。

田中:えっ。

滝藤:小学生のときに、テレビの映画番組を観て興味を持つようになったのが始まりです。ハリウッドスターに憧れて、映画の世界に入りたいと思っていたから。でも自分が芝居をできる場所は舞台しかなくて、そこで頑張るしかなかった。無名塾に所属していた10年間。それはもう必死こいてやりましたよ。

儲からない、モテない、報われない。「くさったとき」にどうするか?

――伝説の踊り子・バージンさんを演じるのにどのようなご苦労がありましたか。

滝藤:ドラァグクイーンの役は、僕のキャリアの中で最大のチャレンジでした。オファーをいただいたとき、「僕でいいのかな?」という不安を解消するために、監督と徹底的にディスカッションをしました。

左から、ドラァグクイーンのズブ子(前野朋哉)、バージン(滝藤賢一)、モリリン(渡部秀)
©2023「ひみつのなっちゃん。」製作委員会

田中:台本を突き合わせて、徹底的に話し合いましたよね。

滝藤:「探偵が早すぎる」のようにふざけることもできたんです。やれる場所はいっぱいありましたし、僕自身もすぐちょけたくなりますから……。でも今回はそれを封印したこともチャレンジでした。田中監督が、ちゃんと見極めてコントロールしてくださったおかげです。

――滝藤さんからはどのような質問があったのでしょうか。

田中:役作りについてはもちろん、なぜここにこのセリフがあるのかなど細部に渡りました。僕は今回が脚本と監督を務めた初めての作品でしたから、こうやって現場でキャストやスタッフと作り上げていくんだなと良い経験になりました。

――バージンさんの「儲からない、モテない、報われない」というセリフが印象的でした。

田中:映画は、実際にドラァグクイーンをしている、エスムラルダさんに(ドラァグクイーンの所作などについて)監修をしていただいているのですが、バージンさんの言葉は、まさにエスムラルダさんが口にされていた言葉でした。その後に続いた言葉が、「でもね、好きでやっているのよ」って。

映画の1シーン
©2023「ひみつのなっちゃん。」製作委員会

――それを言われたらもう、言い訳できないですね。自分で好きでやっている。

滝藤:くさったって良いと思うんですよね。

田中:重要なのは、そうなったときどうするか、ですね。

滝藤:うん。くさるなってよく言われるけど! 僕はとことんくさってましたね。どん底まで落ちました。でも人間悪い時ばかりしゃないはず。どん底を経験したら、後は天国まで一直線ですよ(笑)。好きなことがあるだけで幸せですから。

田中: 確かに(笑)。

取材・文/翡翠
写真/工藤朋子
編集/MARU

©2023「ひみつのなっちゃん。」製作委員会

公開情報

『ひみつのなっちゃん。』
2023年1月13日(金)より 新宿ピカデリー他 全国公開中
1月6日(金)愛知・岐阜先行公開
脚本・監督:田中和次朗
出演:滝藤賢一、渡部秀、前野朋哉、カンニング竹山ら
製作:東映ビデオ 丸壱動画 TOKYO MX 岐阜新聞映画部
ロケ協力:岐阜県郡上市
ドラァグクイーン監修:エスムラルダ
配給:ラビットハウス 丸壱動画
公式サイト:himitsuno-nacchan.com
公式twitter:@HimitsuNacchan

この記事を書いた人

翡翠
翡翠執筆・写真
音楽や映画、舞台などを中心にインタビュー取材や、レポート執筆をしています。強み:相手の良いところをみつけることができる。弱み:ネガティブなところ。

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