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教員歴25年、第二の人生を心理カウンセラーとしてスタート。「仕事の不安定さ」「認知度のなさ」「ウェブ集客の難しさ」から分かった2つのコトは?

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心のケアを行う心理カウンセラー。一言に心理カウンセラーといっても国家資格、民間資格などレベルや扱える領域もさまざま。自分のキャリアと資格を必要とする人に届けるための PR についてスクールカウンセラーに話を聞きました。

プロフィール

インタビュアー、スタートアップ広報中村優子

(なかむら・ゆうこ)元テレビ局アナウンサー、インタビュアー、スタートアップ広報。作家・林真理子さんのYouTubeチャンネル「マリコ書房」、および著者インタビューサイト「本TUBE」を運営。インタビュー動画の企画から出演、編集まで一人でこなす。年100本以上の動画制作に関わる。2022年、スタートアップ広報の会社を設立。

25 年の教職を中途退職、カウンセラーに転向

厚生労働省の調査によると、うつ病などで心を病む人は 600 万人を超え、10 年前からほぼ倍増しているそうです。


このことを反映したためでしょうか、心理学がブームと呼べるほど人気。心理カウンセラーを目指す人も増えています。


ひと口に心理カウンセラーといっても、活躍の場はさまざまです。総合病院の精神科で医師と連携して働く人もいれば、企業、学校、あるいは福祉の現場で働く人もいます。公認心理師という、心理職としては初の国家資格が生まれたのは、ごく最近の話。ですが、この資格は必須というわけではなく、他にもさまざまな資格があり、プロとなる道筋も複数あります。


今回はその中でもスクールカウンセラーに注目。仕事の獲得を含む様々なことについて、越橋理恵(えつはしりえ)さんにお話を伺いました。

教員歴 25 年。スクールカウンセラーとして独立した越橋理恵さん(写真/本人提供)

越橋さんは、教員免許を取得後、札幌の公立幼稚園で 4 年、特別支援学校(養護学校)の教員として計 25 年間、教育相談にも携わったのち退職。退職の理由は、「いろんなことが重なって」とのことですが、職場でパワハラを受けていたことが、大きかったそうです。
その体験が、今のお仕事の関心分野に一部つながっているようです。

国家資格がなくても長年の教員経験が実績に

心理カウンセラーの仕事を具体的に考え始めたのは、退職の少し前。越橋さんは、次のように話します。

精神とか心理とか、そういう見えない世界を勉強したいという気持ちが強くありました。
まずは、精神保健福祉士の資格を取ろうと、通信制の学校で勉強し、病院などで実習をしました。自分は、人とじっくり関わるのが好きなんだなと実感しましたね。でも、カウンセリングの実習では、聞いてばかりで質問できなくて、厳しく指導されたのが記憶に残っています。
精神保健福祉士の資格はありますが、公認心理師とか臨床心理士といった資格は持っていません。ただ、地元の北海道の場合、スクールカウンセラーの要件として、学校で教育相談をしていた経験が実績として認められます。「20 年以上にわたり、生徒さんや親御さんの教育相談をしてきた」という実績が買われ、登録させてもらいました。そのときに「頑張って続けててよかった」と思いました。

講座の生徒さんからの依頼が初の仕事

最初の依頼は2017年頃、高校の保健室の先生からだったそうです。越橋さんは、怒りをコントロールするアンガーマネジメントの講座を開催。その受講生の 1 人でした。

その人が、自治体の登録名簿に私の名前があるのを見つけ、「うちの学校でスクールカウンセラーを探してるんだけど来てくれませんか」って連絡してきてくれました。これが最初のお仕事でした。自治体からの依頼では、長期的かつフルタイムで仕事が来ることは、まずないそうです。
ちなみに、『心理カウンセラーをめざす人の本 ’23 年版』(成美堂出版)には、「カウンセラーの仕事をゲットするために」という項目があります。そこでは、仕事を得るためのコツとして、「求人情報に対して常にアンテナを張っておく」ことが第一に書かれています。具体的には、「インターネットで求人情報を公開しているページや、都道府県・市・区・町・村の広報紙、友人知人の口コミなどをチェックする」とあります。

カウンセラーの課題は不定期な仕事の依頼

越橋さんの場合、たまたま見知っている方が、登録名簿を見てくれるというきっかけがありました。いい意味でコネクションも重要なのです。

それから依頼は増えていきましたが、かなり不定期です。例えば函館市の中学校だと、週に 1 回ぐらい、何時間か相談室にいるというかたち。担任の先生とか保健室の先生が、「この子ちょっと気になるから」とカウンセリングを依頼してくるのです。
ただ仕事を増やそうとして、学校をいくつも掛け持ちすると、今度は体力的・気力的にきつくなるんじゃないかなとは思うんですよね。

カウンセリング後のメンタルの落ち込みも課題

仕事の不安定さという課題に加え、心理カウンセラーには気力的なきつさがつきものといいます。

クライアントさんによってなんですが、何か深い話をしたわけじゃないのに、終わったらズーンってする感じがあって、疲労してしまうことがあります。だから 1 日に何人もとか、午前と午後で違う学校をはしごするのは、私にはちょっと難しいのです。
学校以外では、函館市が主催する市民講座で、グループセッションをすることもあります。
この場合、受講生は無料で、市から私に講師料が払われるというかたちです。

メンタルのバランスのために仕事の枠を広げる

越橋さんは、スクールカウンセラーは多くて週数回程度とする代わりに、経験を活かして他の領域へと広げようとしています。自身のホームページを立ち上げ、「児童生徒向けの気持ちの上手な伝え方 出前講座」と「小学生ママ向け 子育てイライラ こころの筋トレ」の 2 本立てで、学校・子供会や親御さんを対象とした講座・相談を受け付けています。

越橋さんのホームページ

去年まではコロナ禍で、オンラインのカウンセリングがメインだったので、ホームページもそういう感じに作っていました。これからは対面も増やしたいのでリニューアルしました。

ウェブサイトを作って知った「自分の認知度のなさ」

ウェブサイトを作ることで、web の仕組みや集客について、今更ながら学ぶ必要性を強く感じたと言います。

私は、圧倒的に認知されてないんだっていうのがわかって、これはもう今年からの課題です。自分にはしっくりしないキーワードでも、SEO 的には割り切って使わなくてはとは思います。でも、どうしても自分が使いたい言葉を使ってしまいます。それで、検索に引っかからないというジレンマがあったり、まだまだ勉強中です

自己開示は「その情報が誰かの役に立つかもしれない」

note の記事は、書き手の任意で有料にすることができます。越橋さんは、役立つ有料記事も頻繁に書いています。

有料記事を買う人は本当に少ないですね。もちろん、これでは稼げないですが、有料記事を書いたら、変なコメントが来なくなりました。
以前はブログを書いていたのですが、あまりその気になれませんでした。でも note は、書き続けたいと思う不思議な場です。有料記事はそれほど購入されなくても、続けようと思ってます。
記事の内容の課題としては、自己開示ですね。知らない人と繋がると怖いって思ってる部分があることに、note を書いているうちに気がついたのです。なので、ちょっとずつだけど、何か自分のことを語ってみて、その情報が誰かのお役立ちになるかもしれない。その気持ちで、「自分はこう思うんだよね」っていったものを、ちょっとずつ混ぜ込もうと思います。
ホームページに誘導するような記事は書いていませんでしたが、今年はちょっとトライしてみようかな。

心理カウンセラーに必要な2つのこと

さて、心理カウンセラーは、いったん資格さえとってしまえば、ずっと務まる仕事ではありません。『心理カウンセラーをめざす人の本 ’23 年版』には、求められる条件として、相手に共感できる、温かい心を持つ、社会と連携していけるなど、多岐にわたる持続的な研鑽が必要です。そして、ほかの職業と比べて際立つのは、総合的なコミュニケーション能力と言えるでしょう。この点については、越橋さんも同じ考えですが、さらにこのようにも話しています。

長いこと学校の中で一生懸命頑張ってきたので、学校以外の社会を見る余裕もなく、興味も持てませんでした。でも独立して、この世にはいろいろな人がいて、いろいろな価値観があって、いろいろなコミュニケーションの仕方があるということに、気がついいたのは大きいです。異業種の方の話を聞いたりするっていうのは、すごいためになってるし、そういう時間を取るようにしてます。積極的に自分の世界を広げるのは大切なことだと思います。
世の中のカウンセリングに対するイメージは、精神科のクリニックで受けるみたいなイメージが、まだあるようですね。なので、もっと気軽に、自分と向き合う時間として活用してもらえたらと思います。

大半の個人事業主の職業にもいえることですが、心理カウンセラーは特に、コミュニケーション能力と宣伝の頑張りが問われるものだと、今回のインタビューを通して実感しました。心理学に対する大きな関心とともに、この 2 点において努力を重ねることが、とても重要なのです。

越橋理恵さんの公式サイト

越橋理恵さんの note

この記事を書いた人

鈴木 拓也
鈴木 拓也
都内出版社などでの勤務を経て、北海道の老舗翻訳会社で15年間役員を務める。次期社長になるのが嫌だったのと、寒い土地が苦手で、スピンオフしてフリーランスライターに転向。最近は写真撮影に目覚め、そちらの道も模索する日々を送る。

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