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独立起業の先輩たちからノウハウを学ぶ#05〈研修講師・経営コンサルタント・ビジネス書作家・大杉潤さん/前編〉起業したい人必読! 1万2千冊以上のビジネス書を読破した書評ブロガーが「最高のメンター」と称えるビジネス書著者3人は?

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起業の先輩の経験からノウハウを学ぶシリーズ。今回はこれまでに1万2千冊以上のビジネス書を読破した経験を元に「定年ひとり起業」を提唱する元銀行員の大杉潤さん(65)から、あせらず50~60代まで会社員を続けながら、誰でも失敗せずに起業できる極意を学びます。ビジネス書の知られざる魅力とその活用法、そしてなんと、時間もお金もかけずにビジネス書を読んだのと同じ効果を得られるすごい裏技も教えてくれました。

華麗な経歴は「ビジネス書を実践しただけ」!?

大杉潤さんは日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)から、石原慎太郎都知事(当時)の肝いりで設立された新銀行東京などを経て、57歳のとき経営コンサルタントや講演、文筆業で独立しました。実はこの独立の方法に大きなノウハウが潜んでいるのですが、そちらは後編に回して、まずはビジネス書との「最高の付き合い方」を教えてもらいます。

先輩起業家Profile 大杉潤(おおすぎ・じゅん)
合同会社ノマド&ブランディング・チーフコンサルタント。日本興業銀行(現・みずほフィナンシャルグループ)に22年間勤務の後、東京都へ転職して新銀行東京の創業メンバーに。人材会社、グローバル製造業の人事責任者を経て、2015年に独立・起業してフリーランスに。新入社員の頃から年間300冊のビジネス書を40年間読み続けて約12,000冊を読破。2013年9月から毎日1冊ビジネス書を読んでブログに書評を書いて公開し、10年間継続して累計3,200冊以上のビジネス書の書評がブログに掲載されている。

「定年ひとり起業」シリーズなどの著作がある大杉さん。1日1冊ペースで読破するビジネス書から3200冊以上の要約をアップしているブログや、その中でも選りすぐりの本を紹介するYouTubeチャンネル、その音声を配信するstand.fmなどが人気です。定年後の生活設計や独立起業が注目される時代背景もあって、企業やカルチャーセンターからの研修・講演依頼、テレビへの出演も急増しています。

大杉さんは「私の人生は、ビジネス書を読みまくり、そこに書いてあることをそのまま実践してきただけです」と言い切ります。転職や起業も「尊敬する大前研一さんが著書『時間とムダの科学』で言っている、『自分自身を変えるには①住む場所、②付き合う人、③時間配分――の三つを変えるしかない』という言葉を実践した結果なんです」と言います。かなりの筋金入りです。

ビジネス書著者が紹介する「参考文献」に注目せよ

大杉さんがビジネス書を読み始めたのは、日本興業銀行に入行した新入社員の頃。当時は財務や会計、宅建(宅地建物取引士)など、仕事に必要な知識を学ぶために読んでいたのですが、人気作家の著作にも触れるうちにその奥深さにハマり、以来約42年間、毎月約5万円をビジネス書に投資してきました。

特に注目するのが、それぞれの本に示されている「参考文献」です。「著者がどのような本を読んで、どのような思考をした結果がこの本になったのか。この人の頭の中を知りたいと感じるようになりました。気に入った本の参考文献を読み、さらにそこに載っている参考文献をさらに読む。知識の世界がどんどん広がっていきました」

大杉さんの読書スタイルは、「気に入ったビジネス書作家の著作は、全て読む」ことだといいます。でも、失礼な言い方にはなりますが、同じ著者の本を読んでも言ってることはだいたい同じでは……?

「そう思われる方が多いんですよね。確かに、ある著者が本当に言いたいことは一つ、ワンメッセージという面はあります。本当に大事だから何度でも言う、ということですね。ただ、著者の思考は常に進化しています。肉付けや成功体験の実例といった部分がどんどん磨かれていく。著者が、前作の後どんな本を読んで今回の内容に至ったのか。自分も参考文献を読むことで、著者の思考を追体験することができるんです」

「最高のメンター」おすすめ著者ベスト3とは

「私にとってビジネス書の著者は、これからどんな本を読めばいいのかを教えてくれるメンターです。言い換えれば、お気に入りの著者というフィルターを通じて、次に読むべきビジネス書を探しているとも言えます」

そう話す大杉さんにとって、「最高のメンター」と言えるお気に入りのビジネス書著者を3人挙げてもらいました。

まずは、田中真澄さん。今でこそ誰もが口にする「人生100年時代」の考え方を先取りした「ジェロントロジー(老年学、老齢学)」をベースに、定年後までも見据えた働き方、生き方を説いてきたビジネス書界の大御所です。「90冊以上の著作を全て読みました。その参考文献も基本的に全て読んでいます。私にとって非常に大きな存在です」

2人目は、経営コンサルタントの大前研一さん。「大前さんのすごいところは、未来予測力です。たとえば『第4の波』という著作は、生前交友があった故・アルビン・トフラーの名著『第3の波』を受けて、トフラーが生きていたら……という発想で書かれたもの。その参考文献を読むことで、未来を的確に読む大前さんの思考に追いつけるのは快感です」

そして3人目は、NHKアナウンサーから転じて人気作家となった下重暁子さん。「下重さんは78歳でベストセラー『家族という病』を著しました。私自身も80歳までにベストセラーを書きたいと考えているので、人生の目標にしている存在でもあります」

ノウハウだけでなく生き方を教えてくれる教科書

メガバンクを振り出しに、石原都知事(当時)のもとで働いたり、サミットなどの国際会議を運営する会社で働いたりしてきた華麗な経歴も、「ビジネス書を実践しただけ」という大杉さん。ビジネス書は一般的に「ノウハウや知識を身につけるための実用書」というイメージが強いのですが、大杉さん流の活用法はちょっと違うようです。

「もちろん私自身も、初めての転職の時には履歴書の書き方や自己アピールのやりかたをビジネス書で学んだり、子どもが中学受験の時には中学受験の本を読んだりとノウハウを得たこともあります。ただ私はビジネス書はそれだけではなく『考え方の原理・原則』や『行動習慣』、『人生設計』を学ぶものと考えています。大きな意味で、『生き方』を学ぶものと言ってもいいと思います」

単なるマニュアル本ではなく、生き方を教えてくれる教科書。そう言われるとビジネス書を読みたくなりますが、「仕事が忙しくて、なかなか時間が取れないんだよなぁ」という人も多いはず。ましてや、大杉さんのように1日1冊、月5万円分もビジネス書を読破するなんて夢のまた夢……。

ブログを読めば「5分で1冊読了」したのと同じ?

でも大丈夫。そんな人の強い味方になるのが、大杉さんが10年間にわたり、3200冊以上のビジネス書の要約を書きためてきた「書評ブログ」です。ブログはどれも1500~2000字程度で、10分もあれば読める手軽なボリューム。それぞれの本で紹介されている参考図書も載っており、その参考文献もまたブログで紹介されていることがあるので、そちらも読めば次から次へとビジネス書のエッセンスを取り入れることができます。

とはいえ、最初の1冊に何を選ぶか迷っちゃうという人。あるいは、いきなりブログはさすがにチートな気がするので、まずは自分で読んでみたいという意欲あふれる人。そんなみなさんには、大杉さんが近著の「定年ひとり起業-生き方編」で、これまで読んだ1万2千冊以上のビジネス書から選りすぐった「珠玉のベスト15冊」を紹介してくれています。1万2千分の15ですから、説得力がものすごいです。 さて、メガバンクを振り出しに、最後はグローバル製造業の人事責任者を務めた大杉さんは、57歳にしてついに独立・起業します。でも、社長になったのは自分ではなく、奥さん。そこにも、ビジネス書から得た大きなノウハウが詰まっていました。詳しくは後編で。

【後編はこちら】

この記事を書いた人

華太郎
華太郎経済ライター
新聞社の経済記者や週刊誌の副編集長をやっていました。強み:好き嫌いがありません。弱み:節操がありません。

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