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「スポーツが体にいい」は迷信だった? 運動するより「頭」を使って老化防止を

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暴走老人

高齢者になるとなぜ人は「暴走老人」になりやすいのでしょうか? 和田秀樹氏の著書『50歳の分岐点~差がつく「思秋期」の過ごし方』(大和書房刊)から脳の老化防止をする方法について学びます。

和田秀樹

プロフィール

高齢者専門の精神科医和田秀樹

精神科医、ルネクリニック東京院院長、立命館大学生命科学特任教授、川崎幸病院精神科顧問、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック院長など。著書に『75歳からやめて幸せになること』(大和書房)や『アドラー流「自分から勉強する子」の親の言葉』(大和書房)などがある。

「スポーツが体にいい」とせっせとスポーツジムに通い、老後に備えて体を鍛える人は多いもの。しかし、実は人の老化は感情を司る前頭葉から先に始まります。ですから、50代のうちに前頭葉を鍛えておかないと、老後に感情のコントロールができない暴走老人になるリスクが高まります。

和田秀樹氏の『50歳の分岐点~差がつく「思秋期」の過ごし方』(大和書房刊)は、脳の老化防止について、著者自身の高齢期専門医、心の専門医としての経験より解説。50代が将来、暴走老人になるのを避けるにはどのようなことに気をつけたらいいのでしょうか?

なぜ人は「暴走老人」になってしまうのか?

 みなさんも病院や銀行で、突然キレてスタッフにクレームを言う暴走老人を見たことはないでしょうか? たとえば脳の働きが衰えた認知症の高齢者は、おむつ交換や着替えの際、突然看護師を蹴ることもあるそうです。

 人が暴走老人になってしまうのは感情をコントロールする前頭葉が老化し、他人の話を聞けなくなってしまうことが原因である、と和田氏は言います。前頭葉は、新しいことにチャレンジする意欲や新しいものを生み出す発想力、違う考え方に対する柔軟性、感情の切り替えなどをもたらします。

 前頭葉が老化すると、新しいものごとへの対処が苦手となり、意欲や好奇心も衰え、感情のコントロールができなくなってしまうことも。そのため前頭葉の衰えが顕著になると、暴走老人になるリスクが高まります。

例えば、40~50代でも以下のような場合、前頭葉が萎縮し衰えている兆候があります。

・新しい場所に出かけるのが億劫になる
・新しい料理を食べに行くのに気がすすまない
・新しい意見に耳を傾けたくない
・突発的なアクシデントに臨機応変に対応できない

認知症予防の点からも、今のうちに新しいことにチャレンジして前頭葉を鍛え、老化を防ぐようにしましょう。

「スポーツが体にいい」は迷信?

  一般的には、体を動かしたほうが健康にいいとされています。しかし和田氏はスポーツについて、以下のように述べています。

「歩く、座る、家事をするといった日常の動作に対して言えることであり、わざわざスポーツをするというふうに捉えるべきではないと思っている」

 むしろハードなスポーツをすることは、害になることもあるそうです。それには、まず活性酸素がどんなものかを知っておきましょう。

 私たちは呼吸をするとき、酸素を吸って糖と脂肪を燃やし、活性酸素を生み出します。活性酸素は、対になる電子を他からもぎとって得ようとするため、細胞が傷つきます。ハードなスポーツをすると、普通に呼吸している以上に大量に活性酸素が発生。その結果、体を錆びつかせて、老化を進行させる原因となってしまうのです。

 趣味としてスポーツを行うなら問題はありませんが、健康のために、毎日スポーツをするのは、必ずしも体にいいわけではありません。活性酸素が増えない程度に家事や散歩などを行うだけで、50代は十分であると覚えておきましょう。

体を動かすより「頭」を使い、前頭葉の老化を防ぐ

 では、前頭葉を若く保つにはどのようにすればいいのでしょうか? 50代はスポーツで体を動かすことよりも「頭」を使うべきである、と和田氏は言います。体だけを鍛えても前頭葉が老化すると、意欲が低下し見た目も老けてしまいます。一方、前頭葉が若い人は意欲もあるため、体を動かすことが苦ではありません。表情も生き生きとし、生活が充実しています。

 そこで、和田氏が提案するのが前頭葉の活性化。新しい知識を詰め込むのではなく、アウトプットと理解重視の勉強法です。この方法によって、知識が整理され、人から尊敬も集めやすくなります。新たに覚えるのではなく、これまでに覚えた知識をアウトプットします。

 さらに、和田氏がおすすめする勉強方法が「弁護士になること」。司法試験を受けるという意味ではなく、ニュースで知ったネタを弁護士のように分析する方法です。

 例えば、以下のように悪者扱いされている人物について、自分なりに考えてみます。
「この人、こんなに非難されているけど、それで助かっている人はいないかな?」
「この人が犯人だと報道されているけど、本当か?」

 上記のように異論・反論について考えると、前頭葉が刺激され、思考のトレーニングになると言います。また、他者の立場になって考えるため、EQのトレーニングにも。EQとは、「心の知能指数」とも呼ばれ、EQが高い人は感情のコントロールが容易であるとされています。EQも前頭葉が関係しているため、鍛えておかないと低下してしまうのです。

 ぜひ日々の生活で「頭」を使い、前頭葉の老化を防ぎましょう。感情のコントロールの訓練にもなり、将来、暴走老人になるのも予防できます。

 この記事では、和田秀樹氏の『50歳の分岐点~差がつく「思秋期」の過ごし方』から、脳の老化防止について要約・抜粋してご紹介しました。

この記事を書いた人

今崎ひとみ
今崎ひとみIT人文好きライター
うさぎと北欧を愛するライター。元Webデザイナー。インタビュー取材やコラムを執筆。強み:好奇心旺盛なところ。失敗してもへこたれないところ。弱み:事務作業が苦手。確定申告の時期はブルーに。

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