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印象だけに終わらない、キャリアにつながる話し方眉毛が動かないと「貼り付いた笑顔」になる。嘘がつけない眉を動かすことで、信頼が得られる?

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矢野香 4メイン

心理学で「人の感情が一番出る」といわれる眉。経営者や上場企業CEOから人気のスピーチコンサルタント・矢野香さんに、眉を効果的に使った「好印象だけに終わらない、爪痕を残す話し方」を身につける方法について教わります。

プロフィール

長崎大学准教授、スピーチコンサルタント矢野香

やのかおり スピーチコンサルタント、長崎大学准教授。博士(総合社会文化)。NHKキャスターとして報道番組を17年担当した後、独立。著書に『最強リーダーの話す力』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『【NHK式+心理学】一分で一生の信頼を勝ち取る法 』(ダイヤモンド社)、などがある。

プレゼン、会議、コミュニケーションなどで「話す立場」におかれる40代キャリアに向けて、長崎大学准教授・スピーチコンサルタントの矢野香氏に専門分野である心理学・コミュニケーション論の研究とNHKキャスターの経験をもとに「爪痕を残す話し方」を学ぶ連載です。

* * *

スピーチコンサルタントの矢野香です。人の印象は「話し方」より「見た目」に左右されています。「見た目は話し方の一部」であり、「ビジネススキル」といえます。今回は、キャリアアップしたい女性が効果的に眉を使って「好印象だけに終わらない、爪痕を残す話し方」を身につけていく方法をご紹介します。

人の感情が一番出るのは眉

人は誰かとコミュニケーションをとるとき、表情を変化させることで相手に感情を伝えます。なかでも、信頼感を印象づけたいとしたら重要なのが眉。なぜなら、眉は嘘がつけないからです。

たとえば、好感を持っている相手と会うと、無意識のうちに眉はパッと上がります。この眉が一瞬だけ上がる動きを「アイブロウ・フラッシュ」と言います。アイブロウは眉毛、フラッシュはカメラで写真を撮影したときの「閃光」から名付けられた人間が相手に好意を伝える表情のひとつです。

目と口元が笑った状態で「○○さん、応援しています、頑張ってください」と言う。なのに、眉はまったく動かない。このようにアイブロウ・フラッシュがない状態だと、本音ではないような印象を与えてしまいます。逆に、相手の話を聞くときに「そうなんだ」「よかったね」などと相槌をうちながら、眉が一瞬動くことが続けば、話に興味を持っている、心から共感しているように相手に伝わります。

つまり、自分の感情にあわせて、眉がちゃんと一緒に動くかどうかが大事なのです。しかし、アイブロウ・フラッシュを起こす筋肉は不随意筋。自分では思ったように動かすことができないため、わざと演技として取り入れることができないスキルなのです。嘘がつけない表現といわれる由縁です。

好意を伝えるのは「アイブロウ・フラッシュ」が効果的

無理にアイブロウ・フラッシュを使おうとすると、アイブロウ・アップになってしまうことがあります。眉が一瞬あがるのではなく、あがったまま止まっている状態です。「あー、怖かった」「あー、びっくりした」というように怖かったり驚いたりしたときの表情です。

アイブロウ・アップは眉が上がっている時間が数秒あるため、自分で眉を動かそうと思えば動かすことができます。一方、アイブロウ・フラッシュの動きは一瞬であるため、自分の思ったようには動かせません。だからこそ、本音の感情を伝える表現として信頼感を持ってもらえるのです。

そんな必殺技、アイブロウ・フラッシュを使いこなすためにはどうすればいいのか。それは、「発見」する場面を仕掛けること。このような場面をイメージしてください。あなたが疲れて帰ってきて、いまから夕食を作らなければいけないとします。「きついなー」と思いつつしぶしぶ冷蔵庫を開けると……、そこに家族の誰かが作ってくれた晩御飯と、「おつかれさま」というメモ書きを見つけたとしたら? 見つけた瞬間、うれしくて「あっ! 」と声をあげるでしょう。そのときの眉は一瞬あがり、アイブロウ・フラッシュになっています。これが誰にでも自然と起きる発見のアイブロウ・フラッシュです。

この性質を利用し、ぜひ実践していただきたいのが、誰かを見つけた瞬間に挨拶をすることです。「あ、○○さんがいる」と発見した瞬間に眉を上げながら挨拶をすることになり、「あなたに好感を持っています」ということを伝えることができます。相手の警戒心を解き、人間関係の距離を近づけ、信頼を得ることにつながるでしょう。

ただし、アイブロウ・フラッシュをしようとしても、眉が動かないという方も多いものです。筋肉が固まってしまっているのです。筋肉は、使わないとどんどん劣化していきます。前髪が長い髪形をずっと続けている方や、眼鏡をかけ続けている方は要注意。眉が隠れた状態が長年続いているため、年齢とともに眉が固まってしまっているかもしれません。

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眉を自在に動かせるようになると、「話し方」がスキルアップ

眉の動きが選挙結果に影響?

使い方には注意したいのが、よかれと思って行う美容施術。たとえば顔の表情筋に作用させるボトックスは、施術の仕方によって眉を動かしにくくなってしまうことがあるため、良い加減の調整が必要です。

2016年のアメリカ大統領選で史上初の女性大統領をめざしたものの、あと一歩及ばなかったヒラリー・クリントン。当時、彼女が負けた理由のひとつは表情だと分析をした専門家もいました。

候補者が直接対決して経済政策などについて論戦を交わす「テレビ討論会」は、約1億人の米国人が視聴し選挙結果を左右する重要な場です。その討論会で彼女は選挙戦のスローガンであった「力を合わせれば、強くなる」と訴えました。しかし、そのときの表情は、眉周辺の筋肉がほとんど動いていませんでした。

地元メディアは彼女の印象を「とげとげしい」と報じました。不自然な表情筋の動きから、インターネットなどではボトックス治療が失敗していたのではないかとも噂されました。当時、健康不安も囁かれていたため、シワのない若々しい顔はその噂を払拭するのには効果的だったことでしょう。しかし「力を合わせれば、強くなる」という言葉のメッセージと、能面のように変化しない表情とのギャップが、大衆の心を動かすには及ばなかったのです。

皮肉なことに、同選挙選の敗北宣言となったスピーチでのヒラリーは、世界中の人々の共感を呼びました。眉間にシワをよせ、涙ぐみながら、眉を上げるアイブロウ・フラッシュを幾度も見せながら「ガラスの天井を破れなかった」「いつかきっと、誰かが実現してくれることでしょう」と語り謝罪したのです。彼女のスピーチは「ガラスの天井」という言葉とともに名スピーチとして絶賛されました。「人の感情が一番出るのは眉」ということがわかるエピソードだといえるでしょう。

眉を自在に動かせるようになるトレーニング法

本音を語る信頼できる人物であること、相手に好意を持っていることを示すアイブロウ・フラッシュ。ビジネスシーンで効果的に使いこなせるようになるためのトレーニング法を2つご紹介します。

1つ目は、固まった筋肉をほぐす方法です。日々ほぐしていくうちに少しずつ自然と眉が動くようになっていきます。地味な方法ですが、コツコツ続けてみましょう。

トレーニング①:固まっている筋肉をほぐす

Step1 2本の指を横にして、眉の上に置く 

Step2 目を見開きながら眉間のしわを伸ばすように上に上げる 

トレーニング②:言葉を使う

2つ目は、言葉を使ったトレーニングです。

「あっ! 」「えっ! 」のような言葉と同時に、わざと眉を上げる練習をします。

たとえば「あっ! コピー取らなきゃ」「えっ! 今日が締切だったの?」というような「あ」「え」「お」などの音に小さな「っ」促音便と、エクスクラメーションマーク「! 」がつくセリフをいう場面です。

このとき「あー」と言ってしまうと、眉はアイブロウ・アップになってしまいます。「あー、まだ終わっていなかった」「えー、最後の一個だったのに売り切れちゃってる」などエクスクラメーションマークではなく、伸ばしてしまうイメージです。

「あー」と言う言葉を発したときは、眉がアイブロウ・アップになっているだけでなく、眉間には縦ジワができてしまっています。これでは劣化につながる縦ジワをクセづけるトレーニングをしてしまっているようなものです。

言葉のリズムを変えれば、表情はリンクしていきます。「あー、雨だ」よりも「あっ! 雨だ」のほうが表情が生き生きとし、少し可愛いくもあります。筋肉を鍛えながら可愛げのある人に見えるようにもなる一石二鳥のトレーニングです。

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眉がどんなふうに動いているか、鏡で確認してみるのも大事

信頼度が上がる話し方は「眉で聞き、眉で話す」

眉が動くようになってきたら、自分が話すときだけでなく、相手の話を聞くときも眉を使いましょう。相手の目を見ながら、話を目で聞くのは当たり前。爪痕を残す女性を目指すなら、目だけではなく眉でも聞くようにしてみるのです。相手がつらいことを話していたら、眉間にシワを寄せてうなずきながら聞く。楽しく前向きな話をしていたら、眉を一瞬上げて笑いながら聞く。「親身になって話を聞いてくれる」と感じる人は、話の内容にあわせて眉がよく動いています。眉が動くことによって、あなたの話に共感しているというサインを送っていることになるからです。

一方、この話は長いな、切り上げたいなと思ったときは、わざと眉の動きを消してしまいます。相手はあなたの反応がないことを感じとり、自然と話がフェードアウトしていきます。

このように眉で話を聞きながら相手の話をコントロールする方法は、私はアナウンスの仕事でインタビュアーをつとめていたときに活用していました。日常でも試していただくと、好感度を与えるだけでなく、会話の主導権を握ることができます。

「爪痕を残す話し方」のひとつとして、身につけていきましょう。

次回は、「声の出し方」についてお伝えします。

写真/Canva

この記事を書いた人

I am 編集部
I am 編集部
「好きや得意」を仕事に――新しい働き方、自分らしい働き方を目指すバブル(の香りを少し知ってる)、ミレニアム、Z世代の女性3人の編集部です。これからは仕事の対価として給与をもらうだけでなく「自分の価値をお金に変える」という、「こんなことがあったらいいな!」を実現するためのナレッジを発信していきます。

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