困りごと解決の実例に見るビジネスの可能性なぜ「人の困りごと」に目を向けるとビジネスがうまく行くのか? 自分の困りごとは誰かのニーズになる
ビジネスの基本はお客様のお困りごとを解決すること。それがどんなに小さなことでも、解決してほしい人がいる限り、ビジネスになる可能性を秘めている。世の中の困りごとのなかに、あなたが解決できる困りごとはないですか?
今も昔も、ビジネスの基本はお客様のお困りごとを解決することだ。サザエさんに出てくる三河屋さんは、御用聞き。磯野家の「お酒がなくなりそう」などの困りごとを引き出し、「今日入れておきますよ」と見事解決してくれる。
三河屋さんは酒屋さんだ。自分が取り扱っている商品と顧客である磯野家が必要なモノを把握しているからこそ、磯野家に必要で、自分が提供できるものを先回りして提案し、お困りごとを解決して喜んでもらうことができるのだ。
では、世の中にはどのような困りごとがあるのだろうか?
目次
事例① 子育てママの困りごとと自分の経験を掛け合わせる
子育てママの困りごとはなんだろう?
まずは、子育てママの困りごとを知るために、あるアンケート結果を見てみよう。
2021年11月17日~11月24日まで、しゅふJOB総合研究所による就労志向のママ層に行った『優先した時間・したい時間』アンケート調査によると、就労志向のママが2021年に優先してきたのは「家事・育児・介護の時間」が47.1%、「家族のコミュニケーション時間」が43.6%という結果となった。一方で「休息・睡眠時間」は微増しているものの、4位に後退している。
一方で、2022年に優先したいと願っているのは、「家族のコミュニケーション時間」が44.3%で1位だが、それに次いで「休息・睡眠時間」が2位となっており、コロナ禍が続くなか、ママ層の疲れが蓄積されている様子がうかがえる。
家族との時間を大切にしたい一方で、休息・睡眠時間が不足していて疲労が蓄積していることが、子育てママの最大の困りごとなのだ。
この困りごとを保育園の立場から解決しているのが、神奈川県の特定非営利活動法人みずとんぼが運営する認可外保育園【とんぼのおうち保育園】だ。
【とんぼのおうち保育園】は、みずとんぼの代表理事である三瓶 憲一さんの保育士14年・園長4年の現場と運営の両面の経験から、誰もが無理なく子育てができる環境づくり「気楽に子育て」「気軽に保育」の「ラク育」 の実現の第一歩を踏み出したい!と考えて作られている。
子育てママたちの困りごと「休息・睡眠時間がとれない」を解決する方法は?
「一時保育を利用すればいいのでは?」と思われるかもしれない。しかし公的な一時保育は利用条件があったり、一週間以上前に予約が必要だったりするところが少なくない。また、どこか保育園に在籍している子どもは、たとえその保育園が休園していても公的な一時保育ではあずかれない。そんなときに一時保育ができるのは、認可外保育園しかないのだ。
そこで【とんぼのおうち保育園】は、短時間の一時保育『Chocotteほいく』を事業の主軸に据えた。
『Chocotteほいく』はだれでも利用できるから、子育て中のママが気軽に子どもを預けてひとりの時間を作ることができる。事前に予約が必要な園がほとんどの中、当日でも一時保育が利用できるのは本当にありがたいサービスだし、荷物なし利用ができる「おきがるオプション」は忙しいお母さんや急な一時保育利用のときにはとても便利だ。
他にも、自宅まで子どもをお迎えに来て、保育を行ったあとに自宅まで送り届けてくれる「いえからほいく」、小3までの兄姉を一緒にあずかる「きょうだいほいく」など、ますます痒い所に手が届く新サービスを次々リリースしている。
そこで行う短時間の一時保育『Chocotteほいく』は、子育て中のご家族の「休息・睡眠時間がとれない」悩みを解決できるに違いない。
このように、子育てママの困りごと「休息・睡眠時間がとれない」について、「気軽に利用できる一時保育を立ち上げる」ことで解決に導いている。まずは何が問題なのかを見つけ、自分のできることとのマッチングを行うことが肝要だ。
事例② 高齢者の困りごとと貧困層の困りごとを掛け合わせる
高齢者の困りごとはなんだろう?
もう一つ、今度は生活に関する困りごとを見てみよう。
厚生労働省「各種世帯の所得等の状況」によると、日本における相対貧困率は15.4%。6人に1人が相対的貧困に苦しんでいる計算だ。中でも高齢者のひとり暮らしやひとり親世帯に貧困が多く、7人に1人の子どもが貧困家庭に暮らしている。
厚生労働省「2021年 国民生活基礎調査の概況」によると、2021年の単身高齢者世帯は全世帯の30%に迫る勢いだ。今後、年金だけでは生活が賄えきれない貧困に苦しむ高齢者が多くなると予想されている。
貧困層が増加する見込みである一方で、大量にものを買い込んだまま忘れてしまい、消費できずに処分する高齢者も少なくない。
コロナ禍を経て増えた家時間を活用して生前整理を始める人が増えているが、困るのが大量に出てくる食品や日用品の処分方法だ。まだ使えるものも多く、そのまま廃棄するのも気が引ける。
そこに着目したのが、トカノハート&ハートボランティアグループだ。遺品整理・生前整理と訪問介護・家事代行を組み合わせた事業を行うトカノハート&ハートを営む松井麻律さんと、フィットネストレーナーとして宅トレを発信する古川杏梨さんが立ち上げたこのグループは、月に1度ボランティアイベント『とかとかFREEE🌞MARCHE』を行っている。
高齢者の困りごと「不要な食料や日用品をなんとかしたい」を解決する方法は?
『とかとかFREEE🌞MARCHE』は、買いだめして忘れ去られた大量の食品や日用品を、貧困に苦しむ世帯に活用してもらうための取り組みだ。
15分程度の運動に参加してもらい、そのあと生前整理作業で出た食材や日用品などを配布している。フィットネストレーナーである妹の得意分野である運動と、姉の得意分野である生前整理の組み合わせがとてもいい。
「運動に参加する」のがメインのイベントなので誰でも参加できるし、運動への参加賞として食料や日用品がいただける、ということであれば引け目を感じることなく受け取れる。話すきっかけがあるから、困りごとの相談もしやすいのではないだろうか。参加者に優しい、とても画期的な取り組みだ。
グループを立ち上げた松井麻律さんと古川杏梨さんは、生前整理やフィットネスインストラクターという仕事柄、高齢になったり病気や怪我をしたり、大事な人をなくしてから悔やむ人たちをたくさん目の当たりにしてきた。彼女たち自身も父親を自死で失うという体験をしている。
地域のコミュニティを作ることで、助けを求めることができず、世間から孤立してしまう人たちを一人でも減らしたい。そんな思いで、このイベントを始めたそうだ。
このイベントを行うことで、食品ロスや使えるものの廃棄を防ぐことができ、運動が不足しがちな高齢者等の運動不足解消になり、孤立している人や金銭的に困っている人たちがSOSを発するきっかけになる。体調管理や安否確認にもつなげられるに違いない。
この事例は直接ビジネスと結びついているわけではない。しかし継続することでこのイベントが広まっていけば、たくさんの新しいつながりだけでなく、新しいビジネスの種がきっとここから生まれるのではないだろうか。
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まずは身近なところから、困りごとをさがしてみよう
とんぼのおうち保育園の三瓶 憲一さんも、トカノハート&ハートボランティアグループの松井さん・古川さんも、困りごとに気づいたのは自身の経験の中からだ。
三瓶さんは現場と経営の両面から一時保育の重要性に気づき、松井さんと古川さんは生前整理で出る不用品を活用したいという思いから、金銭的・精神的に困っている方たちへのケアを組み合わせたイベントを思いついた。
まず、自分の困りごとや身近な人の困りごとを探すところから始めてみよう。例えば「この辺には美味しいパン屋がないのよね」という困りごとなら、パンを上手に焼ければ仕事になるかもしれない。お店を開くのはもちろん、教室を開くのもありだし、美味しいパン屋から仕入れて売るのも一つの案だ。
また、自分ではできるのが当たり前になっていて、案外気づいていないこともある。誰かに褒められたり、お礼を言われたことを思い出してみるのも有効だ。ただただ好きで続けてきたことが、実は仕事になる可能性だってある。あなたのこれまでの経験がきっと、ビジネスの種になるはずだ。
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この記事を書いた人
- 知りたがりのやりたがり。エンジニア→UIデザイナー→整理収納×防災備蓄とライターのダブルワーカー、ダンサー&カーラー。強み:なんでも楽しめるところ、我が道を行くところ。弱み:こう見えて人見知り、そしてちょっと理屈っぽい。座右の銘は『ひとつずつ』。