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40代を過ぎても「オリジナル肩書き」がない人は要注意⁉︎ 会社の名刺だけではアウトなワケ

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元NHKキャスターであり、長崎大学准教授、スピーチコンサルタントとして活躍する矢野香さん。「なりたい自分」と「ほんとうの自分」の2種類を使い分けると人生が変わるといいます。そこで今回は「なりたい自分」に上手に誘導して、理想の自分になる方法をご紹介します。

プロフィール

長崎大学准教授、スピーチコンサルタント矢野香

やのかおり スピーチコンサルタント、長崎大学准教授。博士(総合社会文化)。NHKキャスターとして報道番組を17年担当した後、独立。著書に『最強リーダーの話す力』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『【NHK式+心理学】一分で一生の信頼を勝ち取る法 』(ダイヤモンド社)、などがある。

「自分には何もない」「自分は何者でもない」。そう考えるキャリア女性は実は多い。社会に出て20年もキャリアを積んで、チームリーダーや管理職に就く人でも自信をもって「自分が何者か」を語れる人は少ない。そのためには、「なりたい自分」になるより「自分をどう伝えるか」にカギがあると元NHKキャスターであり、長崎大学准教授、スピーチコンサルタントとして活躍する矢野香さんはいいます。

人は自分のキャリアを考慮してくれない

矢野さんはキャスター時代、「自分は新人だと認識しているかもしれないが、視聴者から見たら新人でもベテランでも、同じNHKキャスターだ」と上司から教わったそうです。

「キャスターが若葉マークをつけて画面に映るわけではありません。『新人だから許して』という甘えが私の中にあったことを戒めてもらったわけです。視聴者は『NHKでニュースを伝えている人のわりには頼りない』と私への印象を抱きます。そんな人をメインキャスターにしている組織全体の信頼感も失ってしまうわけです。自分の中身が肩書に追いつくようにしなくてはいけないと学びました」

オリジナル肩書を使う

2012年、初めて本を出すときにプロフィールの肩書に困ったという矢野さん。当時はNHKに勤務していました。しかし「NHKキャスター」という肩書の使用は、職場からの許可がおりませんでした。そこで考えたのがオリジナルの肩書です。矢野さんは報道番組を担当して16年目でした。一方で、バラエティー番組の担当は苦手でした。そのため、「現役報道アナウンサー」、「正統派スピーチコンサルタント」と記したそうです。この肩書で『その話し方では軽すぎます!エグゼクティブが鍛えている「人前で話す技法」』を上梓し、ベストセラーとなりました。

現在コンサルティングを受けているクライアントにもオリジナル肩書をすすめています。とくに、税理士や会計士といった士業の方、コーチングのコーチなど、自分を同業他者と差別化したい方は必須です。

「なりたい自分」と「ほんとうの自分」の2種類を使い分ける

「なりたい自分」はどんな人格?

ビジネスを行う上で、「なりたい自分」と「ほんとうの自分」の2種類を使い分けることが重要だといいます。「なりたい自分」は心理学でいう「自己呈示」でみせている自分。矢野さんはこれを「セルフ・パペット」、自分のあやつり人形のようなものだと説明します。「ほんとうの自分」が「なりたい自分」を操るのです。「なりたい自分」では、話す内容、身振り手振りや態度、服装などを含め自分を演出するというのです。

「なりたい自分」でいることの一番のメリットは、たとえ「ほんとうの自分」はまだ自信がなかったとしても、人前では堂々とふるまうことができること。さらには、いざというときも自分を守ってくれることです。たとえば、SNSなどで批判を受けると「ほんとうの自分」は傷つきます。しかし、「なりたい自分」として発信していれば、メンタルを守ることも可能です。攻めと守りのため、「なりたい自分」を身につけましょう。

攻めと守りの効果

矢野さん自身は今年50歳。2人の子供がいて、好きな食べ物はチョコレートという甘党なのだそうですが、そのことを自ら積極的には語りません。ここでも「ほんとうの自分」と「なりたい自分」を使い分けているのです。というのも、矢野さんの顧客はエグゼクティブが多く、女性らしさや可愛らしい雰囲気は求められていないからです。きりっとした「矢野香」を相手に印象づけています。

炎上や批判にも「なりたい自分」は使える

新卒で入局した当初は3年契約の有期雇用だった矢野さん。当時は、男性キャスターに対して女性キャスターは「アシスタント」という立ち位置でした。現場では、年配の男性記者やカメラマンからは名前ではなく「お嬢さん」と呼ばれることもあったそうです。元TBSアナウンサーで女性アナウンサーの第一人者である吉川美代子氏も同様の体験を著書で記しています。そんな状況から、契約更新や局内の人事昇格制度を利用し、矢野さんは最終的には17年NHKキャスターを務めました。その過程でベストセラー著者としての肩書も手に入れたわけです。しかし、「出る杭は打たれる」のが日本の悪しき文化。活躍する矢野さんを見て応援して喜んでくれる人がいる一方で、ネット上に批判的なコメントを書き込まれることもあったそうです。批判を受け、凹んでしまったときに役に立ったのが「なりたい自分」。今、矢面に立っているのは「なりたい自分」の矢野香だと自分に言い聞かせることで、メンタルを保つことができたそうです。

「批判を受けたときは、守りの『なりたい自分』を使いました。『ほんとうの自分』が責められているわけではない、私の操った『なりたい自分』がこの人を不快にさせたと受け止めることにしたのです。そう考えると、周囲から批判されそうな自己表現を変えればいいだけだと、マインドを切り替えることができました。後に心理学の立場から自己表現を研究すると、この方法はきちんと学問として効果検証されていて驚きました。現在はスピーチコンサルタントとして、政治家や経営者、上場企業役員、有識者、著者、アナウンサー、タレントなど様々な人前に立つ立場の方々にも『なりたい自分』の操り方を伝えています」

「なりたい自分」を身につけて最強の自分になる

鏡で全身をチェックする

矢野さんは「『なりたい自分』になるためには、服装を含めた外見も重要。鏡で全身をチェックするのが大事」だといいます。放送局のスタジオや控室にはかならず全身鏡があり、本番前には360度チェックします。同じように私たちも人から全身がどう見えるかを毎日チェックする必要があるそうです。

全身鏡が自宅にない場合は、出先の駅やビルのトイレの鏡でもよいので、毎日チェックしましょう。鏡の中に映る自分がいつのまにか「なりたい自分」になっていきます。

自分の制服を決める

自分の制服を決めていつも同じ服を着続けることも「なりたい自分」になる手段。初めて著者として撮影したプロフィール写真の服装は紺色のスーツでした。当時のNHKニュースのロゴは濃い青と白。さらに色彩心理としても紺色は「誠実」「信頼」の色でもあります。心理学でいう「ハロー効果」を利用し、「なりたい自分」のイメージを洋服の色で印象づけようとしたのです。毎回人前に出るときは紺色の同じ服を着続けました。そのために12着同じデザインの服を用意しました。矢野さんの試みは成功し、「紺色の矢野香」として覚えてもらうことができたそうです。

「最初に準備した既製服は廃版になってしまったので、講演しやすくデザインを改良しながら似たようなデザインの服をオーダーしたんです。生地を変えて夏用にしたことも。自分を覚えてもらうために制服として毎回同じ格好をして人前にでました。アイコンで覚えられる自分になることが大事です」

セルフプレゼンテーションでフックをかける

まったく同じ紺色の服を矢野さんは6年間制服として着つづけました。そして、大学准教授になったのをきっかけに白に変更したそうです。

「服を変えることで、以前から自分を知っている人は『あれ?今日はなんで白い服なの?』と質問してくれます。会話のフックが成り立つわけです。自分が飽きてきていたのも事実ですが、それは決して言いません。『NHKを辞めて大学教員になったからイメージチェンジなの』と答えるのです。自然にキャリアチェンジを伝えることができます。相手から聞いてくれることで、自分のことばかり話すような嫌な人間と思われることなく、伝えたいことを伝えることができるわけです」

服装や装飾品は会話のフックになると矢野さんはいいます。自分の一挙手一投足に対して意図的になることが大事だそうです。

アファメーションをする

アニメ「ワンピース」では、主人公の少年が「海賊王に俺はなる」と言い続けます。この主人公のように、肯定的な自己宣言であるアファメーションで「なりたい自分」を再定義することが大事だそうです。

アファメーションをするタイミングは、メイク時がおススメとのこと。メイクの力によってすっぴんから自分が変身していくことに意識をむけながら「私はこうなる!」と宣言しましょう。鏡の中の自分を見ながら宣言するのでスイッチも入りやすいそうです。これを繰り返すことで「なりたい自分」へ変わることができるといいます。

「なりたい自分」から「ほんとうの自分」への切り替えが大事

24時間「なりたい自分」でノイローゼに

上述したように、「なりたい自分」を演じることは大事です。ただし、24時間ずっと継続するのは良くないといいます。矢野さん自身、24時間「なりたい自分」のままでいてノイローゼになったことがありました。

「キャスター時代、近所のコンビニでお弁当を買えなくなったことがありました。『あのお弁当買っている人、NHKキャスターよね』と言われている気がしてしまって(苦笑)。周囲にどうみられるかを気にしすぎたんですね」

24時間「なりたい自分」でいたのでは疲れてしまいます。メイクをしながらアファメーションをして「なりたい自分」のスイッチをいれる。そして家に帰ったら、メイクを落とし「ほんとうの自分」に戻りましょう。

母親としての自分

「なりたい自分」として仕事で活躍する矢野さん。そんな矢野さんも自宅で子供たちの前ではまた違う自分を見せているようです。

「子供が幼かったとき、私が怒っていたら息子から『お母さん、「矢野香」やって。朝のニュースの「おはようございます」やって。あんな笑顔、家では見たことない』と言われてしまったんですね。『ダメダメ!あれはキャスターの矢野香なんだから!あんたたちには「母ちゃん矢野香」なんだよ』と返しました。子供から見ると、私の場合、「キャスター」と「母親」ではかなり自己表現が違うようです(笑)」

心理学で「ペルソナ」というように、誰もが「職業」「母」「嫁」「娘」などの役割によってさまざまな自分の顔を使い分けています。「なりたい自分」としての新しい顔を追加してみましょう。

「なりたい自分」のとき

では、自分の魅せ方を間違うとどうなるのか? こんな失敗談もあるそうです。矢野さんは職場からそのまま子供の学校行事に駆け付け、気まずい思いをしたことがあるそうです。キャスターとしての仕事用スーツのまま、仕事モードの「なりたい自分」のままだったことが原因ではないかと、後に反省したそうです。「なりたい自分」を出す場は間違えないようにしましょう。

「なりたい自分」を操って理想の自分になる

セカンドキャリアを考えた場合、たとえ「ほんとうの自分」はまだまだ自信がなかったとしても大丈夫。「なりたい自分」を「ほんとうの自分」が操ることで理想の自分になれます。とくにメイクで変身することを体感している女性にとっては、毎日アファメーションすることで高いセルフイメージが定着してきます。あなたもぜひ「なりたい自分」をセルフプロデュースしていきましょう。

*この記事は起業や自立を目指すセミナー(コワーキングスペース「Air Business Departure」主催)での登壇内容を記事化しました。

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