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50代を取り巻く転職市場とは? 転職しやすい職種・しづらい職種を知る

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50代女性

50代が転職を考えた場合、転職しやすい職種としづらい職種があると言います。長年、子育てのために仕事を離れていた女性に人気があるのは事務職です。しかし、未経験の50代が事務職を目指すのは厳しい実態があります。ハローワーク新宿に50代を取り巻く転職市場について聞きました。

終身雇用が当たり前の時代を生きてきた今の50代。一度も転職をしたことがないという人も珍しくはありません。しかし50代の転職者数は増加傾向にあり、総務省の調べでは2012〜2021年の10年間で、55〜64歳の転職者は38万人から42万人に増加しています。また2022年のミドルシニア(45〜64歳)の転職数は99万人となっています【労働力調査(詳細集計)2022年(令和4年)平均】。
50代にとって現在の転職市場はどうなっているのでしょうか。ハローワーク新宿の管理部長・宮嶋修さん、職業相談第一部門統括職業指導官・荒井和則さん、雇用保険給付課長・寺澤仁さんに聞きました。

50代を取り巻く転職市場の状況

データから見える50代の転職事情

ハローワーク新宿の職業相談第一部門統括職業指導官・荒井さんによると、フルタイム・パートタイムを問わず、45−54歳に人気がある職業は事務職だそうです。

「ハーローワークの求人状況などはエリアによってばらつきがありますが、グラフ(ハローワーク新宿『令和5年8月分バランスシート(有効求人・有効求職者数・求人・賃金状況)』より)からもわかるようにハローワーク新宿ではどの年代でも事務職が人気です。フルタイムでは事務職もそこそこの求人数がありますが、45−54歳の有効求人数は3分の1程度に下がってしまいます。これがパートタイムとなると求人数そのものが激減してしまいます」

引用:ハローワーク新宿「令和5年8月分バランスシート(有効求人・有効求職者数・求人・賃金状況)」

転職市場の変化

以前は終身雇用が当たり前の社会でした。スキルを持っていれば40~50代でも雇ってもらえたのです。しかし日本経済の低迷により終身雇用は崩壊し、成果や実力を重視する企業が増えました。さらに転職市場を難化させたのが新型コロナウィルス感染症の流行です。ハローワーク新宿でも案件数が多数あった介護関係・飲食関係の求人、求職者も大きく減少したそうです。

また、「人生100年」といわれる現在、転職市場は年齢では測れなくなっています。今は高齢者でも雇用する企業が増えているからです。たとえばマクドナルドやローソン、ノジマは積極的に高齢者雇用の取組をしています。「自分はもう50代だから……」とネガティブに捉えずに、先を見据えた転職活動が必要ではないでしょうか。

50代の転職活動期間

50代は転職期間が長いというイメージがあります。実際はどうなのでしょうか? ハローワーク新宿の管理部長・宮嶋さんに伺いました。

「年齢が高くなると長期に及ぶこともあり、とくに50代にとって、短期間で転職先決まるのは簡単ではありません。50代後半になると300日かかる方もいらっしゃいます

職種別の平均賃金

「職種別の平均賃金を見ると、求職者の求める賃金と求人の賃金が大きく乖離していることがわかります(ハローワーク新宿「令和5年8月分バランスシート(有効求人・有効求職者数・求人・賃金状況)」より)。求人の賃金については、職種に対しての上限下限があり、求職者の賃金は求職登録した時に希望した金額です」と荒井さんは言います。

引用:ハローワーク新宿「令和5年8月分バランスシート(有効求人・有効求職者数・求人・賃金状況)」

50代の転職の気になる求人職種

求職数と求人数のミスマッチ

50代は希望する職種に就くことができるのでしょうか? 荒井さんに伺いました。

「求職数と求人数のミスマッチがあるために、『企業が人材を募集してもうまくいかない』『希望の職種に就けない』といった問題があります。とくにミスマッチが顕著なのは介護と事務職の仕事です。フルタイムの場合、介護の求人数が4,998人に対し希望者はわずか170人で求人倍率が29.40。一方、事務職は希望者が5,968人に対し、求人数は4,157人で求人倍率は0.71です。介護ならすぐに仕事が決まる可能性がありますが、事務職を希望すると転職が難しいという実態があります※1」

※1:ハローワーク新宿「バランスシート(有効求人・有効求職者数・求人・賃金状況)」

人気がありながら転職が難しい「事務職」

「事務職はある程度パソコンができていれば専門的な知識を必要としないので、人気が高く、希望者が多い傾向があります。しかし、50代が事務職で転職をするのは難しいでしょう。会社は即戦力のあるベテランより、新陳代謝を考え若手を好むからです。また事務職は希望者が多いため競争が激しく、同じ年代の求職者を比較した場合、スキルが高い人が採用されます。たとえ事務職としての経験が長くても、高度なスキルを持っていないと雇ってもらえないケースもあるのです。事務職未経験者がパソコンを学んでも、事務職での再就職には結びつかない場合もあるでしょう」と荒井さんは言います。

教育訓練給付金で人気は高いが求人が限られる「Webデザイナー」

現在人気のある仕事といえばWebデザイナー。しかし荒井さんによると、求人の実態は大きく異なるようです。

「教育訓練給付金にはさまざまな種類がありますが、なかでも人気が高いのがWebデザイナーです。希望する求職者は多いものの、ハローワークでのWebデザイナーの求人は多くありません

教育訓練給付金で勉強した後は、民間の転職サイトを使って探した方がいいかもしれません。

求人数が圧倒的に多い「介護職」

「介護職は人手不足が顕著に現れている職種です。フルタイムの場合、求人数が4,998人に対し希望者はわずか170人。求人倍率は29.40もあります。つまり、ひとりの求職者に対して29件も求人があることを示します」と荒井さんは言います。

求人数は多いが入れ替わりが激しい「エンジニア」

荒井さんに、新宿ではとくに求人数が多いエンジニアについても伺いました。

「エンジニアは転職が早く、経験が長いと自分から売り込む人が多いですね。出入りが激しいので企業も競って求人を出しています

もし、東京在住でエンジニアの経験が長いなら、ハローワーク新宿に相談してみましょう。思わぬ掘り出し物があるかもしれません。

長年専業主婦をやってきた女性の就職に関する問題

最後に、荒井さんに専業主婦から再就職を目指す女性の状況について聞きました。

「長年、専業主婦をやってきた女性は、子育てや介護が終わった後に就職を希望します。そこで専業主婦をやってきた女性が希望するのが、特別なスキルを必要としない事務職です。しかし、上述したように未経験の50代女性が事務職として採用になるのは難しいでしょう。主婦の経験を活かすなら、家事の延長としてできる清掃等の仕事も選択のひとつかもしれません」

長年専業主婦をやってきた女性が人気のある事務職に就くのは簡単ではないようです。未経験の場合、求人数が多い介護職、あるいは清掃の仕事に就くのが現実的と言えるでしょう。

この記事を書いた人

今崎ひとみ
今崎ひとみIT人文好きライター
うさぎと北欧を愛するライター。元Webデザイナー。インタビュー取材やコラムを執筆。強み:好奇心旺盛なところ。失敗してもへこたれないところ。弱み:事務作業が苦手。確定申告の時期はブルーに。

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