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「会社を辞めたい」50代が、失敗しないためにやっておくべき3つのこと

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統計では7~9割の人が「会社を辞めたい」と思ったことがあり、「セカンドキャリア」が今注目のキーワードに。日産自動車を辞めてセカンドキャリアの専門家になった木村勝さんに聞きました

「セカンドキャリア」といえば、これまでは「定年後に構築する第二のキャリアパス」という意味合いがありました。ところが今はもっと広く、第二新卒以降の30代も含めた転職・独立を指す言葉になっています。

【写真】『会社を辞めたいと思った時に読む セカンドキャリアの見つけ方』(木村勝)

終身雇用・年功序列という価値基準が揺らぐいま、定年前のセカンドキャリア成功のコツや秘訣はあるのでしょうか? その道の第一人者であり、『会社を辞めたいと思った時に読む セカンドキャリアの見つけ方』の著者でもある中高年専門キャリアデザインアドバイザーの木村勝さん(リスタートサポート木村勝事務所代表)にお話をうかがいました。

人生の充実度が下がったときこそセカンドキャリアの考え時

大多数の会社員が、「会社を辞めたい」と思ったことがあるはずでが、それが普通です。さまざまな統計データからも7〜9割の人がこれに該当してします。そもそも、学校を出てから定年まで途切れることなく順風満帆だという人は、ほとんどいないでしょう。

私がキャリア相談でも使う、これまでの人生の充実度を表すライフカーブというグラフがあります。

縦軸が充実度の度合いで、中間の位置が可もなく不可もないレベル。それより高いほど人生は充実しており、低いほど辛い人生です。横軸は年齢ですね。私の例で説明しますと、日産自動車に入社して横浜工場の人事課に配属になったのち、3年目に出向して営業をしました。仕事はやりがいがあって、充実度は上向いたのですが、そのあとは異動や病気などあって下り坂に。

30代後半にまた出向したのですが、そこは自分に合った職場でとても充実していました。ですが、会社が外資系の間接業務の請負企業に買収されて、「英語の苦手な自分はこのままこの会社に長く勤めていられないな」と考え始めて、またグラフは下り坂に。52歳になって、会社員を卒業し、個人事業主となり今に至ります。60歳を過ぎた今でも現役で、とても充実した人生を送っています。

木村さんのライフカーブ

キャリアを計画しても、会社の事情や、他律的な圧力がかかったりで、望んだとおりとはいかないものです。ただ、その歪みがあまり大きくなると、セカンドキャリアを考えるのが健全な路線だと思います。

起業よりもリスクの小さい独立を目指そう

私の考えでは、「起業」と「独立」は分けています。起業は、新しく事業を起こすこと。独立は、いったん退職しても、今まで手掛けてきた業務の延長線上の仕事をすることです。

こちらのほうが、リスクが少なく、安定性があります。

私も、メインのクライアントは、古巣の日産自動車のグループ会社の人事関連部署です。私のことを知っている当時の先輩が、その会社に移っていて、お声掛けいただのが縁です。

そこには私の机もあって、週2回そこで仕事をします。仕事の中身は、採用面接のサポート、社員教育の事務局担当や、給与計算のトラブル解決など。そこの社員と同じような業務をしています。社内の制度なども把握していますし、非常にやりやすいと感じています。

このほか週1回、電気通信大学でキャリアデザインの授業を受け持っています。ライフデザインアドバイザーという肩書をもっており、ミドルシニアを対象にしたキャリアデザインのセミナーに登壇したり、本を書いたりしています。

不安感の払拭もあると思いますが、独立を考える方は、公認会計士といった難しい資格を取ろうという方向に行きがちです。

ですが、資格を取ってもクライアントを確保できないことは当たり前にあります。

「合格すれば何とかなるだろう」と思いがちなのですが、そこはちょっと注意しなくはなりません。

辞められない人は別の居場所に軸足をちょっと置く

日本の企業は、いまだ雇用流動性が低いのです。そんな簡単には辞められない事情が多々あります。特にミドル世代ともなると、扶養すべきご家族もいらっしゃいますし、住宅ローンを抱えていらっしゃる方も多いです。心中「辞めたい」と思っても、「今辞めても次が決まらないかもしれない」などと思い直しているうち、社内の状況がちょっと変わって、「もうしばらく続けようか」と戻ってしまう方が多いですね。

ですが、「会社を辞めたい」という思いほど、強力な推進力を持つエネルギーはないのです。このエネルギーを使ってセカンドキャリアを構築するのが、スタート地点と考えましょう。

手始めに、今の会社とは別の居場所に軸足をちょっと置くのが一番のポイントです。

居場所はコミュニティとも言い換えられますが、そこで過ごすうちにセカンドキャリアにつながっていくことはわりあいと多く、効果的な方法なのです。

スタンフォード大学の先生が唱えた「弱い紐帯理論」というのがあります。親しく密着した仕事仲間しかいないと、その会社や業界の調子が悪くなれば一蓮托生です。なので、あえて全く関係ないところとつながりをもつ。遠回りのように見えるかもしれないけれど、セカンドキャリアの視点では別の見方ができるのです。

趣味、勉強会からでもチャンスは生まれる

ちょっとした例を挙げますと、東京都が主催している、「東京セカンドキャリア塾」というのがあります。ここは、55歳から64歳のプレシニアの方が対象で、2ヶ月にわたりセカンドキャリアに関するいろいろな講座を行っています。そこの参加者同士でネットワークができるなど、ある種の居場所としての役割も果たしています。

私も会社員時代、いろいろ悩んでいた時期に出合った本があって、その著者に感想を送ったことがあります。そうしたら、葉書で返信があり、その後も年賀状のやりとりが続きました。会社を辞め、そのことを葉書で知らせたら、その方が「勉強会に行きませんか」と誘ってきて、そこからいろいろとつながりができました。「研修の仕事があるので、講師をやってもらえませんか」という話が舞い込んできたのも、そこからです。

20代から30代は、学生時代の友達との付き合いや、結婚式などで社外の人と触れ合う機会は多いものです。それが、30代後半から40代になると、子供ができ、会社でも中核的な役割を担うようになったりすると、外部とのつながりはピタッと止まるのです。ですが、そこはあえて意識的に居場所づくりをすべきです。

趣味の集まりでも、そこからいろいろなつながりができてくることもあります。その居場所が気に入ったら、運営する側に回ってお手伝いしてみるなど、関与度を高めていくとチャンスが拡大します。

コロナ禍のせいで、対面で会う機会がなくなった時期がありましたが、逆にオンラインでいろいろな勉強会などが増えています。居場所へのアクセスは、かえって容易になっているはずです。臆せずチャレンジしてみてください。

「辞めたい」理由をすべて書き出すブレインダンプで整理する

ジョブホッパー(転職や仕事を頻繁に変える人)に陥りやすい方の特徴は、「会社を辞めたい」と湧き上がってきた感情だけで衝動的に行動を起こしてしまうことなのです。これではセカンドキャリアはうまくいきません。

1つすすめたいのが、そういう感情が起きたときに、「ブレインダンプ」をすることです。もとは谷澤潤さんという方が提唱したやり方です。「会社を辞めたい」「将来が不安だ」というぼんやりとした思いがあったとして、何が嫌で不安なのかというところを全部書き出してみるのです。

頭の中で「ああだ、こうだ」と考えるのではダメで、A3サイズの大きな紙にちゃんと書きます。それも、空き時間に片手間で書くのではなく、温泉宿とかビジネスホテルに籠って、「今日これしかやらない」の姿勢で取り組みます。

やってみると、「これが引っかかっていたのだな」「実はたいしたことではないんだな」というふうに、わかってくることが多いです。

それで見える化すると、「これだけ解決すればいい」「今は辞めてはいけない」「本当はこんなことをやりたかったんだ」といった気づきが得られます。自分もやってみて効果を体感しています。

ブレインダンプをした結果、「セカンドキャリアしかない」と実感すれば、本当に辞める方向へ進むわけです。逆に「子供の教育費はこれからもかかるから時期尚早」などと結論づけても、後悔めいた感情は出てきません。いずれにしても、曖昧な思いを持ったまま悶々とすることはなくなります。

ただし、仕事は体を壊してまでやるものではないと考えるべきです。今の職場に勤め続ければ、心身を病むことが確実な場合、これはもうセカンドキャリアを真剣に目指すべきです。健康でさえあれば、動けば必ずどうにかなるものです。歌舞伎の世界で、「舞台の上で死ねれば本望」という言葉がありますが、会社勤めでそれはいただけません。私も、仕事で無理がたたって、35歳のときに心筋梗塞で倒れました。体が、第一の資本である点は肝に銘じてください。

この記事を書いた人

I am 編集部
I am 編集部
「好きや得意」を仕事に――新しい働き方、自分らしい働き方を目指すバブル(の香りを少し知ってる)、ミレニアム、Z世代の女性3人の編集部です。これからは仕事の対価として給与をもらうだけでなく「自分の価値をお金に変える」という、「こんなことがあったらいいな!」を実現するためのナレッジを発信していきます。

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