全国に515ある商工会議所とは?起業の壁は「失敗への不安」。リスクを減らして、夢を叶える方法はあるのか?〈日本商工会議所・杉健太郎さん/第2話〉
主要国に比べて日本における起業数は低い。原因の一つに「失敗」への不安がある。不安を乗り越え、少しでも安全な船出には何が必要かを検証してみた。
目次
日本の開業率が低いのは「失敗」への不安
中小企業庁の2022年版「中小企業白書」における開業率の国際比較によると、米国が9.2%(2019年)なのに対し、日本はわずか5.1%(2020年)にとどまっており、欧米諸国と比較しても特に低い水準だということがわかる。
日本の開業率に関するデータをご覧いただきたい。開業率が低い理由として、「生活が不安定になる」「個人保証の問題などセーフティーネットが整備されていない」といった、起業に失敗した場合の不安を挙げる声が多い。
個人資産を失うリスクがネック
創業時に信用保証を受ける際に、経営者の個人保証を求められると、事業に失敗した場合に個人の資産を失うことになりかねず、思い切った事業展開を妨げる要因にもなる。
そこで、政府は2022年12月、経営者保証に依存しない融資慣行の確立を加速させるため、「経営者保証改革プログラム」を策定した。
〈主な施策〉
経営者保証改革プログラム
① スタートアップの創業から5年以内の者に対する経営者保証を徴求しない新しい信用保証制度の創設(保証割合:100%/保証上限額:3500万円/無担保) 【相談受付開始:23年2月、制度開始:23年3月】
(※)創業関連保証の利用実績:11,153件(2021年度:法人)
② 日本公庫等における創業から5年以内の者に対する経営者保証を求めない制度の要件緩和 【23年2月~】
(※)創業から5年以内の者に対する経営者保証を求めない融資の実績:約1.6万件(2021年度)
③ 商工中金のスタートアップ向け融資における経営者保証の原則廃止【22年10月~】
(※)スタートアップ向け融資の実績:202件(2021年度)
④ 民間金融機関に対し、経営者保証を徴求しないスタートアップ向け融資を促進する旨を要請【2022年内】
事業計画と経営者の取り組み
経営者保証に依存しない融資慣行の確立は、中小企業の活力強化や地域経済の活性化に繋がる重要な取り組みで、今後一層の推進が期待される。また、重要なのは事業計画や創業者の取り組みとなる。起業への一歩をどのように踏み出し、さらに持続していくためには何が必要かを、日本商工会議所、中小企業振興部・課長の杉健太郎さんに聞いた。
起業の課題を乗り越えるハンドブックも
起業時のさまざまな課題を乗り越え創業を実現するには、商工会議所のサポートがあると安心です。
商工会議所の強みは、全国515カ所、それぞれの地域に相談窓口があること。創業に関しても、希望者の事情に応じて支援しています。
創業計画書の作成も伴走
例えば北海道の深川商工会議所は、「創業のとびら」というハンドブックを作っています。ハンドブックは、「創業したいが自信がない」「何から始めて良いか分からない」と躊躇している人を後押しし、創業という夢の実現に向けた第一歩を踏み出してもらおうと作成されました。商工会議所の職員はハンドブックを相談者に見せながら、創業に必要な資金の調達や創業計画書の作成など、さまざまな悩みや不安を解決するためのサポートをしています。
また、商工会議所の職員は創業後も定期的に事業者を訪問。日々の経営の相談に乗るなどトータルで支援しています。長期的なサポートが受けられるのも商工会議所の強みといっていいでしょう。
商工会議所は全国にあるため、なにか困ったときや悩みなどを気軽に相談に行ける点も大きなメリットです。
商工会議所の支援で夢を叶える
商工会議所の支援で夢を叶えたが女性がいます。一人は美容師の経験を活かし美容院を開業。資金調達や補助金の利用、金融機関向けの資料作成について商工会議所からサポートを受けました。
「創業後も確定申告や日々の経営について相談している」という彼女は、商工会議所のサポートがあるおかげで安心して経営に専念できるといいます。
もう一人の方はハンドメイド雑貨の製作販売業として活躍。商工会議所主催の新規創業セミナーの受講をきっかけに、商工会議所に相談するようになりました。難しい確定申告も商工会議所に教わったことで、スムーズに終えられるようになっています。
お二人は今、夢を叶え生きがいのある毎日を送っています。
商工会議所のサポートがあれば、女性起業家として活躍するのも夢ではありません。
コロナによる業績悪化、原材料・エネルギー価格の高騰、世界的なインフレなど、現在は多くの企業が急激な環境変化に直面してる。そうした中で、全国の商工会議所は、会員企業からの経営相談に親身に対応するなど、常に企業に向けて手厚いサポートに取り組んでいる。こうした商工会議所が行う支援の認知度が上がれば、起業したい人も増えるのではないか。本気で創業したいなら一度問い合わせてみることをおすすめしたい。
この記事を書いた人
- 「好きや得意」を仕事に――新しい働き方、自分らしい働き方を目指すバブル(の香りを少し知ってる)、ミレニアム、Z世代の女性3人の編集部です。これからは仕事の対価として給与をもらうだけでなく「自分の価値をお金に変える」という、「こんなことがあったらいいな!」を実現するためのナレッジを発信していきます。