100 Questions
得意を仕事

得意を仕事仕事を通して「多くの人たちに味覚の経験値を増やす機会を提供し、人生を豊かにしてもらいたい」(料理教室主宰&全国通訳案内士/鹿野哲郎さん)

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「働く意味」や「働く喜び」は人それぞれ。仕事の意味、仕事を通して自分がどうありたいか? メーカーで設計技術者として働きながら、セカンドキャリアを意識して、副業で得意の英会話を生かした外国人旅行者向けツアーガイド者に。さらには、ツアーガイドの一環で寿司にぎり体験講座に携わったことを機に、料理教室まで開講するに至った鹿野哲郎さんに聞きました。

プロフィール

料理教室主宰&全国通訳案内士鹿野哲郎

メーカーの設計技術者として30年近いキャリアの中で、30代で経験した海外駐在以降、英語力を活用する頻度が増加。50代のとき、セカンドキャリアを考え始め全国通訳案内士資格を取得。副業として外国人旅行者のガイドをするなか、築地市場の案内がツボにはまり、旅行代理店が提供する、寿司づくり講座に参加して以降は、活動がそちらの方面に傾倒。今では自前のキッチンスタジオをもつまでに。

Be 仕事とはなんですか? 仕事を通して何を目指しますか?

あなたの仕事は「天職」だと思いますか? その理由は?

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広い意味では「天職」かもしれません。独自に工夫した教え方により、受講者が満足感をもって「受講してよかった」と言ってくださることに喜びを感じています。

仕事の困難が感じられなくなる瞬間は?

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受講者の方が講座内容を気に入ってくださり、リピーターとして別講座に予約をくださったときに、やっててよかったと思います。

あなたの仕事を通じてどのように社会に貢献したいですか?

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明確なゴールがあるわけではありませんが、高級食材を使って自身で調理するという習慣を広めることで、多くの人の人生を豊かにしてもらいたいと思っています。

一般的に、歳を重ねるごとに、食に関する新たな体験をし、時に感動したりします。「歳を重ねるごとに」というのは、長く生きていると、偶然でも必然でも、そういったことに出会う機会をもったりすることを言っていますが、加えて、高級店で食事ができるような経済力がついてくるようなことも含んでいます。そんな中、豊洲市場に行くようになってから、市中では手に入らない高級食材を手に入れられるようになり、それを使うだけで、最高ではない調理方法でも、かなりイケる味覚体験ができることを知り、「高級店で食事ができるような経済力」がなくてもどんどん経験値を増やしていけることを、広めていきたいと思った次第です。

長い人生にあって、様々な出会いから学ぶことで、経験値が上がった状態が「豊かな人生」だと仮定すれば、並の所得では経験することがないような高級店での味覚体験を、安価に経験できることは、人生を豊かにしていると考えます。

顧客から感謝される瞬間は?

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当教室独自の教え方の特徴(「科学的なアプローチをすること」など結構いろいろあります)が、受講者の方のツボにはまったときです。

たとえば、当教室では、味の再現性を重視しています。使う調味料の量を測るのに、計量スプーンは使わず、重さで管理しています。自宅でも、教室でやったのと同じ出来にしていただくことが一番の目的ですが、これを習慣にしていただければ、とある日の料理の味を、その次には少し甘くしてみようとか、塩気を減らしてみようとかが確実にできるようになります。発展的には、寿司飯をつくるときに、団扇であおぐ前後で重さをはかり、蒸発の具合をみるとか、うなぎのタレを作るときに、途中で秤にのせて、煮詰め具合をチェックしています。

受講者の方から「目からうろこが落ちた」的なことはよく言われます。

仕事を始めた時の夢は実現しましたか?

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半分ぐらいです。

新しい働き方で時間的な余裕はありますか?

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空き時間があれば、教室の修繕や改良、講座の改良、新規講座の検討などに時間を費やします。結果、休んだり遊んだりする時間がほぼありませんが、逆な言い方をすれば、余裕があるから前述のようなことができています。

新しい働き方で経済的な変化はありますか?

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3年前に定年を迎え、雇用延長の立場になったことや、今年から時短勤務に切り替えたことによる減収が大きく、料理教室による利益がそれを埋め合わせできるほどではないことから、収入は減っています。

現在、仕事で一番情熱を注いでいることは何ですか?

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現在ビジネスの核たる人気講座に匹敵する、新たな講座の開発に鋭意取り組んでいます。安定した経営のためには、絶対に必要と考えています。その辺では手に入らないが、豊洲でなら簡単に手に入る食材を使い、未経験で試すにはちょっと敷居が高いが、ひとたび実習すれば自宅で再現できるぐらいの難易度というのが、新規講座のイメージです。豊洲に行った際には、売り場をぐるぐる回って、何かいいものはないかと探しています。

人生と仕事においてやりたくないことは何ですか?

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勤務時間の終わりを心待ちにして、しばしば腕時計を見るような仕事に従事したくありません。

あなたの仕事を諦めかけたことはありますか?

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ありません。募集開始した講座に受講希望者が現れない状況が1か月も続いたら心が折れていたと思います。

あなたの原動力は何ですか?

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当教室独自の教え方の特徴(結構いろいろあります)が、受講者の方のツボにはまった(感心してくれた)ときに、強く自己肯定感を得て、さらなる改善への原動力になります。

仕事とやりがいの関係についてどう考えてますか?

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こちらが提供したサービスに対して、受講者が納得してお代を出してくださる状況ができれば、「やりがいのある仕事」と言えると思います。

仕事とお金の関係についてどう考えていますか?

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お金(収入)は、労働対価としてではなく、受講者満足により納得して支払ってくれるものと考えています。最初は労働対価として自分が納得できるものではありませんが、そういった状況を目指すことを正しい道と考えます。

「お金=労働対価」というのは、雇用関係にあっては当然のことですが、個人事業主として提供するサービスの価格設定において、自身が希望する時給をベースに考えてしまうと、それでは高くなりすぎてしまい、全く売れないことになりかねません。

持続可能なビジネスは「売れる」必要があり、そのために「お金=受講者満足」といった視点で売り出し価格を設定。その価格を市場に問うてみて、反応次第で上下しながら、一方で、「お金=労働対価」を実現するために、提供するサービスの内容や提供方法の変更するのが王道と考えます。

個人事業主に転身する前の仕事によっては、「お金=労働対価」という考えから抜け出せない人がいると思われる一方、私の場合は会社員としての業務において、単なる設計業務のみならず、商品企画から製造・保守にまで首を突っ込める社風により、多少なりともビジネス感覚を身につけることができていたと思います。

仕事と住まい(居住地)の関係についてどう考えていますか?

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職住接近は時間効率が高い点で好ましいですが、集客の観点から、料理教室の設置場所は都心。コストの観点から住居は郊外とするのは必然と考えます。

今の仕事で得られた最大のものは何ですか?

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あらゆる世代の人が魚さばきの方法を知りたいと思っていることがわかりました。

忙しい中でも確保している時間は何ですか?

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意外と思われるかもしれませんが、毎日10~50分ピアノを弾いています。楽譜に忠実に弾くのではなく、好きな曲を耳コピして自分なりのアレンジで弾きます。自己肯定感を持つことができる時間です。

自分らしく生きて働くために大切なことは何ですか?

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自分らしく生きるとは、自分の「好き」を優先するということで、そのためには効率を度外視する必要もでてきます。これを実現するには自営しかありません。

ITやDX化にどう対応していますか?

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大学時代が、パーソナルコンピューター創成期にあたり、工学部出身ということもあり、ITには一定の理解を保ちながら過ごしてきました。多くの人が費用支出して外注しなければできないホームページ制作やドメイン取得も自分でできるので、小回りがききます。一方で、SNSは十分に活用できておらず、それが課題です。

AIの進化により、あなたの仕事が残る自信はありますか?

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魚をさばいたり、寿司にぎりといったアクティビティは、いずれロボットがやってくれるようになるでしょうが、あえて人が美しい所作によって実行することは、楽器演奏を習うのと似ていて、AIによるサポートが出てくるものの、核心部分は生身の講師が担う状況は当面続くと思います。外国人に対して英語で提供するシーンについても、ますます増えると考えます。

あなたにとって、仕事とは何ですか?

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生活の糧を得るためのものですが、同時に社会との関わりを通して、精神的な充足を得るためのものです。

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