得意を仕事メーカーの設計技術者をしながら外国人旅行者向けツアーガイド者に。そこから“なりゆき”で、想定外の料理教室まで開講(料理教室主宰&全国通訳案内士/鹿野哲郎さん)
多様な働き方のリアルを聞きました!どうやって自分の仕事を確立したのか。メーカーで設計技術者として働きながら、セカンドキャリアを意識して、副業で得意の英会話を生かした外国人旅行者向けツアーガイド者に。さらには、ツアーガイドの一環で寿司にぎり体験講座に携わったことを機に、料理教室まで開講するに至った鹿野哲郎さんに聞きました。
プロフィール
料理教室主宰&全国通訳案内士鹿野哲郎
仕事内容と自分らしいビジネスアイデアの見つけ方
どんな仕事をしていますか?
料理教室主宰として、外国人旅行者を対象とした寿司教室(平日中心)、日本人を対象とした料理教室(土日中心)を開いています。また、豊洲市場で一緒に買い物をする体験提供もしています。
キラーコンテンツは、鯛を1人1尾さばき、寿司ネタに仕込んだ上で、自分で寿司にぎりをしてもらう講座です。使用する鯛は、プロのための施設として知られる豊洲市場で講師が仕入れますが、それに同行いただけるプログラムも人気です。
通訳ガイド業としては、外国人旅行者に対する観光案内をしています(平日中心)。
今の仕事のキャリアは?
5年目です。
なぜ今の仕事を「自分の仕事」にしたのですか?
全国通訳案内士資格取得後、旅行代理店に登録。外国人旅行者のガイド業務(築地案内や寿司づくり体験提供)を請負い始めたのが5年前。マッチングサイトで独自集客を始めたのが4年前。ストリートアカデミー(講座・習い事マッチングサービス)で日本人向け集客を始めたのが3年前。
全国通訳案内士から料理教室主宰になったのは成り行きで、当初は料理教室を開業するなんてことは想定していませんでした。
その「成り行き」について少し説明しますと・・・全国通訳案内士資格を取得後、通訳案内士団体に所属。同団体は旅行代理店と連携しており、外国人旅行者向けツアーのガイド養成を行っていました。私はその講習を受け、築地市場案内ツアーのガイドになったところ、そのガイドの仕事がツボにはまったんです。通訳案内士が寿司にぎりを外国語で説明する企画があり、寿司職人を招聘した講習会を受けた後、寿司にぎり講師も担当させてもらうように。仕込み(魚さばきを含む)を料理教室や書籍、動画で勉強するようになるなど、以降はその活動に傾倒。日本人向けにも講座を企画してストリートアカデミーで開講したところ、自前のキッチンスタジオを開設するまでに至りました。
今の仕事は好きや得意なことですか?
元々料理は好きでした。書籍やネットで見つけたレシピ通りに作るのではなく、独自のアレンジをするのが好きでした。海外駐在をきっかけに、英会話が得意分野になりました。
なぜ、今の仕事がビジネスとして成り立つと思ったのですか?
ストリートアカデミーでの日本人向け講座が人気を博し、毎月安定して一定額(事業用物件賃料の支払ができる程度)の売上を確保できるようになったときです。
「自分の仕事」としてやっていくと決めてから、やったことはなんですか?
キラーコンテンツの模索。
集客ルートの拡大。
あなたの「強み」「弱み」は?
強みは、改善力。「改善力」が生かされているシーンは多々あり、時間短縮や廃棄量の減少、コスト削減、安全率の向上などに寄与しています。
弱みは、選択と集中の甘さ。「選択と集中の甘さ」とは、思いつく「改善」の実施順が、本来は期待できる効果が大きい順であるべきところ、やってみたいこと順になってしまっていることです。
自分の強みをどう仕事に活かしてますか?
私はメーカー勤務を経験しているので、「改善力」については、日ごろから「なんでもいいから、ひねり出せ」と言われてきたことが、生かせていると思います。
工場などでの「ものづくり」において、現場からでる改善案の積極的な採用を通して、効率や品質を向上していく取り組みがありますが、「改善力」とはそれがどの程度盛んにおこなわれているかを表すものです。
教室で行っている具体例としては、炊飯量の設定があります。一般的には、計量カップで米の量を1合2合と測り、洗ったのちに釜に移し、釜に刻まれた目盛りまで水を入れますが、当教室では1合2合よりも、もっと細かい単位で炊飯量を規定しています。炊飯器には小紙片に書かれた表が張られていて、受講者数ごとに、何gの米を用意し、何gの水を用意するかを示しています。運用としては、釜の重さを勘案した総重量で計測するようにしていて、作業者がだれであっても、常に同じ炊き具合になることを実現しています。この方式により、講座終了時に釜に過剰な残が出ないようになっています。
自分の弱みをどう克服していますか?
正攻法です。そのときの思い付きで、やりたくなった行動を我慢して、高プライオリティが何であるかを考え、それを優先しようとすること。
ビジネスを立ち上げる時の最大の壁は?
平日は会社員として働き、土日副業として料理教室やガイド業を始めたため、休む暇がありませんでした。「乗り越えた」というより、働き方改革の流れにあって、会社員としての業務の効率化により土日以外にも休日取得できるようになり解決しました。
ビジネスを立ち上げる前に何を準備した?
さしたる展望があったわけではありませんでしたが、東京オリンピックを見据えて全国通訳案内士資格を取得しました。
ビジネスを立ち上げてぶつかった壁は?
副業後は「壁」と言えるような困難さを感じたことがありません。
1人社長ですか? それともチームですか?
旅行代理店に所属していた時期の同僚などに助手として参加してもらっています。経営的な部分は自分ひとりでやっています。
仕事に求める優先順位は?
生活していく上で、必要最小限の収入を得られることは一番大事。次に、ストレスなくいい気分でできることが重要。
法人化してますか?
会社員としての本業を続ける間は、法人化しない見込み。会社員をやめ、料理教室主宰+ガイド業に絞る際には、税制優遇があるので、青色申告を経て、法人化したいと考えています。
会社員を辞めてから今の仕事をはじめましたか?
会社勤めをしながら副業として通訳案内業を開始し、そのまま料理教室主宰となって現在にいたります。料理教室主宰+ガイド業に絞るのは、2~3年後の見込みです。
はじめての仕事はどのように獲得しましたか?
旅行代理店からの委託です。
最初に自分の力で稼いだお金を得たときの感想は? またその額はいくら?
通訳案内士資格の取得が簡単でなかったので、とてもうれしかったです。初回収入は、助手としてだったので、数1000円と少額でした。
価格はどのように決めましたか? 価格設定で悩んだことは?
価格設定は、労働対価としてではなく、お客様が妥当とみてくださるかどうかで決めています。
ビジネスが軌道に乗るまでの期間とその間のやりくりは?
方向性を模索しながら、おおよそ3年ぐらいかかりました。手ごたえをつかめるまでは、手を変え品を変え、改善あるのみでした。