50代で会社を辞めて独立。60歳までに軌道に乗せれば年金に頼らなくてもいいというライフプラン
会社員にとって、50代は独立するのか会社員を続けるのかのターニングポイントです。会社員が独立する場合、どんなことに注意すべきか、メガネ店経営者の辻村正幸さんに聞きました。
プロフィール
メガネ店オーナー辻村正幸
50代の男性というと、想像できるのは会社の中で責任あるポジションに就いている人ではないでしょうか? 辻村正幸さんは、大手メガネ店や有名ショップ等で長年エリアマネージャーとして活躍しながら50代で退職を決意し、メガネ店を立ち上げました。なぜ50代で独立するのを決意したのか、50代で独立に成功するには何が必要か。辻村さんに聞きました。
目次
定年後のライフプランを考えたとき、会社員ではなく独立した方が良いと考えた
大手メガネ会社や有名メガネショップ等でエリアマネージャーとして働いていた辻村さん。会社でのポジションや仕事内容も順調だったものの、自身が60歳を迎えたときのことを想像し、このまま会社員でいてはいけない、と危機感を覚えたそうです。
「経営者が眼科の先生という会社に勤めていました。10年前、私は先生に要望書をまとめて提出したのです。内容は、ターゲットや具体的な商品、販売方法、販売する店舗についてでした。先生は、『おもしろいからやってみよう』と言ってくださり、立ち上げたのが以前働いていたお店です。10年後には、お店の知名度も上がり、私はずっとエリアマネージャーを担当していました。しかし、店舗の売り上げもそこそこ安定してきた頃、ふと、自分は後5年で60歳になり、定年を迎えることに気づいたのです。当時の会社は定年になってもお給料がほぼ半分になる嘱託を選べることができました。将来のことを考えたとき、今更そんなお給料ではやっていけない、と自分の中で葛藤がありました。そこで考えたのが独立して商売を始めることです。55歳から起業した場合、10年後には自分は65歳です。その頃にはもう完全に普通の会社員であれば、年金生活に入ってしまいます。自分が関わった店舗が10年後に安定期に入ったのを経験したことから、起業して5年後に安定できていれば、前線で自分は活躍できると考えました」
日本金融政策公庫の事業計画書の審査に通る
辻村さんは今までの経験を活かし、メガネ屋を経営することを考えました。メガネ屋は自分のペースで予約を取って、好きなように休みが取れる、そんなメリットにも気づいたそうです。ただし、本格的に事業を始めるには資金調達が必要でした。
「実際に事業を始める場合、お金が必要です。そこで私は日本政策金融公庫を頼ることにしました。ネックとなるのは日本政策金融公庫の厳しい融資の審査。実際に私が事業計画書を日本政策金融公庫にもっていったところ、隣の人が担当者から怒られている声が聞こえてきたんです。『これでお金を借りられるわけないでしょ!』と。それを聞いていたら、自分もこんな風に怒られるのかと怯えてしまいました。恐る恐る、出てきた担当者に資料を渡したところ、『これで融資できると思いますよ』とあっさりと言われ、本当に全額融資してもらえました。しかも半年後にそのときの担当者が私に取材を申し込んでくれたんですね。私の事業計画書が良かったので、取材をさせてくれということでした」
難関と言われる日本金融政策公庫の事業計画書の審査に通った辻村さん。独立したいとチャレンジする多くの会社員が失敗する部分です。どのように辻村さんは担当者を納得させることができたのでしょうか?
6年分の経営計画書
「事業計画書では、1年後の資金や利益についての表が必要です。事業計画書を出すほとんどの人は2~3年ぐらいの予測しか出しませんが、私は6年分書きました。10年間、自分が立ち上げた店を運営していたので、ある程度の予測もつきましたね。また、過去に雑誌やテレビの取材を受けることが結構あったのですが、そのときの資料を全部保存しておいて、添付資料として審査のときに提出しました」
具体的な企画書
「バイク専用メガネ『キャブレター』や『スポーツビジョン』などについて、できる限り細かく企画を全部書きました。『バイクメガネ』は以前の会社時代から作っていたメガネです。私は自分でもバイクに乗っていたことから、オリジナル商品としてバイクメガネを作って販売しましたが、結構売れて今でも販売しています。『スポーツビジョン』は見る事によってスポーツのパフォーマンスを上げる為のものです。車の運転やスポーツなどで非常に重要になる『深視力』や『動体視力』『コントラスト感度』が上がるようなメガネも作成しています。そのような企画を評価してもらったことから、日本金融政策公庫の審査に通ることができました」
貯金がゼロになるかもしれないという覚悟をもつ
会社員から独立するのは、50代の男性にとってはかなりハードルが高く、家族の賛成も必要になります。そんなハードルを辻村さんはどのように超えていったのでしょうか?
「私は何もしないで後悔するよりは、1回飛び込んだ方が、後悔が残らないと思っています。もし、失敗して貯金がゼロになってもしょうがないと覚悟を決めていました。そこで、妻にも貯金がゼロになる可能性もあると伝えたのです。幸いにも妻には反対されませんでしたね。今まで私がやると言ってやったことは、絶対大丈夫だったから、今回も信じていると言ってもらえました」
独立して利益を出せるようになった後の試練
無事に日本金融政策公庫の審査に通り、順調にメガネ屋を経営していた辻村さんでしたが、そこには会社員のときは経験したことがない落とし穴が待っていました。
赤字になると収入がマイナスに
「会社員だと、どんなに売上が落ちても、お金をもらえるんですよね。それが経営者になると、売れば売っただけ利益が出るんですけれど、売れなければ、収入がゼロではなく赤字になります。独立して、不安を抱えていない人はいないんじゃないかと思いますね。どんなに商売繁盛している経営者に聞いても、「そんな安定はあまりないよ」と言う人が多いですね。その代わり、儲けが出ると、今まで行けなかったような旅行に行くこともできました」
仕入の意識がなかった
「会社員時代は、売上を上げることだけを考えればよかったわけです。ところが、自営業をやっていると、売上と並行して仕入れの金額も考えていかなくてはなりません。起業してからまだ3年ですが、売上げがよいときでも、仕入れが多いと赤字になることもありました。このようなことは、会社員のときには全く分からなかったですね。以前の会社は眼科の先生が経営していたので、利益が出なくてもお給料はいただいていました。会社を辞めてから自分が甘やかされていたことを痛感しました。例え経営が順調なときでも、心の中では常に『いつこれがなくなるのか』というのは意識しています」
オン・オフの区別がなくなる
会社員から経営者になった場合、仕事に対する意識が変わってきます。休日についてはどのようにしているのか、辻村さんに聞きました。
「以前は完全週休2日で、お盆や年始年末に休日がありましたが、今はほぼ週に1日しか休んでいません。それ以外の休みは、よほどのことがない限り入れないようにしています。週1の休みでも仕事に行きたいと思ってしまいますが、妻にはよく『身体と頭を休めてほしい』と言われています。また、自分の趣味に費やす時間もなくなりますね。とにかく能天気なことを考えていられないわけです。常に、仕事のことばかり考えるようになります」
独立を考えている会社員に伝えたいこと
50代の会社員の中には、いずれは独立したいと考えている人がいます。今後、独立を考えた場合、どんなことに注意すればいいのでしょうか?
独立前にリサーチをしっかりする
「自分がいいと思ったら、飛び込んでみるのは正解です。ただし、リサーチをしっかりするのが大切です。私自身も自分ではもう調べ尽くしたと思っていたのですが、まだ調べ足りなかったんですね。例えば資金についても、仮に300万円貯めたからと事業を始めたとしても、本当に事業を始めると、あっという間に300万円なんてすぐになくなりますからね。ですから、『貯金をしたからもう自分は安定して商売をやっていける』という考えではダメだと感じています。成功する人は300万円を作ることに長けた人だと思いますね。人脈や金融機関とのつながりが大事です。ビジネスチャンスや商品開発は、結局は人が運んで来ると思っています」
人生で大事なのはタイミング
「私自身、若い頃から何度も独立を考える事がありましたが、毎回何かがあってできる環境にありませんでした。ところが50代で独立したいと思ったら、不思議とあれよあれよという間に環境が整いました。本当にタイミングってあるのだと思います。独立したいと思ったら良い税理士さんに出会えたり、融資も受けられたり、これもすべて出会いやタイミングだと思いました。ですから、みなさんも独立したい場合『必ずタイミングは来ます』と伝えたいですね」
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この記事を書いた人
- うさぎと北欧を愛するライター。元Webデザイナー。インタビュー取材やコラムを執筆。強み:好奇心旺盛なところ。失敗してもへこたれないところ。弱み:事務作業が苦手。確定申告の時期はブルーに。
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