門脇麦「奇跡!」6年越しで成河から譲り受けたあるものとは? 「ねじまき鳥クロニクル」再演
村上春樹のベストセラー小説「ねじまき鳥クロニクル」が原作の同名舞台が、再演される。2020年の初演から続投する門脇麦さんは、日本語を母国語としない演出家が手がける舞台を五感で味わってほしいと願っています。
役者、バレエダンサー、アーティストなど、一流の表現者が集う舞台。門脇麦さんは「お金を払って観たいぐらい」と本番を前にワクワクを抑えきれないよう。憧れの成河さんから贈られたあるものも、その高揚を倍増させていると明かしてくれました。
――2020年に初演された舞台「ねじまき鳥クロニクル」が再演されます。トップクリエイターが舞台化した作品は演劇ファン、文学ファンから高く評価されました。初演時を振り返っていただけますか。
演出家のインバル・ピントはイスラエルの方。私たち役者陣とは、通訳の方を介してやりとりをするなど、お互いの思いを十分理解できたとは言えない状況もありましたが、言葉に頼れない分、それぞれの感覚を大切に舞台を作っていきました。ワークショップのように、思いついたアイデアを持ち寄ったりもして。インバルはダンサーで振り付けもするのですが、稽古のときに役者が動く様子を見て、作ってきた振り付けを全く別のものに変えたこともありました。
――十分な意思疎通ができなかった中で、大切にしたことはどのようなことでしたか。
村上作品は独特な日本語の言い回しがありますよね。それを日本語が分からないインバルがどこまで感じて、そして「舞台で表現したい」と思ったことは何なのか。インバルの脳内に浮かんでいる絵をくみ取るようにしていました。日本文学を外国の方がどう感じたのか。そこに残るものは、本当に大切な骨組みだと思ったので。
――再演が決まったことについてはどのようにお感じになりましたか。
出演作品が再演されるのは初めてなので、「また観たい」と思っていただけたことがうれしいです。前回は「不完全だった」と感じた場面もあり、悔しい気持ちで終わったので、新しい気持ちで臨みたいです。(共演する)成河さんからはポスター撮影をするときに「またフラットに、もう1回始まるだけだよ」と背中を押していただいたので、皆さんと一緒にもう1回作品を作り上げて行きたいです。
――二人で一役を演じる主人公の岡田トオル役は、成河さん、渡辺大知さんが続投。新キャストに、バレエダンサーの首藤康之さんなどが抜てきされました。初演との違いはありますか。
成河さんは7年ほど前に舞台でご一緒したときからずっと尊敬しています。「この人の背中を見ていれば、役者として間違った道に行かない」と絶対的な信頼を置いている役者さんです。渡辺さんはバンドをされているので、音楽劇における教科書的な歌い方ではないところなどが、舞台のアクセントになっています。初演では二人が人間の多面性を演じ分けていましたが、今回は二人の境界線がもっと曖昧になる感じがしています。首藤さんはバレエを習っていた私にとっては、憧れの人。そんなみなさんと同じ舞台に立たせていただきますが、私もお金を払って客席から観たいくらいです。
――成河さんからは、ずっと「ほしい」とお願いしていた「楽屋のれん」をいただいたんですよね。
そうなんです。7年前にお願いをしたのですが、楽屋の入り口にかける「楽屋のれん」は、簡単に渡せるものではないんですよね。当時はそのことを知らずにお願いしていたのですが今年、6年越しの夢が叶いました。成河さんのお名前が入った楽屋のれんは、今回の舞台で初めて楽屋にかけさせていただきます。成河さんと同じ舞台でのれんデビューできるなんて奇跡的なこと。今からとても楽しみです。
――門脇さんは前回と同じく、日常を異空間に変える門番のような役割を担う女子高生・笠原メイに扮します。門脇さん自身は、日常がSF世界に続いていると感じる瞬間はありますか。
最近、夢をコントロールできるようになったんです。「空を飛んでみたい」「海の中を冒険したい」とか見たい夢を頭の中に浮かべて目を閉じると、願った夢を見ることができるんです。主に昼間に仮眠する前などにやっていますが、瞑想に近いのかも。今後マネージャーから「寝ながら笑っていた」と言われることもあるかもしれません。
――最後に舞台を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。
よく「五感で楽しんで」と呼びかけたりしますが、この舞台以上にその言葉が適している作品はないと思います。原作を読んでいなくても、音楽と役者の身体表現で村上春樹さんの世界を感じられる舞台です。初演よりもパワーアップした舞台を、全身で楽しんでいただきたいです。
▼公演情報
舞台「ねじまき鳥クロニクル」
・東京公演 2023年11月7日(火)~26日(日)
会場:東京芸術劇場プレイハウス
・大阪公演 2023年12月1日(金)~3日(日)
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
・愛知公演 2023年12月16(土)・17日(日)
会場:刈谷市総合文化センター大ホール
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この記事を書いた人
- 音楽や映画、舞台などを中心にインタビュー取材や、レポート執筆をしています。強み:相手の良いところをみつけることができる。弱み:ネガティブなところ。