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脳内科医が教える、「脳番地」からみる執着が起こる原因と基本的な対策

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人生の苦しみの一因となる“執着”は、なぜ起きるのでしょうか。「脳番地」の仕組みに基づいて、加藤プラチナクリニックの加藤俊徳院長が解説します。

過去の記憶や物事にとらわれてしまう状態を“執着”といいます。これはときに、人生に大きな苦しみをもたらすことがあります。脳科学の視点から執着の仕組みを解き明かすのは、加藤俊徳院長(加藤プラチナクリニック)です。著書『悩みのループから解放される!「執着しない脳」のつくり方』(大和書房)の中で加藤院長は、次のように教えてくれます。

人間の脳の活動を規定する8つの脳番地

執着は、みなさんが思っているよりも数多くあります。他人からのきつい一言が忘れられず、何度も頭の中で繰り返して悩むのも執着です。しょっちゅうスマホを見ていないと安心できないのも執着です。誰もが、いくつもの執着を抱えて生きています。

執着が生まれる仕組みについて、脳科学的に簡潔に説明しましょう。まず、「脳番地」というものを理解してもらう必要があります。

脳には一千億を超える神経細胞が存在していますが、それぞれ役割を持っています。そして同じような働きをする神経細胞は、寄り集まって集団を作っています。各集団を、私は脳番地と呼んでいます。脳番地は約120あり、機能別に整理すると、以下8つの系統に分けることができます。

1. 思考系脳番地:物事を考えたり判断を下したりするとき働く

2. 理解系脳番地:情報を理解し、応用するとき働く

3. 感情系脳番地:喜怒哀楽などの感情を受け取ったり、表現をする時に働く

4. 伝達系脳番地:コミュニケーション(意思疎通)をするとき働く

5. 運動系脳番地:体を動かすこと全般に関わるとき働く

6. 視覚系脳番地:目で見た情報を脳に伝えるとき働く

7. 聴覚系脳番地:耳で聞いたことを脳に集めるとき働く

8. 記憶系脳番地:ものを覚えたり思い出したりするとき働く

各脳番地の発達の度合いは、人によってまちまちです。よく使っている脳番地であれば、一生にわたって成長し続けます。対して、あまり使われない脳番地は、成長がストップし、衰えていきます。

例を挙げましょう。思考系脳番地が弱いと、やる気が出ず、優柔不断になりやすく、「今までどおりでいい」という保守的な反応を示します。理解系脳番地が弱いと、何を見聞きしても「なんとなくわかる」などとあいまいな解釈をしてしまいます。また、アイデアや発想が乏しくなりやすくなります。

未発達な脳番地を鍛えて執着を解消する

脳番地の偏った発達と執着は、密接に関係しています。

例えば、同じ場所に繰り返し行くとか、同じ行動ばかりしている人は、運動系の執着が強いといえます。人や食べ物に対する好き嫌いが強いのは、感情系の執着といえるでしょう。幼少期にもらったぬいぐるみがあって、もうボロボロなのに捨てられないというのは、感情系と記憶系の脳番地の両方で執着している可能性があります。

このように人は、よく「使える脳」だけを使って執着するようにできています。いわゆるスマホ脳は、「使える脳」が極度に制限された形といえます。スマホを扱うのに必要な部分だけ働いているわけです。それ以外の脳の成長はストップしています。スマホ脳から抜け出すには、使っていない脳を使えるようにする必要があります。例えば、スポーツをして運動系脳番地を刺激する。ラジオを聴いて聴覚系脳番地を刺激するといったふうに、苦痛でない範囲で少しずつほかの刺激を増やしていくのです。

私は、クリニックに通う学生たちに、「授業の内容について誰かに全部説明してみる」という課題を与えています。授業で聴いたことを振り返ることで聴覚系脳番地と理解系脳番地を使い、言葉で要約して伝えることで伝達系脳番地を使います。授業で学んだことが頭に定着しますし、多くの脳番地が発達するため、執着の解消にもつながります。

目の前の状況に目を向けて執着を手放す

強い執着に苦しむ人の多くは、思考系、感情系、記憶系の脳番地に限定した脳の使い方をしています。過去のイヤな記憶をぐるぐる回しながら、落ち込んだり後悔しています。

そこで、目の前の状況に目を向けることをおすすめします。今に目を向けると、まったく違う脳番地(視覚系、聴覚系、運動系)が使われるからです。つまり、見る、聞く、動くことで、脳は過去の執着をいったん手放します。そして新しい記憶がつくられます。

禅宗に只管打坐(しかんたざ)という言葉があります。「ただひたすらに座る」という意味ですが、これは今の瞬間に注意を向け、視覚系、聴覚系、運動系の脳番地を活用するわけです。座禅に打ち込まなくても、「ご飯をつくる」「メモをした商品をお店で買って帰る」など、ささやかなことでかまいません。それでもイヤな過去を遠ざける助けになります。

この記事を書いた人

鈴木 拓也
鈴木 拓也
都内出版社などでの勤務を経て、北海道の老舗翻訳会社で15年間役員を務める。次期社長になるのが嫌だったのと、寒い土地が苦手で、スピンオフしてフリーランスライターに転向。最近は写真撮影に目覚め、そちらの道も模索する日々を送る。

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