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タニタ研究員の「ダイエットで人生変える」授業仕事に集中しがちな、忙しい人ほど要注意! タニタ研究員が教える、熱中症になりやすい人の特徴と対策

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例年より遅く梅雨入りした今年。気温が高い状態で湿度の急上昇が起こるため、熱中症の危険が高まると言われています。そこで今回は、熱中症になりやすい人の特徴と対策をまとめました。本記事を参考に、こまめに水分補給をしながら夏本番に備えましょう。

梅雨入りが遅かった今年、熱中症になりやすい傾向に

今年は梅雨入りが遅く、いつもの年よりいっそう熱中症の危険度が高いといわれています。これは、気温が高い状態で湿度の急上昇が同時に起こるため。場合によっては命にかかわる恐ろしい熱中症……重症でなくても皆さまの生活に大きな影響を及ぼします。

かく言うこのワタシも、栄養士のくせに仕事に没頭しすぎて、ナント室内で熱中症になり病院に搬送されたことがございます……。ああ恥ずかしい……。しかし、こんな私だからこそ、その恐ろしさがわかるのです。

忙しい皆さま、特に「集中すると没頭してしまう方」や「ちょっと無理して頑張ってしまう方」は、本当ーーーに気をつけいただきたい!夏本番になる前に熱中症の予防&対策をしましょう。

こんな人は熱中症に要注意!

熱中症になりやすい人の特徴をまとめました。

<年代>

  • 小児
  • 高齢の方(重症化しやすい)

<体型・体格>

  • 肥満気味の人
  • 筋肉が少ない人(特に細身の女性)

<体調・コンディション>

  • 寝不足、疲労が重なっているなど体調がすぐれない人
  • 二日酔いや下痢など脱水気味の人
  • 運動に慣れていない状態でスポーツをした人

+「集中すると没頭してしまう人」、「無理して頑張ってしまう人」はさらに要注意!

筋肉と脂肪のつき方もカギを握る!?

実は身体の中身=体組成も熱中症とは深い関係があります。【図1】をご覧ください。

【図1】脂肪・筋肉の割合と体水分の関係

「STUDIE ON BODY COMPOSITION p685-691」より作図

筋肉中には水分が約70%程度と、豊富に保持されていて電解質も多いため、血液の循環も良くなります。そのため血液を循環させ、汗をかいて体表面から熱を逃がしやすく、体温の調節がしやすいのです。

それに対して脂肪組織には水分はわずか20%ほどしか存在しません。さらに脂肪の割合が多いと体内に熱がこもりやすくなると言われています。

では痩せていればいいかというとそういうわけでもありません。太っていなくても筋肉が少なければ、水分保持量が少ない上、血行が悪くなりがちなので要注意。

加えて女性は、月経周期による女性ホルモンの変動が水分の代謝に影響を与え、男性に比べて脂肪の割合も高いので、ほっそりしていても体外に熱を逃がすことが苦手な傾向があります。筋肉質で引き締まっているのなら良いのですが……「運動習慣も無く、筋肉が少ないのでは」と思われる方は特にご注意ください。

水分補給のコツ① 熱中症対策には「冷たい飲み物」がGood!

身体を温めて代謝を高めたい場合や、涼しい場所でほっと心を落ち着けるには温かい飲み物が良いのですが、夏の熱中症対策や運動時の水分補給には「5℃から15℃くらい」の「冷たい飲み物」の方がおすすめ。

冷たい飲みのものは深部体温を低下させ、胃にとどまる時間が短く速やかに吸収されるからです。飲み物を持ち歩く際には、保冷できる水筒やペットボトルカバーを利用して冷たさを維持できるようにすると良いですね。

ただし、冷やし過ぎにも要注意!あまりにもキンキンに冷えすぎていると胃腸が過敏に反応し、腹痛や下痢を引き起こします。「適度にひんやり」なちょうど良い温度になるよう冷蔵庫などで上手く調整してください。

【図2】暑い時・運動時の水分補給に適した温度

水分補給のコツ② 「15~20分おきに」「こまめに少しずつ」を意識

皆さん、水分補給は「のどが渇いたら飲めばいい」と思っていませんか?熱中症対策としては「のどが渇く前に」水分を取っていただきたいですね。

体内の水分が失われはじめてからのどの渇きを感じるまでにはタイムラグがあり、特に外出時や運動中に多量の汗をかくような状況ではのどの渇きを感じてからでは手遅れになってしまうこともあります。

個人差はありますが、通常、水分を取ってから腸で吸収されるまでの時間は平均15~20分程度。この15分~20分を目安に「こまめに少しずつ(150~250ml=コップ1杯程度)飲むことを意識してください。

【図3】外出時・運動時の水分補給のタイミングと補給量の目安

ただし、一度に大量にガブガブ飲みすぎることも心配です。急激で過度な水分摂取は胃腸に負担をかけ、吐き気や腹痛につながることもあります。また、ミネラルや電解質をあまり含まないお水を一気に多く飲みすぎてしまうと低ナトリウム血症の危険性もあります。

シーンごとにおすすめの飲み物

最後に、場面や状況に応じたおすすめの飲み物をご紹介しますので、上手に取り入れましょう。


【図4】場面や状況に応じたおすすめの飲み物

暑い日は室内にいても脱水の危険があります。油断せず、室内にいてもこまめに水分を取るよう意識したいすね。ただし、液体の糖分には要注意。無糖か、甘さ控えめのさっぱりした飲み物をおすすめします。

 外出時は、緑茶・紅茶・ウーロン茶はカフェインが入っていて利尿作用があるので、麦茶やそば茶などのような「ノンカフェインのお茶」がおすすめ。

暑い中歩き回ったり身体を動かしたりしてたくさん汗をかく時には、水分をしっかり吸収できるイオンウォーターやスポーツドリンクが良いですね。体力を消耗するような運動・トレーニングをしているのでなければ、糖質控えめのものを選ぶか、無糖のミネラルウオーターと交互に飲むようにすることをおすすめします。

暑さにさらされて身体の不調に気づいたら躊躇せず早めの対処を!急いでコンビニなど涼しいところに避難して首の後ろや脇の下など太い血管のあるところを冷やし、経口補水液や経口補水ゼリーで水分補給をしてください。(場合によっては周囲の人に助けを求めましょう)

帰宅後「疲れたなぁ」と感じるときは、疲労回復も期待できる柑橘系のジュースがおすすめ。ただし、できるだけ糖分無添加の甘さ控えめなものを選びましょう。

液体の糖分は吸収が早いので血糖値が乱高下します。何度も飲むと血管にダメージを与え、肥満に繋がるだけでなく、ペットボトル症候群や糖代謝異常のような疾病を引き起こしてしまうこともあります。激しい運動をしてエネルギー消耗が激しい時なら液体での糖質補給は有効ですが、そうでなければ甘すぎる飲みものは避けましょう。

今年の夏もかなりの暑さが予想されますが、どうかご自身の体調を把握し、無理せず、こまめに水分補給をしながら元気に乗りきってください。私も気をつけます!

執筆/タニタ研究員 西澤美幸

この記事を書いた人

西澤美幸
西澤美幸株式会社タニタ 開発部主席研究員 栄養士
1968年生まれ。横浜国立大学在学中よりタニタの体脂肪計のプロジェクトチームに参加。入社後は、世界初の乗るだけではかれる体脂肪計や体組成計、活動量計などの開発に携わり、機器の要となる計測の回帰式や判定アルゴリズム作成を担う。
29歳で社内初の技術系女性課長に就任し38歳で出産。栄養士の資格も有し文部科学省の食育有識者会議委員を務めるなど、さまざまな計測データを健康づくりに活かす提案を行い、栄養士と技術者の2つの視点から多数のセミナーの講師も担当している。

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