50代からは老眼鏡選びで仕事の効率が爆上がりする? 視力検査だけで約2時間。メガネオタクが作る老眼鏡とは?

老眼大国日本の老眼リテラシーが意外と低いことを知っているだろうか。 老眼の悩みは「見えない」だけでなく、集中力の低下、ミスの増加、思考力の鈍化など、趣味はもちろん仕事にも大きく影響する。 【写真】フレームで顔の大きさや印 […]
老眼大国日本の老眼リテラシーが意外と低いことを知っているだろうか。
老眼の悩みは「見えない」だけでなく、集中力の低下、ミスの増加、思考力の鈍化など、趣味はもちろん仕事にも大きく影響する。
目次
老眼大国日本にも関わらず、意識低め
公益社団法人 日本眼科医会によると、老眼は40代から始まるとされており、総人口の50%以上が50歳以上という日本は、まさに老眼大国だ。
「ゴルフボールを追えなくなった」「薄暗い美術館のキャプションが読めない」「おしゃれカフェのメニューが読みにくい」「読書が辛くなってきた」「趣味のハンドメイドが楽しめない」「細かいエクセルデータを見る気がしない」「報告資料を見るだけでうんざり」。
にもかかわらず、老眼のお助けアイテム遠近両用メガネをかけていない人は驚くほど多い。
「遠近両用レンズの普及率調査」によると、フランス70%、スペイン67%、ドイツ61%、アメリカ54%に対して、日本はわずか44%という結果だった(ニコン・エシロールによる消費者調査 n=556、対象:45歳以上の日本在住メガネ保有者(対象者の80%が50歳以上)、調査期間:2023年6月30日~7月6日、調査方法:インターネットリサーチ)。
最も普及率の高いフランスと日本の50歳以上の人口比率を比較すると、日本の方が圧倒的に高齢者人口比率が高いにもかかわらず、老眼に対する意識は低いことが明らかだ。

人口推計(2025年(令和7年)2月概算値)/総務省統計局2025年2月20日公表)より作成
“デカ文字スマホ”は嫌だ
筆者も50代に入って急激に老眼が進み、スマホでメールの肝心なことを読み飛ばす、アプリの操作に時間がかかる、入力ミスが増えるなど、日々老化を感じている。
スマホのフォントサイズを一番大きくすれば見えやすくなるが、“デカ文字スマホ”を使うことへの抵抗感も少なからずある。
メガネを替えるだけで、集中力が高まり、仕事の効率が向上するのであれば、時間とコストをかけてでも「自分の眼に合った」メガネを作ることはむしろ効率的なのではないか。
メガネオタクによる視力検査とは?

「見えるようになった」「かけ心地が抜群」「疲れない」。知る人ぞ知るメガネ店があると聞き、訪れたのが「72eye works」。
オーナーの辻村正幸氏は大手メガネ店で鼈甲や18Kの高額品のメガネ加工から眼科内での視力測定業務まで、メガネ一筋38年という筋金入りのメガネ職人である。自身がバイク乗りであることから、ヘルメット用のオリジナルメガネを開発するなど、メガネオタクとしても界隈では有名人だという。
メガネ作りの秘訣は以下の3つだという。
①視力測定
②フレーム選び
③レンズ選択
視力検査に1時間以上

この店は完全予約制。視力測定とフィッティングだけで2時間を要するのだ。
覗き穴から気球を見るオートレフ検査、Cの切れ目の方向を答える視力検査、赤と緑の背景で見やすさを確認する赤緑バランス検査、点群による乱視検査。一般的な量販店ではこの辺りで終わるだろう。
しかし、これはほんの序の口だった。
ここから別室に移動して、動体視力計や深視力計による検査が行われる。この部屋にはなぜか人工芝が敷き詰められ、ゴルフバッグが置いてある。ちなみに72eye worksという店名はゴルフのハーフのパー数から取ったそうだ。ゴルファーの眼の悩みに寄り添うためにこれらの検査機器も用意しているとのこと。
縦方向動体視力は前方からの反応に必要な能力で、自分の目の前に近づいてくるものを把握し、見極める視力。
深視力は奥行きや距離感、遠近感を見分ける能力。簡単に言うと、野球のフライボールをキャッチしたりするためにも必要な能力で、運転においては車間距離やブレーキのタイミング、大型免許の更新時にも検査される。実は車で衝突事故を起こす人はこの深視力が弱いそうだ。
これまで何度も視力検査は行ってきたが、初めての体験に大騒ぎ。

次は70インチほどの大型モニターで行うV-TRAINING。これはスポーツビジョン研究に基づく測定とトレーニングプログラムだ。大型モニターに映し出されるさまざまな映像に反応することで眼の能力を測定する。
「細かい問診や多項目の測定で現状の生活スタイルに合わせたレンズ設計や適切な度数の眼鏡のご提案をしました」と辻村氏。
高校3年生から近視でメガネやコンタクトレンズを使用。裸眼で視力0.03と乱視に悩み、40歳でレーシック手術を受け、数年たったら今度は老眼。
常にメガネを作り替えてきたが、こんなに丁寧な検査は初めてだ。いったい今までの検査は何だったのか。
ここからようやくレンズ調整が始まった。
老眼鏡のトレンドとは?
辻村氏によれば「最近は、見る距離に合わせてメガネを使い分けるのがトレンドです」とのこと。
- デスク周りで使う:近近(近距離~近距離)
- 室内で使用する:中近(中距離~近距離)
- 屋外で使用する:遠近(遠距離~近距離)
とはいえ、3本もメガネを持ち歩くのは現実的ではなく、メガネを3本も購入するにはコストもかかりすぎる。物価高騰の折、メガネにそこまで予算を割ける人は多くないだろう。
そんな心の声が届いたのか、辻村氏は「一番、不便を感じるところを改善しましょう」と提案してくれた。
なるほど、今でも生活はできている。ここで考えるべきは「何を改善したいか?」または「どうなりたいか?」だ。
私の場合、長ければ10時間以上パソコンに向かって仕事をしている。80cm先に設置した26インチのPCモニターと手元の書籍やノートを交互に見る作業が圧倒的に多い。モニターは見えるものの、手元の小さな文字が見えにくく、仕事の効率性がどうしても低下する。
細かい問診や多項目の測定で現状の生活スタイルに合わせたレンズ設計や適切な度数の眼鏡のご提案をしました。』
どいうことで、手元から80cmまでを見やすくするための視力検査とレンズ調整がようやく終わった。
見るだけじゃない小顔効果も
ようやくフレーム選びに移る。Anne et Valentinや999.9など、量販店では手に入らないアイテムが多くある。
「石田ゆり子さんや芦田愛菜さんが使用したことで人気のブランドもあります。それを求めていらっしゃる方も多いですね」と辻村氏。
「顔を見たら、似合うフレームがどれかすぐにわかります」と胸を張る辻村氏。
「とりあえず小顔効果でお願いします。さらに、賢そうに見えるものを」とお願いすると、いくつかのフレームを選んでくれた。
「ほかにも試してみてください」と促され、何本も試着。
最終的に選んだのはセルロイドのフレームだ。自分では絶対に選ばないデザインだったが、セルロイドというレトロな響きと「今では貴重価値」という言葉が決め手となった。かつてはメガネによく使われていたそうだが、今ではほとんど生産されていないとのこと。
「セルロイドならではの透明感と艶感がいいですね」と辻村氏。
小顔効果は若干劣るものの、自分の机周りで使用するため問題ないと思っていたところ、Zoomミーティングでも使用することに気づき、小顔効果を優先すべきだったと後悔した。
これを読んでいる方は、ぜひフレーム選びの参考にしてほしい。
憧れのニコンレンズの実力は?
フレームも決まり達成感を味わっていると、最終段階のレンズ選びが待ち受けていた。
これまでレンズは「追加料金なし」か「追加料金あり」の2択だった。しかしここではまず、メーカー選びから始まり、次にシリーズを選び、さらにオプションを選ぶという流れだ。
通常のメガネショップでもニコンレンズを扱っているが、72 eye worksはニコンのレンズウェアパートナー。レンズに熟知した認定店のみが扱えるレンズがある。
ニコンといえばカメラだが、「ニコンはレンズ」でもあるのだ。そのニコンのレンズのメガネなら、さぞかしよく見えるだろうと期待は膨らむ。
2024年に発売された最新のZシリーズ。“カメラのニコン”から誕生した、カメラの開発技術を搭載した新しい老眼対策レンズ。簡単に言うとコントラスト向上させると同時に遠近両用メガネの老眼部分の視野が従来に比べて47%も広いのが最大の特徴だ。
よく手元を見るためにメガネを動かしてピントを合わせることがあるが、このレンズはすっと目線を下げると手元が自然に見える。そんな使用感だ。
オプションはブルーライトカットや紫外線カットなど、6種類ほどあったが、すべてを網羅した最新コーティングSNRV(シーコート ネクスト・リヴィール)にした。高感度サポートコーティングなど、薄暗い場所でのカラーとコントラストの知覚能力を高める効果などもあるらしい。
実際に紫外線を当てるとほぼ100%目に有害な紫外線を通さないことがわかる。さらに後方からの紫外線の跳ね返りも防いでくれる。
近年の紫外線量は増加の一途をたどっており、白内障や老眼の原因になるとも言われている(すでに老眼だが)。40代を超えたら肌だけでなく、眼の紫外線対策も必須だろう。
職人技で「体の一部」を目指すフィッティング

「ようやく終わった!」と思ったら、ここからフィッティングが始まる。
メガネオタクによるフィッティングは想像をはるかに超えるものだった。
「顔の形はほとんどの場合、左右対称ではありません。耳の位置も左右で微妙に異なりますし、頬骨の高さも違います。それに合わせてメガネも完全にフィットするように微調整していかなければならないんです」
私の場合、耳の高さが左右で異なる。さらに右目の眼球突出があるため、立体的に歪んでいるのだ。したがって、フレームも捻れ構造にフィッティングする必要がある。
かけては数ミリ単位で曲げる−それを何度も繰り返す。
眼球とレンズの距離、レンズの中央と眼球の位置、上から見た時、横から見た時など、専用のアプリを使って厳密な数値を測定する。最終的にはヘッドバンキングをしても動かないほどにフィットした。
安いメガネと高いメガネの違いとは?
気になるお値段だが、フレームとニコンレンズのZシリーズにフルオプションをつけて1本10万円程度。
「現在のメガネを取り巻く環境は、時間と手間を圧縮することでコストの削減を図る方向に向いています」と辻村氏。
スピード検査、スピード仕上がり、低価格を取るかは財布との相談になるが、365日酷使する眼だからこそ、疲れない、よく見えるメガネを手に入れるのも選択肢の一つかもしれない。
ちなみにメガネは2~3年に一度は作り直した方がいいとのこと。ただし、自分の顔と頭の形にフィットしたフレームはそのまま使えるので、レンズの交換だけで良質なものを長く使うことは可能だ。
鼈甲やチタンなどのフレーム素材は、長く使うことで自分に馴染み、自分のキャラクターの一部になってくれるかもしれない。
ギャランティーカードを手渡しながら、じっと筆者の顔を見つめながら辻村氏がぼそり「やっぱり、歪んでますね」。
そう、筆者の自前のメガネが気になって仕方がなかったようだ。「僕はかなりフレーム曲げたり、ねじったりするので、それに耐えられる自分でセレクトしたメガネしか扱いません」と言いつつ、我慢できなかったのかし直してくれた。
2週間後、出来上がったメガネを受け取りに行く。
実際に専用レンズが入ったメガネで視力検査と最終的なフィッティング。メガネの引き取りを手渡しにこだわる理由がわかった。
「人によってはその日によって視力が違うこともあります。また、飲んでる薬などによっても影響されることもあるんです」
メガネは作って終わりではなく、作ってからが始まりという。毎日使うものだからこそ、フレームのフィッティングや視力検査など、アフターフォローに力を入れている。
また、同店では作った眼鏡に見えずらさがある場合は、見え心地に満足するまで作り直すことができる見え心地保証を設けている。
文/長谷川恵子
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この記事を書いた人

- 「好きや得意」を仕事に――新しい働き方、自分らしい働き方を目指すバブル(の香りを少し知ってる)、ミレニアム、Z世代の女性3人の編集部です。これからは仕事の対価として給与をもらうだけでなく「自分の価値をお金に変える」という、「こんなことがあったらいいな!」を実現するためのナレッジを発信していきます。