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50代が平均年収を上げる3つの方法と人生100年時代の夢のある働き方

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リスキリングやセカンドキャリアといった言葉が飛び交う時代になり、中高年の働き方の理想像が見えにくくなっています。その道しるべは、はたしてどこに? 気鋭のビジネス書評家からヒントを教えていただきます。

土井英司

プロフィール

ブックコンサルタント土井英司

ブックコンサルタント。日刊書評メールマガジン「ビジネスブックマラソン」編集長。慶應義塾大学総合政策学部卒業。Amazon.co.jp立ち上げに参画、アマゾンのカリスマバイヤー」と呼ばれる。『20代で人生の年収は9割決まる。』(日経ビジネス人文庫)『人生で読んでおいた方がいいビジネス書75冊』(エムディエヌコーポレーション)など著書多数。

平均寿命の延びや価値観の多様化などから、中高年の働き方が話題になっています。例えば、この年代で転職・独立を目指す人が増えたことで、「リスキリング」の重要性があちこちで叫ばれています。また、「セカンドキャリア」という言葉もなじみあるものとなりました。

対して、今主流となっている働き方の論調に一石を投じるのは、ビジネス書評家の土井英司さん。人生100年時代のこれからの働き方について、さまざまな切り口から語っていただきました。

自身の市場価値を上げる

日本の人口がどんどん高齢化しているなかで、最近は中高年のリスキリングが流行っています。でも私は、リスキリングは難しい面があると思っています。「あなたのスキルは古いから、新しいスキルを見つけなさい」って言われても、人って頑張れないと思うからです。

「このスキルを身につけたら、こういう未来が待っている」というわくわく感がないと無理でしょう。人が頑張るためには、「余地」が大事だと思います。余地というのは、そこにチャンスがあるとか、そこに移ればうまくいきそうという直感です。

その手引きとしておすすめしたいのが、リクルートワークス研究所による『「働き手不足1100万人」の衝撃』(プレジデント社)

タイトル通り、この本では2040年に1100万人もの人材が不足するという予測がなされています。本を読むことで、1100万人の“人材不足社会”で自分がどのポジションにいたらチャンスがあるかが見えてくるということです。それが見えてから、必要なことを勉強すればいいでしょう。

逆にリスキリングがブームだからと、その手段から入ると挫折するでしょう。手段でなく、わくわくする目的が先です。

そのためには新しく出てきているものと積極的に関わることです。50代以降は、新しい産業に身をおいて、若者を手伝って結果を出しているような人が輝くのだと思います。

未来はどこにあるのかと言えば、若者にあるのです。だから若い人が、今何に取り組んでいるのかをちゃんと知り、自分はどこでお手伝いができるのかを考えると、自分の活かし方が見えてくるでしょう。

リスキリングは、そうなったうえでの話だと思います。人生は長いので、高齢になってからでもいくらでも学べます。こう考えると、面白い未来が待っているのかなと思います。

給料を上げるたった3つの方法

ところで、「高い給料とやりがい、どちらをとるべきか?」という大きなテーマがありますね。

北野唯我さんの書いた本に『転職の思考法』(ダイヤモンド社)という本があります。これには、転職希望者のマーケットバリューは、

 1.技術資産
 2.人的資産
 3.業界の生産性

の3つで決まると書いています。

技術資産とは自分が持っている技術、人的資産とは自分が持っている人のネットワークをいいます。そして、業界の生産性が高いところは、給料が高くなる構造を持っています。

例えば製薬業界は、昔から給料が高いことで有名です。これは、お医者さんが薬価を決めるので、利用者に値引き交渉の余地がないためです。価格が絶対下がらない構造を持っているので、製薬会社の生産性が高いのです。

この3つをリサーチして外さなかったら給料は上がります。だから、給料を上げることを考えるなら、この3ポイントだけ考えていればいいのです。意外と簡単なのです。

リスクを考えずに「夢」を見れるかどうか?

ですが、どちらかというと、私は夢の方が大事だと考えます。

もちろん、お金も大切です。頑張っているけど、お金が儲からないという人は、お金というものがわかっていないものです。その場合、会計学などお金というものの本質を学ぶところから始めましょう。そうした本を読んで、最低限のことをやるだけでも全然違ってくるのです。

究極的に人間に大事なのは夢です。なので、給料に不満がなかったら、夢が見られる仕事をしてほしい。そんな天職に出合うと瞬間的に、「それだ! これが自分の仕事だ」とわかることは多いです。

建築家の安藤忠雄さんの場合は、大工さんが来て、仕事をしているのを見て、面白い仕事だって思って、それで建築家になったそうです。テニスのジョコビッチは、7歳の時、既に世界一になることを宣言していました。

天才でなければ、天職を見つけるには、どんな世界があるのかを広く見ないといけません。所詮は、就職して1つの会社で勤めても、その会社とその業界しか知らないわけだから、そこに自分の夢があるとは限らない。

だから、もっと広く世界を見た方がいいと思うのです。家と会社の往復ばかりしている場合ではなくて、旅をしたり、いろいろな人と会ったりして、様々な世界を覗いてみないと、夢は見つかりません。

そもそも日本人は、インプットの量が少なすぎます。少なくともどんな職業が世の中にあるのかをもっと見た方がいい。それを知るための時間がないのであれば、なるべくいろいろな世界の人の本を読む。あえて興味の持てない業界についての本も読む。そうすると、意外と面白い世界が見てきて、ちょっと興味を持つのではないですか。

50代の男女に必要な生活の知恵と健康

これからの時代、中高年にとって重要になるものが2つあります。

1つは生活の知恵を持っているかどうか。もう1つは健康であるかどうか。

生活の知恵とは、お金としてかかる生活コストを最小にする知恵です。多くの人が、貨幣経済に満ちた都市で育ってしまうから、お金の面で不安になるのです。何でも買わなくてはいけないって思ってしまうのですね。例えば野菜は自分で作ってもいい。私も家庭菜園をやっていて、多少はお金をかけずに食べていけますが、そういった知恵をつけていくと、お金の不安が1つずつ減っていくのです。

そして、健康であることも安心を生みます。健康なら、何歳になっても働けますし。『LIFE SHIFT (ライフ・シフト)』(東洋経済新報社)で、著者は「人生100年時代」を唱えましたが、このときから大事なことは、お金そのものではなくなったのです。

100年と言えば、65歳で定年退職して残りは35年。35年間を金融資産だけでやっていける人は、ほぼいないのですね。ということは、健康でいつまでも働ける「健康資産」の方に価値が出てくるのです。それでなくても、働き手不足になるのは確実なので。

健康でいるための知識を身につけた方が、病気になるほど頑張ってお金を稼ぐより重要な時代になったのです。若い人は、多分それに気づいているから、あまりガツガツしないし、ストレスに満ちた職場に行かないですね。合理性がある考え方だと思います。彼らは、自分たちのこれからの時代を予見しているのです。

50代の強みは新しい産業に関心をもつこと

『LIFESPAN (ライフスパン) : 老いなき世界』(東洋経済新報社)という本がありますが、それによれば人間の老化は防げるといいます。老化の仕組みはざっくり言うと、遺伝子を傷つけるようなことがあると、それを修復するのにエネルギーが使われて、その結果老化するのです。修復作業が必要でないと、人間は老化しないままで、寿命が120年ぐらいに延びると。その方面の研究が進んで、老化せずに生きる世の中になっていきます。あとは、眼球を人工レンズと交換するとか、パーツ交換の感覚で手術することに抵抗感のない社会になるでしょう。

若いまま寿命が延びていくということは、高齢になってもチャンスが増えるということです。するとますます、お金の重要性は減ります。わくわくするものに出合えることの方が、価値が高まってくるでしょう。

この記事を書いた人

鈴木 拓也
鈴木 拓也
都内出版社などでの勤務を経て、北海道の老舗翻訳会社で15年間役員を務める。次期社長になるのが嫌だったのと、寒い土地が苦手で、スピンオフしてフリーランスライターに転向。最近は写真撮影に目覚め、そちらの道も模索する日々を送る。

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