タニタ研究員の「ダイエットで人生変える」授業日照時間と気温の変化が食欲に関係している?タニタ研究員が教える「食欲の秋」といわれる理由
「食欲の秋」と言われていますが、夏が終わり涼しくなってくると食べる量が増え、体重増加につながってしまう人が多いようです。なぜこの時期、食欲が増すのでしょうか?これまで研究結果の中から根拠と裏付けのあるものを紹介します。
目次
秋は本当に「食欲の秋」なのか
秋も深まりだんだん肌寒さを感じるようになると、なぜか食欲が出て、食べる量が増えてきませんか?「毎年、秋から冬にかけてどうも太っちゃうんだよね……」という声も良く聞きます(はい、私です)。
昔から「食欲の秋」と言われていますが、実際、夏が終わり涼しくなってくると食べる量が増え、体重増加につながってしまう人が多いようです。
健康で元気であれば無理に食欲を抑える必要はないのですが「ちょっと体型が気になっていてこれ以上のポッチャリ化は避けたいなぁ」と思っているそこのあなた(私です)!
そんなあなたと私のために、秋から冬にかけてどうして食欲がアップし太りやすいのか?データに基づいて考察します。要因はさまざまで、それぞれが複合的に絡んでいるので単純には言えませんが、これまで研究結果の中から根拠と裏付けのあるものをいくつかご紹介します。
食欲が増す要因① 食欲を抑えるセロトニン分泌が低下するため
不安を和らげ気分を高め、心を安定させる作用のある神経伝達物質であるセロトニン。「Happyホルモン」とも呼ばれていますが、秋から冬にかけてこのセロトニン分泌が激減してしまうことがわかっています(図1)。
セロトニンは食欲を抑制する作用がありますが、セロトニンが低下ししてしまうことで食欲が抑制されなくなり、逆に「何か食べて精神を安定させよう」という作用が起きてしまうことが「食欲の秋」の一因なのではないかと言われています。
ではなぜ、秋から冬にかけてセロトニン分泌が低下するのでしょうか。それには日照時間と太陽光の照度が関係しています。
夏から秋になると、昼間の時間自体がどんどん短くなる上、季節の変わり目で天候不安定でもあり日照時間が減少します(図2、3)。
セロトニンは、日光にあたることで分泌が促進されますので、日を浴びる時間と照度がともに減少してしまうことが分泌量低下の大きな要因とされています。
日光にあたる以外にセロトニン分泌量を増やすには「糖質、乳製品、肉類の摂取」や「睡眠をとること」が必要です。秋から冬にかけて本能的にたくさん食べることや眠ることで、心をホッと落ち着かせてセロトニンを補充しようという欲求が高まるのではないでしょうか。
食欲が増す要因② 気温変化に対する身体の反応
秋に食欲が増進するもうひとつの理由は、気温の低下による基礎代謝の変化です。気温が下がると、体温保持のため身体の熱の産生が高まり、基礎代謝が上がります。
およそ70年前の古い文献には、夏に低下した基礎代謝が秋から冬にかけて上昇することが示されています(図4)
たしかに基礎代謝が上がれば、それだけエネルギーを多く使ってしまうため、その分を補給しようとお腹がすくこともうなずけます。しかしながら、近年の実測データでここまで基礎代謝の季節変動が明確に出ている文献を見つけることはできませんでした。
考えてみれば、現代では、エアコン・暖房・空調機能の発達で、ほとんどの時間をそれほど寒さにさらされず過ごしています。一日のうちで少しの間寒さを感じることはあっても、全体の代謝を考えると寒さによる基礎代謝の増大はわずかなもので、それほど大きな数値にはならないはず……。
現代では、寒さを感じて「体温保持のために食べなければ!」という食欲への反応はおきるのに、環境温の調節が簡単にできてしまうため身体にそれほど寒冷負担が起こらず、昔よりも太りやすくなっているのではないでしょうか。
食欲が増す要因③ そのほかの説
そのほかにも、「夏バテ気味で低下していた食欲が、秋に涼しくなって回復する」「秋は美味しくなる旬の食べ物が多いから」「食べ物が捕れなくなる冬に向けての生き物の自然の摂理」など、とにかく「食欲の秋」の理由にはいろいろな説があります。
「なるほどねぇ。仕方ないさ、生き物だもの。」……と自分の「食べたい気持ち」を肯定する言い訳はいろいろ思いついてしまうのですが……。
とはいえ、体型の崩れ、ポッチャリ化を気にする55歳の私は納得して食べてばかりもいられません。
次回のコラムでは、そんな「食欲の秋」をできるだけストレスなくコントロールする簡単なコツをいくつかご紹介します。秋冬ポッチャリ化現象をできるだけ避けたい皆さん、どうぞお楽しみに!
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この記事を書いた人
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1968年生まれ。横浜国立大学在学中よりタニタの体脂肪計のプロジェクトチームに参加。入社後は、世界初の乗るだけではかれる体脂肪計や体組成計、活動量計などの開発に携わり、機器の要となる計測の回帰式や判定アルゴリズム作成を担う。
29歳で社内初の技術系女性課長に就任し38歳で出産。栄養士の資格も有し文部科学省の食育有識者会議委員を務めるなど、さまざまな計測データを健康づくりに活かす提案を行い、栄養士と技術者の2つの視点から多数のセミナーの講師も担当している。