介護休業を取ることは後ろめたい? 介護を一人で抱え込む前にどこに相談すればいい?
介護離職の数は毎年10万人以上とも言われています。その多くは管理職など働き盛りの50代。子供の教育費から解放され老後資金を貯め始めるタイミングでの突然の離職はその後の人生の経済プランを大きく狂わせます。厚生労働省に話を聞きました。
介護休業を取ることは「恥ずかしい」「後ろめたい」と考え、会社に介護休業取得の申出をせず、有給休暇を使って密かに介護をする人たちもいます。介護をしている人たちにはどのような悩みがあるのか?介護離職の実態について、厚生労働省の雇用環境・均等局の池上彰子さんと老健局の川田さくらさんに聞きました。
目次
介護離職してしまう原因とは?
【介護離職をする原因①】親の介護は自分でするものという価値観
川田さんによると、介護離職の原因にはさまざまな原因があるといいます。
「介護離職の要因には、勤務先における両立支援制度の利用や介護保険サービスの利用に関する問題、家族の希望や自らの希望など、さまざまな要因があります。まずは、両立支援制度や介護保険サービスをより利用しやすいものにしていくことが重要ですが、あわせて『介護は家族がするもの』という考え方を変えていくことも必要と考えています」
【介護離職をする原因②】介護が必要になるとすぐに介護離職してしまう
厚生労働省によると、介護を始めてから半年以内に仕事を辞めてしまう人が半分以上いるというデータがあるそうです(三菱UFJリサーチ&コンサルティング「仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業報告書」《令和3年度厚生労働省委託調査》より)。介護保険サービスを利用するには市町村による要介護認定が必要になります。サービス利用前に介護離職してしまう人もいるといいます。離職の要因としては、勤務先の問題やサービスの問題、家族・親族の希望など様々ですが、親が倒れるとショックで精神的に混乱し、すぐに介護離職をする人も。
【介護離職をする原因③】勤務先で介護休業を取りづらい
勤務先に介護休業制度がなくても、介護休業は育児・介護休業法で担保された強い権利なので、法的要件を満たしていれば介護休業を取ることはできます。けれども、勤務先に制度が整備されていることを知らず、利用しないまま仕事との両立が難しくなり辞めてしまう人、また、介護休業制度自体を知らずに、仕事との両立が難しく、辞めてしまう人も少なくないようです。
さらに制度があっても利用しにくい雰囲気がある場合も。介護休業を申し出て、不当な解雇の圧力を受けたというケースもあるようです。
介護離職した場合のマイナス面を考える
では、介護離職をした従業員はどうなってしまうのでしょうか? しかし一旦離職すると新しい仕事に就くのは困難です。介護離職する人は年齢が高いため、再就職が難しいといいます。収入が途絶えたまま仕事も見つからないと、生活が破綻するリスクがあります。
仕事と介護を両立し、ある程度収入がある状態で介護保険サービスを使うのが一番負担もないといえるでしょう。
親の介護はひとりで抱え込まなくてもいい
【介護について戦略を立てる①】先を見据えて方針を決める
介護は誰もが経験する問題です。川田さんによると、介護が始まる前から情報収集したり、家族で話し合ったりして方針を決めるのが良いといいます。
「介護は長期に渡る場合もあり、将来の状態について見通しが立てづらいと言われています。介護が始まると、目の前の介護で精一杯になってしまいますので、介護が必要になる前から、支援制度について調べたり、家族で話し合ったりすることが重要です。また、親の身体機能や認知機能に不安が生じた場合は、早めに地域包括支援センターに相談するとよいでしょう。まだ介護が必要ない方には、介護予防のための事業もありますし、介護が必要な方は、ご本人の状態や希望に応じて、自宅で暮らしながら訪問介護や通所介護を利用したり、介護施設に入所したりすることもできます」
【介護について戦略を立てる②】仕事と介護の両立支援制度を利用する
先を見据えて介護の方針を決めるために介護休業制度を利用しましょう。介護休業制度は介護をするための休みではありません。仕事をしながら介護できるように介護の方針や計画を立てるための休業です。そのため、介護休業制度は最長で93日を3回に分けて取得できるようになっているのです。
本人が全責任を負ってしまうのではなく、介護休業の目的をしっかりと理解しながら、必要に応じて休業を分割して取得できるという制度。また介護休業とは別に、介護休暇制度等も利用できます。介護休業制度や介護休暇制度等をうまく組み合わせて仕事と介護を両立させましょう。
なお、制度は法的要件を満たせば有期契約で働く非正規雇用労働者も利用できます。
介護で悩んだらどこに相談すればいい?
【介護についての相談先①】各市町村の地域包括支援センター
川田さんによると、介護についての相談先は各市町村の地域包括支援センターが最適だといいます。
「高齢者の介護や困りごとに関しては、各市町村が設置している地域包括支援センターにご相談ください。地域包括支援センターでは、保健・福祉・介護の専門職が各種相談に応じており、相談内容に応じて適切な機関や他の制度、サービスにもつないでくれます。
厚生労働省の「介護事業所・生活関連情報検索」から最寄りの地域包括支援センターの検索が可能です」
【介護についての相談先②】都道府県労働局
介護休業制度等を利用しようとして、会社から正当な理由なく拒まれた等の場合は、全国に所在する都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に相談しましょう。
池上さんによると、職場において、介護休業、介護休暇等の取得申出等に関して会社とトラブルがあった場合、解決できる仕組みがあるそうです。
「育児・介護休業法では従業員が要件を満たしている場合、介護休業を取得できると定めています。
しかし会社に申出をしても、『今休まれると困ります』と取得を認められなかったり、有期契約で働く非正規雇用労働者が「更新はしない」と雇い止めをされたり、というケースもあります。上記のような事業主の言動は、正当な権利行使を妨げる禁止事項に当たるため、勤務先を所管する都道府県労働局雇用環境・均等部(室)にご相談ください。事業主の違反行為は行政指導の対象となります。
さらに介護休業等について会社と従業員との間で、民事的なトラブルが生じた場合、紛争解決の手段として『紛争解決援助』や『調停』という制度があります。労働局が中立公平な立場に立ってトラブをル解決するためにサポートをしていく仕組みです」
「仕事と介護を両立させる理想の形を見つける
最後に川田さんは、介護と仕事の両立で悩む方に対しアドバイスをくださいました。
「介護は誰しも直面するものですが、要介護者の状態や職場環境、家族・親族との関係性など様々な要素が影響するため、いわゆるモデルケースが存在せず、どのように介護と向き合うのか、どのように仕事と両立するのか悩む方も多いと思います。
介護保険制度では、要介護者ご本人の状態や希望に応じた様々なサービスが提供されていますし、両立支援制度を利用した柔軟な働き方も可能となっています。ケアマネジャーや職場とよく話し合い、家族にとっても無理のない介護の形を探すことが大切です」
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この記事を書いた人
- うさぎと北欧を愛するライター。元Webデザイナー。インタビュー取材やコラムを執筆。強み:好奇心旺盛なところ。失敗してもへこたれないところ。弱み:事務作業が苦手。確定申告の時期はブルーに。
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