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高森厚太郎の半径5メートルのビジネスモデルビジネスを成功に導く「人を巻き込む」コミュニケーションの秘訣

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ビジネスでは資金提供者や事業協力者など、時に「人を巻き込む」必要もあるでしょう。今回は、「人を巻き込む」ために欠かせない「コミュニケーション」について考えていきます。

プロフィール

プレセアコンサルティング代表取締役パートナーCFO高森厚太郎

東京大学法学部卒業。デジタルハリウッド大学院客員教授。プレセアコンサルティングの代表取締役パートナーCFO。一般社団法人日本パートナーCFO協会 代表理事。

++ビジネスで人を巻き込むには?++

松井ゆみ(32歳)は、中堅学習塾チェーン勤務の傍ら、今後のキャリアのために「知育玩具の商品企画」副業をはじめ、ゆくゆくは起業したいと考えている。

この数ヶ月をかけてビジネスモデルを考え、さらに具体的な事業計画を作ってきた。

ビジネスプランも収支計画も、納得いくものが出来てきたところで、姉のまゆから

「そういえば、友達のエリコちゃんがベビー用品のECサイトやってたよね。お店で扱ってもらえないか聞いてみようよ! あとは…お金も、私たちの貯金はあるけど、全部使うわけにはいかないものねぇ」

と投げかけられた。

「友人とはいえ、ビジネスとして関わるのは初めて。一体どうしたらうまく伝えられるのかな。あとはテストマーケティングも私と姉だけでは心許ないし、協力者やお金はどうやって集めたらいいのかしら」

と頭を抱えるゆみ。

ビジネスを進めるため、パートナーや資金が必要だと気づいたものの、誰をどう巻き込んだらいいのかわからず、次の一歩が踏み出せなくなってしまった……

コミュニケ―ションこそ成功への秘訣

写真/shutterstock

「半径5メートルのビジネス」を現実の形にしていく過程では、自分が行動するだけではなく、資金提供者や事業協力者など、時に「人を巻き込む」必要もあるでしょう。

今回は、「人を巻き込む」ために欠かせない「コミュニケーション」について考えていきます。

ビジネスにおけるコミュニケーションとは

社内・社外、報告連絡相談、面談・会議・プレゼン・メール・チャットetc、どんな仕事であれ、ビジネスに関わるコミュニケーションをとる機会は、無数にあります。機会を「誰に」「どんな目的で」「どんな方法で」と振り分けると、以下のように整理できます。

誰に社内(他部署、上司、部下、同僚)、社外(顧客、取引先)
どんな目的で報告・連絡・相談、決裁、人事評価、謝罪、提案、クレーム対応
どんな方法で会話・面談、会議、プレゼンテーション、メール、チャット、文書
どんな形態で1対1、1対n、n対n
その他の要素どのタイミングで/どんな場所で/どんな中身で/どんな言い方・書き方で

例えば、会社員の場合は

  • 上司へ報告・連絡・相談
  • 部下へ指示出し、進捗確認
  • 他部署を含めた会議
  • 顧客や取引先との面談やメール連絡
  • 業務日誌や議事録の作成

などが挙げられます。

フリーランスであれば、

  • 顧客や取引先との面談やメール連絡
  • 業務委託先へ指示出し、進捗確認

でしょうか。

自分のしてほしい行動を相手にしてもらう

写真/shutterstock

上述の通り、ビジネスにおけるコミュニケーションの対象も方法も様々です。では、その究極の目的は何でしょうか?

例えば、何か問題が起こって、その問題について上司に報告するのは、現状を理解してもらい、今後の進め方のアドバイスをもらったり、進め方の了解を得ることです。部下への指示出しは、部下にして欲しい事を伝え、理解し、動いてもらうことです。取引先なら、信頼関係を深めて、自社の商品・サービスをもっと買ってもらうでしょうか。

つまり、ビジネスにおけるコミュケーションの目的を突き詰めると「相手に自分のしてほしい行動をしてもらうこと」に集約できます。

「その気になってもらう」ことが大事!

写真/shutterstock

ビジネスにおけるコミュニケーションの目的は「相手に自分のしてほしい行動をしてもらうこと」ですが、さらに一歩進めて「どんな風に行動してもらいたいか」ということも考えてみましょう。

例えば、上司が部下に対して「力関係の差」で行動をさせる、ということも可能でしょう。

しかし、「嫌々・しかたなく」行動してもらう場合は、「自ら進んで」行動したときと比べて、心理的な負荷がかかったり、理解が不十分で意図した行動を得られなかったり、最終的な行動の結果にも差が出る可能性があります。

よりよい行動をしてもらうためには、「相手には“嫌々”ではなく、“自ら進んで”行動してもらう」必要があります。

そのためのコミュニケーションのゴールは、「聞いてもらう」「理解してもらう」だけではなく「納得してもらう」さらには「共感してもらう(その気になってもらう)」ことが重要となります。

相手を納得をさせるコミュニケーション術

「納得を作り出すコミュニケーション」のプロセスとして、「相手の状況を理解する」「伝えたいことを整理する」「言葉・文章にして実際に伝える」という3つに分けることができます。

それぞれのプロセスの具体的な内容について一つずつ見ていきましょう。

(1)相手の状況を理解する

最終的に相手に納得してもらうコミュニケーションを考えていく際、まずは相手の状況を知り、理解する必要があります。

本人や周囲の人に聞いたり、文書や日頃の言動を見たりすることで、相手が置かれている状況(周囲の期待・役割)や解決したい課題、目指す方向などについての理解を深めます。

表面的な情報だけではなく、背景情報も含めて理解することで、本当に「答えるべき問い」(=イシュー)が明らかになります。

(2)伝えたいことを整理する

例えば伝えたいことについて自分なりにまとめていても、そのままの形で相手にぶつけて相手に伝わるとは限りません。

「結局何を伝えたいのか?」「その理由(ロジック)は何か?」「伝える順番はどうするか?」などを考え、相手に伝わるように、メッセージを組み立てていく必要があります。

合理性を追求するだけではなく、相手の感情にも配慮したメッセージにすることがポイントです。伝えたいことの整理に適したフレームワーク(ピラミッドストラクチャー※)を知っていれば、よりスムーズにできるでしょう。

※ピラミッドストラクチャーについては、次回以降の連載で具体的に紹介していきます。

(3)言葉・文章にして実際に伝える

伝えたいことが整理出来たら、それを言葉・文章に落とし込み、実際に伝えていきます。

「タイミングや場所は?」「方法は?」「どのような言葉を選ぶか?」などを考え準備をしていきます。さらに、実際に伝える時には、場の雰囲気やアイコンタクトなどの「非言語表現」にも留意しながら、相手にもっとも伝わりやすい方法でメッセージを伝えます。

半径5メートルのビジネスを成功に導く
コミュニケーションのカギは納得と共感

写真/shutterstock

「半径5メートルのビジネス」において、自分以外の誰かを巻き込むには「相手に自分のしてほしい行動をしてもらえる」よう、「納得を作り出すコミュニケーション」を意識して行動していきましょう。 次回以降のコラムでは、プロセスの2つ目「伝えたいことを整理する」で紹介したフレームワーク「ピラミッドストラクチャー」を使いこなせるように、詳しく解説していきます。

この記事を書いた人

高森厚太郎
高森厚太郎プレセアコンサルティング株式会社 代表取締役パートナーCFO
プレセアコンサルティングの代表取締役パートナーCFO。一般社団法人日本パートナーCFO協会 代表理事。デジタルハリウッド大学院客員教授。東京大学法学部卒業。筑波大学大学院、デジタルハリウッド大学院修了。日本長期信用銀行(法人融資)、グロービス(eラーニング)、GAGA/USEN(邦画製作、動画配信、音楽出版)、Ed-Techベンチャー取締役(コンテンツ、管理)を歴任。著書に「中小・ベンチャー企業CFOの教科書」(中央経済社)がある。

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