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50代から「なりたい自分」になる方法。 ふつうの会社員、ふつうの主婦からの脱出方法とは?

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普通の会社員・普通の主婦から脱出するにはどうすればいいのか? 元NHKキャスターであり、長崎大学准教授/スピーチコンサルタントとして活躍する矢野香さん。「何者かになる方法」についてのセミナー内容を紹介します。

プロフィール

長崎大学准教授、スピーチコンサルタント矢野香

やのかおり スピーチコンサルタント、長崎大学准教授。博士(総合社会文化)。NHKキャスターとして報道番組を17年担当した後、独立。著書に『最強リーダーの話す力』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『【NHK式+心理学】一分で一生の信頼を勝ち取る法 』(ダイヤモンド社)、などがある。

スピーチコンサルタントが解説する自己表現方法

元NHKキャスターであり、長崎大学准教授、スピーチコンサルタントとして活躍する矢野香さん。50代が「何者かになる」にはどうすればいいのか。都内で開催された40〜60代の起業を目指す女性のイベントに登壇した矢野香さんに密着取材した。

子育ても一段落、仕事もベテラン、でも「私は何者?」

特に50代は、それまで以上に「自分が何者であるか」をより相手に伝えていただきたい。なぜなら「本当の自分からの叫び」と向き合えるようになる時期だからです。50代といえば、子育てが一段落ついたり、仕事もベテランといわれる立場だったりして、毎日にそこまで大きな不安や不満は持っていないことも多いでしょう。しかし、一方でこれまでの人生を振りかえり、「もっと何かできたんじゃないか」と物足りなく思っている部分もあるのではないでしょうか。それこそが「本当の自分からの叫び」です。この求めに応じていくことで、50代からの人生を、より自分の理想に近づけていくことができるのです。そのためにはまず、「自分は何者か」を再定義すること。そしてそれを伝えるために、「一挙手一投足に意図を持つ」ということです。なぜいまこの言葉を使うのか、なぜいまこの服を着るのか、なぜいまこの表情なのか、など自己表現のすべてに狙いがなければなりません。コミュニケーションをとるとき、自分が何者なのかを相手に全身で表現し伝える必要があるのです。

自分の価値は周りが決める

自分が表現したことで自分の価値が決まる、ということをまず認識してください。すなわち、「自分をどう表現するか」で周りの自分への対応が変わってくるのです。例えば自己紹介を求められたとき、「一応、会社員です」「普通の主婦です」と名乗ってしまうと自分の価値を下げることになります。これでは、あなたと会ったことすら記憶に止めててもらえない可能性もあるでしょう。なぜなら「普通の○○です」と名乗ったのでは、相手にとって価値ある人間とはならないからです。「相手は自分が表現した通りに自分を扱う」と覚えておきましょう。

相手から見える自分を考える

では、「何者かになる」にはどうすればいいのでしょうか? 言語で「何を話すか」だけでなく、視覚・聴覚の「非言語」でもどのように伝えるのか、考えることが重要です。分かりやすい例が視覚表現の一つであるファッションです。あなたがどのようなファッションでいるかによって、相手から見えるあなたの価値が変わります。

たとえば、今回のセミナー会場となった「Air Business Departure(エアビジ)」主催者、藤川由樹さんは、当日、明るい水色のスーツで現れました。水色のスーツから連想するのは空。

一目会っただけで元CA(客室乗務員)という藤川さんのキャリアを記憶に残しやすくなるわけです。さらに、会話のきっかけとしてコミュニケーションのフックにもつながります。

自己表現の方法として「なりたい自分」がある

「なりたい自分」で自分を守る

相手から見える自分を意識したら、つぎに「なりたい自分」を演出することが重要です。「なりたい自分」とは心理学でいう「自己呈示」でみせている自分。「セルフ・パペット」、自分のあやつり人形のようなものを想像してください。「ほんとうの自分」が「なりたい自分」を操るのです。たとえ「ほんとうの自分」は自信がなかったとしても大丈夫。話す内容、身振り手振りや態度、服装などを含め、自信がありそうな堂々とした自分を演じるわけです。「なりたい自分」を身につけたら、周囲の批判やSNSでの炎上も怖くはありません。「なりたい自分」は攻めと守りの武器となるのです。

「なりたい自分」の事例

セミナーでは、参加者の一人、元ANA(全日本空輸株式会社)CAであるKさんも「なりたい自分」で身を守った経験を持ちます。KさんはCA時代、お客さまから苦情があったり、罵声を浴びることがあったりした日は、落ち込んだ気持ちを引きずって自宅まで持ち帰りずっとイライラ、モヤモヤとして過ごしがちだったそうです。そこで「こんなとき理想のCAならどうするか?」と視点を変えるようにしたそうです。お客様の罵声に対しても自分の感情で反応するのではなく、「目指したい理想のCA像」という「なりたい自分」として対応したわけです。その結果、お客様に対して感情に任せて言葉を発することがなくなり、仕事での悲しい思いを引きずることもなくなったそうです。

「なりたい自分」の身につけかた

【「なりたい自分」の身につけかた①】全身鏡でチェックする

ではどうしたら「なりたい自分」になれるのでしょうか。まずは言語化です。たとえば、「Iam○○」と口に出すことが大事だと矢野さんは言います。さきほどのKさんの例であれば「Iam優秀なANAのCA」となります。

「Iam○○」が決まったら、全身鏡を使って「なりたい自分」に変身します。全身を360度から確認し、「なりたい自分」としてふさわしいかどうかチェックをするのです。自宅に全身鏡がなかったら自分がよく通るルートの中にマイ全身鏡を作るといいでしょう。たとえば最寄り駅やビルのトイレの鏡でかまいません。これからは、人前に出るときは必ず一度は全身鏡の前に立つと決めましょう。

【「なりたい自分」の身につけかた②】制服を決める

自分を印象づけるには、制服を決めるのが最適です。自分を覚えてもらうために、制服のように同じ服(または同じ色)を着続けます。するとその服がアイコンとなって、人から覚えられやすくなります。たとえば前述の藤川さんも水色のスーツを制服にすることで元CAの経験をいかして「Air Business Departure」というコワーキングスペースを主催しているという経営者としての自分を印象づけることに成功していました。制服ですから「なりたい自分」として人前にでるときは、毎日同じ格好をします。矢野さん自身も紺色のスーツを制服と決め、6年間同じ服を着つづけたそうです。もちろん全く同じ服を12着用意したので、不潔になることもありません。自分が着たい服ではなく、相手が覚えやすい服を着る。ポイントは、徹底した相手目線です。

【「なりたい自分」の身につけかた③】自分の価値を再定義する

①で考えた「Iam○○」という言葉をアファメーション(肯定的自己宣言)します。未来の自分になったつもりで毎日鏡を見て言いましょう。

たとえ今は自宅にいる「普通の」主婦だと自己認識していたとしても、鏡の中の自分を「なりたい自分」として語りかけるのです。たとえば「私はお客様に喜ばれる仕事をしているフリーランスです」というように。

アファメーションは朝メイクするときにやるのがおすすめです。クライアントを見ていると、このスキルは女性の方が効果も高いように感じます。メイクで違う自分に出会った経験があるからでしょう。すっぴんからメイクで自分が変身していくことに意識をむけながら「Iam○○」と自分の再定義をします。ただし、家に帰ったらメイクを落とし「ほんとうの自分」に戻ることもお忘れなく。「なりたい自分」を24時間ずっと継続すると疲れてしまいます。「なりたい自分」と「ほんとうの自分」のオン・オフの切り替えをできるようにしておきましょう。

「なりたい自分」についての注意点

自分が所属するコミュニティでは、どの「なりたい自分」が受け入れられるかも考えなくてはなりません。たとえば、主婦が多いコミュニティでキャリア路線を出し過ぎると反感を買ってしまうでしょう。実際に矢野さんも「なりたい自分」を間違えて表現し、周囲と気まずい雰囲気になってしまったことがあるといいます。ぜひあなたも「なりたい自分」を間違った場所で発動させないようにしましょう。

実践 「なりたい自分」

セミナーでは、参加者がそれぞれ「Iam○○」を考えたうえで自己紹介。「なりたい自分」を伝えるためにどこをどう変えたらよいか矢野さんから指導をうけるスピーチコンサルティングを体験しました。

ラグジュアリー・トラベル講演家のOさん

Oさんは、元CAで創業支援と人材育成会社の代表です。Oさんの「なりたい自分」は、「この世の最後まで美しく輝く人生のお手伝いをするラグジュアリー・トラベル講演家」。元CAらしい発想で、美しく輝くラグジュアリーな人生(トラベル)を目指すことを宣言しました。

Oさんへのアドバイス「わたくしは、がポイント」

「『ラグジュアリー・トラベル講演家』というオリジナルの肩書がいいですね。どのような仕事をしているのか、ともっと話を聞きたくなります。元CAというキャリアを相手に印象づけたいのであれば、さきほど『わたしは』とおっしゃいましたが自分のことは『わたくしは』で話すことがおすすめです。加えて、『わたくし』のときのジェスチャーとして、手のひらを少し丸め自分の胸のあたりにもっていきましょう」

アドバイスを受け、Oさんは再度「なりたい自分」として会場の参加者に自己紹介。その印象の変化に会場からは拍手が起きていました。

CM曲ブランディングプロデューサーのNさん

Nさんの「なりたい自分」は、「オリジナルの曲で未来を引き上げるCM曲ブランディングプロデューサー」。「私は、個人のお客様にオリジナルCM曲を作成しブランディングのお手伝いをしています」と自己紹介しました。

Nさんへのアドバイス「強調ジェスチャー」と具体例で相手の記憶に残す

「人は動く場所に注目します。強調したい言葉の部分で手を動かしてジェスチャーをとりいれていたところがすばらしいですね。せっかくならどんなオリジナルCM曲を作ってくれるのか具体例がわかるとよりインパクトが出ます」

再挑戦した自己紹介でNさんは、ジェスチャーを交えて『人生・ビジネス・才能開花』とCM曲を歌いました。

ワークショップからわかることは、いつでも答えられるように自分をイメージしておくことが大事ということです。矢野さんのアドバイスによって「なりたい自分」について、プラスアルファのポイントを可視化できました。

*この記事は起業や自立を目指すセミナー(コワーキングスペース「Air Business Departure」主催)での登壇内容を記事化しました。

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