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美大卒じゃなくてもイラストレーターになれる美大卒じゃなくても地方在住でも、コレを徹底的にわかりやすくすれば、仕事は絶対増える! イラストレーター・えんぴつ座さんインタビュー第1話

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「イラストレーターになる」という夢をかなえることを決意したえんぴつ座さん。プロになるために行なったこと、プロだからこそ行なっていることについて伺いました。

プロフィール

イラストレーターえんぴつ座

福島県出身。宇部市在中。新卒から約10年間分析業務に従事してきたが、2018年12月、子どもの頃からの夢であるイラストレーターとして活動を開始。現在は「書籍・広告」の分野で活動中。いきいきとした人物描写に定評がある。二児の母。

憧れてはいたけれど、まさか自分がそれを仕事にするなんて思ってもみなかった、イラストレーターという職業。全く違う仕事についてはみたものの、好きな仕事に就いて輝く同僚を目の当たりにして一念発起し、「イラストレーターになる」という夢をかなえることを決意したえんぴつ座さん。プロになるために行なったこと、プロだからこそ行なっていることについて伺いました。

全3話、第2話はこちらからどうぞ。

安定企業に就職。やりたいことをやる前からあきらめていた

ライター顔写真

えんぴつ座さんは、もともとはイラストとは全く関係ないお仕事をされていたそうですね。

インタビュアー顔写真

私が子どもの頃は、「企業に勤めることが安定した生活につながる」というイメージがあったんです。母子家庭だったし、刷り込みのように「絵で食べていくことは難しい」と教えられていたので、「それは無理なんだ」と無意識に思っていました。なので、絵とは全く関係ない企業に就職したんです。

ライター顔写真

就職先では、どんなお仕事をしていたのでしょう?

インタビュアー顔写真

食品メーカーの分析センターで、製品の抜き取り検査の際の分析をしていました。企業に勤めることは叶いましたが、仕事内容に全然興味が持てなすぎて、本当につらかったですね。分析が好きで、好奇心を持って仕事に取り組んでいる同僚の姿を目の当たりにして、すごく輝いて見えて、うらやましくて。

その時はじめて「わたしってまだ何もやっていないのにあきらめていたんだ」ということに気づき、後悔し始めてしまったんです。

ライター顔写真

そうだったんですね……。そこからイラストレーターを目指したきっかけはなんだったのでしょう?

インタビュアー顔写真

そんな時に結婚し、子どもが生まれたのが、キャリアを見直すいいタイミングになりました。同じころ、長女と同じ年頃の女の子が虐待で亡くなったという事件をニュースで知って、ものすごくリアルに胸に迫ってきたんです。虐待をした親と、今の状況に不満を抱えている自分が重なってしまって。

自分の子どもたちには、そんな思いをしてほしくない。人生にはいろんな選択肢があって、自由に選んでいいんだってことを知ってほしい。だから「まずは自分がそういう背中を子どもたちに見せたい」と
思ったんです。諦めていたイラストレーターに挑戦してみようと思ったのは、その時でした。

写真/本人提供
ライター顔写真

お子さんに挑戦している自分を見せる、素敵ですね!山口県に移住をしたのも、そのタイミングだったんでしょうか?

インタビュアー顔写真

移住したのは、2人目の子どもが欲しいなと思ったタイミングですね。夫の地元が山口県なんです。義理の母は保育士で、1人目の時からたくさんアドバイスをいただいたり、とすごく頼りにしていたので、2人目はぜひ近くでおばあちゃんの助けを借りたい!と思いました。

また、夫も同じ食品メーカーに勤めていたのですが、全国に転勤の可能性があったんです。でもそれは、私たち夫婦の求めているライフスタイルではありませんでした。そこで、二人とも仕事を辞めて、山口で新しい仕事をすることにしたんです。

ライター顔写真

ご夫婦二人とも!?仕事を辞めることに不安はありませんでしたか?

インタビュアー顔写真

うーん、そうですね。もともとそんなに物欲のない夫婦だったし、つつましく生活すれば何とかなるかなと(笑)。わたし自身は不安よりも、やっと解放される!っていう気持ちが強かったですね。

コミケで描くも、仕事になるなんて思いもしなかった

ライター顔写真

食品メーカーさんで働いているころから、イラストは描いていたんですか?

インタビュアー顔写真

そうですね、そのころはオタクだったので(笑)、二次創作のマンガを描いていました。たまにコミケに出てフリーペーパーを配ったりしたぐらいですね。こっそりやっていたので、会社ではわたしがそんなことをしているなんて誰も知らないぐらい(笑)。趣味の範囲で、楽しくやっていました。

ライター顔写真

そんなにこっそりやっていたとは!イラストを仕事にしようとは思わなかったんですか?

インタビュアー顔写真

本当に思ってなかったんです。仕事になるなんて思いもしなかったというか、みじんも考えていなかったですね。

ライター顔写真

確かに、イラストレーターって専門のスクールで学んだりするイメージがありますが……?

インタビュアー顔写真

そうなんですよね。わたしは美大も専門学校も行っていないし、良く無謀にも飛び込んだな、と思います。でも、飛び込んだらなれるもんなんだな、と(笑)。あとは覚悟の問題なので。

写真/shutterstock
ライター顔写真

イラストレーターにチャレンジしよう!と思ったとき、まず実行したのは何ですか?

インタビュアー顔写真

派遣で働いていた職場で、職場の人たちにプレゼントする似顔絵を描かせていただいたのが最初です。似顔絵を見た同僚が、「地元のマルシェで似顔絵屋さんとかやってみたら?」と言ってくれたんです。やってみたら思ったよりすごく盛況で、驚きました。お金をいただいて絵を描くのがこの時初めてのことだったので、需要があったことがなによりもうれしかったですね。

ライター顔写真

イベントでの似顔絵屋さんが最初だったんですね!そこからどういう経緯で依頼を受けるようになっていったのでしょう?

インタビュアー顔写真

「本格的にイラストレーターとして仕事をしたい」と思い始めたとき、わたしにとってのメンター的な存在の、県内在住の憧れのイラストレーターの方に会う機会をいただいたんです。

わたしの思いが伝わったのか、その方はいろんなことを丁寧に教えてくださって、たくさんアドバイスをいただいたんですね。「個人の方の依頼を受けるのではなく企業の依頼を受けられるように活動していこう」、とわたしの軸足がぐっと定まったのは、そのアドバイスのおかげです。

でもそれにはどうしてもスキルが足りない。デザイナーさんが使うイラストレーターやフォトショップのアプリを全く使ったことがなかったんです。だから、インハウスデザイナーとして修行させてもらおうと思って、雇ってくれるところを探しました。

ライター顔写真

でも、デザイナーとして働くのであれば、デザイナーさんが使う技術は持っていないと雇っていただけないのでは?

インタビュアー顔写真

ポートフォリオを握りしめて「アプリ使えないんですけど、雇ってください」と直談判、みたいな感じで(笑)。良く採用されたな、と我ながら思います。たぶんよっぽど人が足りなかったんじゃないかと…。でも、どうせ採るなら熱意がある方がいいと思うので、熱意も伝わったのかもしれないですね。

そこで半年ほど働いて技術も習得したころ、コロナが急激に広まったこともあり、その企業を退職したのですが、そのタイミングでちょうど大きな仕事が2件決まったんです。

ポートフォリオ、モックアップ、SNS。やれることは無限にある

写真/本人提供
ライター顔写真

現在取引されているクライアントは、どうやってえんぴつ座さんを知ったんですか?

インタビュアー顔写真

Instagramですね。ホームページもありますし、InstagramもFacebookもTwitterもやっているのですが、Instagramでわたしのことを知っていただいて、そこからホームページを見て、ご依頼いただく、という流れが一番多いです。

ライター顔写真

ホームページを拝見しましたが、すごく見やすいですよね。ご自身の強みをしっかり把握して、発信されているのが印象的でした!

インタビュアー顔写真

それが、実は自分では自分の強みがよく分かっていないんです。なので、クライアントや同業者の方からの意見をとても大事にしています。よく評価していただくのは「人の表情」ですね。

「人物が今にも動き出しそう!」「身近に感じて親しみが持ちやすい」と言っていただけることがとても多いので、それがきっとわたしの強みなのかな、と思っています。

ライター顔写真

なるほど!ご自身の強みを意識した発信は、どのようにされているのでしょう?

インタビュアー顔写真

自分では強みがなかなかわからないので、わからないなりにやっています。ポートフォリオを作ってクライアントに送ったり、自分が今いいなと思っているものをオリジナルイラストとしてSNSにアップしたり。それをきっかけにお仕事をいただければ「この感じだとこういう仕事が来るんだ」とか、とにかく打ちまくって反応を見る、その繰り返しですね。

ブラッシュアップしていくと、ミスマッチがどんどんなくなって、熱量高く取り掛かれる仕事がどんどん増えている実感がありますし、よりよいものをクライアントに提供できるので、よいスパイラルになっていると思います。

ライター顔写真

いろいろなSNSにアカウントをお持ちですが、使い分けはありますか?

インタビュアー顔写真

そうですね、SNSは広報活動だと思ってやっています。InstagramとFacebookとTwitterは見ていただける層が全然違うから、Instagramはポートフォリオ的な役割、Twitterは人となりを知っていただく、と思って発信しています。Facebookは地元の企業やデザイナーの方とのつながりが多いですね。
以前はInstagramからのお仕事依頼が多かったのですが、最近はTwitterからのご依頼も増えてきました。Twitterのフォロワーさんの数が増えてきたからかな、と思っています。

写真/shutterstock
ライター顔写真

ブランディングについては意識されていますか?

インタビュアー顔写真

意識していますが、ブランディングってすごく難しくて、なかなかすぐにできるものではないと思うんです。反応がよかったかどうか、と描いていて楽しかったかどうか、両方の視点で考えるようにしています。仕事になったとしても自分自身がきつかったら、続かないと思うので。

ライター顔写真

なるほど。具体的にはどのようなことをされているのでしょう?

インタビュアー顔写真

昨年は書籍と広告の仕事がしたいと思っていたので、書籍と広告のモックアップ※をたくさん作ってたくさん発信したら、書籍や広告のお仕事をたくさんいただけるようになりました。
※架空の雑誌の表紙やカットイラストのこと。「自分のイラストはこういう媒体で使うとこんなふうになります」という見本。

ライター顔写真

「わたしはこういうことができます」の現物をお見せするということですね。

インタビュアー顔写真

はい、そうです。逆に、思い返したとき「ちょっと合っていなかったんだろうな」と思うような仕事、例えば描いていてすごく自分が背伸びして描いていたな、描いていてつらかった仕事は掲載しないようにしています。

仕事のミスマッチはクライアントのためにも自分のためにもならないと思うので、敢えて発信しないことで、受ける仕事をコントロールしています。

イラストそのものを売り込むと、うまくいかない?

写真/shutterstock
ライター顔写真

ポートフォリオをはじめ、えんぴつ座さんのホームページはとても見やすいですよね。作成する上で工夫しているのはどんなところですか?

インタビュアー顔写真

「相手に考える時間を与えない」ようにするのはすごく意識しています。考えなくていい、わかりやすい、を一番大事にしていますね。

イラストレーターのホームページは、Instagramのようにイラストがポンポン切り替わるギャラリーのような形になっていることがとても多いんです。ただ、ギャラリー形式は眺める分にはいいのですが、クライアントにとっては「このイラストをどこで使ったらいいか想像するのが難しい」、と聞いたことがあって。

なので、例えば「このタッチだとこういうのに適していますよ」ということがイラストを見ただけでわかるように、想像したり考えたりしなくてもいいように工夫しています。ご依頼の流れも、もっとわかりやすくしたいと思っている最中です。やっぱり「こういう流れで制作してもらえるんだ」とわかったほうが、依頼しやすいと思うので。

ライター顔写真

なるほど、とことんお客様目線で作っているんですね。その効果は出ていますか?

インタビュアー顔写真

昨年東京のクライアントの方と直接お会いする機会があったのですが、「ホームページが本当にちゃんとしているから、すごく安心して依頼できました」と言っていただけました。ホームページがしっかりしていたり、メールフォームがきちんと準備されていたりすると、信用も高まりますよね。

SNSの投稿で知って、ホームページを見てみたらすごくちゃんとしている、そこで「じゃあ依頼してみようか」となる...、そういう流れをしっかり作れたのかな、と感じました。

ライター顔写真

フリーランスとして働くにあたって、信用や安心感ってとても重要、だということでしょうか。

インタビュアー顔写真

そうだと思います。「もし自分が頼む側だったら」を考えると、全然情報がない人に頼むのはリスクが高いと思うんです。どんな人柄かもわからないし、途中で投げ出されても困りますし。

思わぬトラブルも以前は経験しましたが、今思えばクライアントとのコミュニケーションの問題だったように思います。とにかく安心してもらってクライアントとの良好な関係を作る、というのがフリーランスにとっては大切ですね。

全3話、第2話は5月17日公開。

取材/I am 編集部
文/堀中 里香
写真/本人提供・ Shutterstock

この記事を書いた人

堀中 里香
堀中 里香取材・ライティング
知りたがりのやりたがり。エンジニア→UIデザイナー→整理収納×防災備蓄とライターのダブルワーカー、ダンサー&カーラー。強み:なんでも楽しめるところ、我が道を行くところ。弱み:こう見えて人見知り、そしてちょっと理屈っぽい。座右の銘は『ひとつずつ』。

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