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インタビュー

初主演のために全身脱毛? そこまでやる滝藤賢一の仕事論

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映画「ひみつのなっちゃん。」に出演する俳優の滝藤賢一さんと、田中和次朗監督の対談。

プロフィール

俳優滝藤賢一

1976年11月2日、愛知県生まれ。1998年から2007年まで、仲代達矢が主宰する俳優養成所「無名塾」に所属。映画「クライマーズハイ」(08年)で脚光を浴びる。3男1女の父でもあり2022年には「第41回ベスト・ファザー」賞に輝いた。

プロフィール

映画監督・脚本家田中和次朗

1984年6月5日、埼玉県生まれ。日本大学藝術学部映画学科卒業。短編映画の自主製作や劇団への戯曲提、アニメの脚本の共同執筆などを経て、「ひみつのなっちゃん。」で脚本・監督デビュー。

俳優の滝藤賢一さんがドラァグクイーン役で初主演する映画「ひみつのなっちゃん。」が1月13日に公開。
メガホンを取った田中和次朗監督は、今作がデビュー作。夢を仕事にすることができた秘けつについて聞きました。

滝藤賢一×田中和次朗

センミツ―0.3%のための99.7%の努力

――田中監督はどういう経緯で監督に興味を持たれたのでしょうか?

田中:僕は映画やドラマが好きでよく観ていました。中でも三谷幸喜さんのドラマ「王様のレストラン」が好きで、作品の最後に流れるエンドロールで、脚本家という仕事を知り、「これを仕事にしたい」と日大の藝術学科に進学して脚本について学びました。

――シナリオの学校でスタッフをしながら監督になられたそうですね。

滝藤:そうだったんですね。

田中:はい。大学の先輩には、映画「南極料理人」(2009年)や、ドラマ「火花」(16年)などで監督を務めた沖田修一さんがいて、いまも親しくさせていただいています。大学と並行して、青山のシナリオ・センター(東京都港区)でも学んで、24歳まではスタッフ業務をしながら脚本を書き続けていました。僕ら脚本家は“センミツ”という言葉があるんですけどね……。

滝藤:センミツって?

田中:1000本書いて、そのうち3つ通れば良い……という意味です。997本は採用されないので、書くたびに心を砕かれます。でもこの仕事が好きだから、書くことを止めることはできませんでした。

田中和次朗監督。「書くことを止めることはできない」

――それは、好きだからこそ頑張れる部分ですね。

田中:そうですね。

――滝藤さんは、俳優を続けることができた理由について、どのように思われますか。

滝藤:僕の強みは、真面目だということ。俳優が「芸の肥やし」だと言って六本木や銀座に繰り出して、豪快に遊んでいた最後の世代じゃないですかね。勿論僕は仕事もお金もなく遊び方も知らないので、羨ましいなと思いながらも遊ぶことは早々に諦め、ひたすら芝居だけと向き合ってきました。今もそれは変わらないですね。

滝藤賢一。「今の自分があるのは努力し続けた結果」

――がむしゃらにやる時期、努力が必要ということですね。

滝藤:カタールで行われたFIFAワールドカップに日本代表フォワードとして出場した浅野拓磨選手(ドイツ・ボーフム)が、ドイツ代表を相手に決勝ゴールを決めた後のインタビューで「4年間このために頑張って来た。努力を欠かしたことは1日もなかった」と言っていて、全くその通りだと思いました。4年間はもちろんのこと、プロのサッカー選手になると決めた日、W杯に出場すると夢見たそのときから、彼らは1日も無駄にすることなく、努力を続けていたと思うんです。僕ら役者も同じだと思います。

田中:本当にその通りですね。日常を繰り返していくこと。続けることが大切なのだと思います。

劇場用長編作の初主演で、ドラァグクイーンに挑戦

――ドラァグクイーンの役のオファーにはどう感じましたか?

滝藤:僕はLGBTQ+ではないので、最初にお話をいただいたときは、自分がこの役をやっていいものだろうかと不安がありました。監督にお会いし、セリフひとつひとつの意味などについて話し合う時間をいただき、安心してチャレンジ出来ると確信したので、受けさせていただきました。

田中:台本を手に3~4時間くらい話したでしょうか。滝藤さんからは、セリフの語尾など細かい部分も、「どうしてこうなるのか」と質問がありました。丁寧にメモも取られていて、作品や役に真摯に向き合って下さっていることが伝わりました。

――田中監督は今作が脚本・監督デビュー作ですね。

田中:はい。8年ほど前から、お葬式をテーマにした作品を描きたいと思っていました。オネエの知人に、「オネエの友だちが亡くなって、葬式に行くことになったんだけど、仕草でバレないかしら」と映画と同じような話を聞いて、物語をふくらませていきました。

伝説のドラァグクイーン・バージンに扮する滝藤賢一 
©2023「ひみつのなっちゃん。」製作委員会

――3人のドラァグクイーンは、東京から式が行われる岐阜県の郡上八幡を目指しますが、郡上八幡に何か思い入れがあったんですか?

田中:ひとつは、僕の母方の祖母が暮らしていること。それから、親の仕事の関係で中学2年生のときに1年間住んでいたことがありました。新しい学校。慣れない土地など不安がありましたが、転校してきた僕を受け入れてくれたのが、郡上八幡という場所でした。3人を受け入れてくれる場所はどこかなと考えたとき、中学生の僕を受け入れてくれた縁がある場所がピッタリだなと思い、縁がある場所で撮影を行うことを決めました。

――キャスティングは2年前に行われたそうですね。

田中:はい。滝藤さんのことは、ドラマや映画化もされた「半沢直樹」(2013年)など、活躍される姿を拝見していました。中でもオダギリジョーさんが主演したドラマ「リバースエッジ 大川端探偵社」(14年)で、オダギリさん演じる調査員・村木に尾行されている滝藤さん(11話)が印象的でした。走りに狂う役で、爆発していた。その姿をずっと忘れられずにいました。

滝藤:あぁ、そうだったんですか。なっちゃんとは、かけ離れた役でしたよね(笑)。

田中:ええ。でも普段は優しくて穏やかなバージンさんが、内に秘めている爆発しそうな熱を表現していただけるのは、滝藤さんしかいない!と思っていました。

自分の中に眠っていたある「ひみつ」が開花?

――ドラァグクイーンを演じてみてどうでしたか。

滝藤:バージンを演じるにあたっては、女性よりも女性らしくいようと、所作などデフォルメしていました。じゃないと全然女性に見えなかった。

映画の中の1シーン 
©2023「ひみつのなっちゃん。」製作委員会

田中:浴衣を着ているシーンは、本当にキレイでした。ちょっと悩みを抱えている伏し目がちな表情とか、まとめた髪の後れ毛とか。

滝藤:身体は男だけれど、心は女性。少しでも女性に近づくことができればと思って、脇や脚など身体の毛は全部剃ったんですよ。

田中:滝藤さんは剃って、渡部さんは剃らない。それぞれに選択がありましたね。

滝藤:今回の撮影では、女性として存在するために、メイクさんやスタイリストさんがキレイにしてくださるので、それがうれしかったですね。自分の中に眠っていた女性性が開花したかもしれません。

田中:そうなんですか!(笑)

滝藤:“ひみつ”でお願いいたします(笑)

取材・文/翡翠
写真/工藤朋子
編集/MARU

©2023「ひみつのなっちゃん。」製作委員会

公開情報

『ひみつのなっちゃん。』
2023年1月13日(金)より 新宿ピカデリー他 全国公開
1月6日(金)愛知・岐阜先行公開
脚本・監督:田中和次朗
出演:滝藤賢一、渡部秀、前野朋哉、カンニング竹山ら
製作:東映ビデオ 丸壱動画 TOKYO MX 岐阜新聞映画部
ロケ協力:岐阜県郡上市
ドラァグクイーン監修:エスムラルダ
配給:ラビットハウス 丸壱動画
公式サイト:himitsuno-nacchan.com
公式twitter:@HimitsuNacchan



この記事を書いた人

翡翠
翡翠執筆・写真
音楽や映画、舞台などを中心にインタビュー取材や、レポート執筆をしています。強み:相手の良いところをみつけることができる。弱み:ネガティブなところ。

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