Interview
インタビュー

約7割の大人が見落としている、50代キャリアの「自分の価値」の見つけ方

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2018年から東京理科大学オープンカレッジ「アイデアを生み出すための技術」講師を担当し、著書『言葉でアイデアをつくる』を発売。元電通のコピーライター仁藤安久さんが考える、自分に新たな価値を見出し、新たな場所で輝くための「アイデア」とは。

プロフィール

クリエイティブディレクター仁藤安久

株式会社Que 取締役
クリエイティブディレクター/コピーライター
1979年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了後、2004年電通入社。コピーライターとして、三越伊勢丹、森ビルなどを担当。2017年、電通を退社、ブランドコンサルティングファームである株式会社Que設立に参画。2018年から東京理科大学オープンカレッジ「アイデアを生み出すための技術」講師を担当。著書に『言葉でアイデアをつくる。』がある。

Iamのメイン読者である50代が、転職やセカンドキャリアを考えるとき、「わたしは潰しがきかない」「今の仕事以外にできることがない」と悩まれる方が多い印象があります。

自分に新たな価値を見出したり、自分の今のスキルでセカンドキャリアを成功させるためにできることは何でしょうか。

東京理科大学のオープンカレッジで「アイデアを生み出すための技術」について講義をされている仁藤安久さんに、自分の価値を発掘するアイデアについて伺いました。

管理職の悩みは「アイデアが出ない」こと

僕は、東京理科大学のオープンカレッジで「アイデアを生み出すための技術」を伝えていますが、メインできている方は中間管理職の方が多いです。

部下だったり自分たちのチームでメンバーからアイデアを出してもらって、新しいことを始めたり、職場を改善していきたいと思っていても、アイデア出しが盛り上がらなくてシーンとしたり、出てくるアイデアがそもそもつまらなくて……と悩まれている。もう一つは、自分自身がアイデアを出せる人間ではなく、若い人以上に尻込みしてしまうということなのです。

わたしはアイデアをつくることを生業としていますが、このアイデアを通して40代、50代のキャリアについて考えたいと思います。

まずは自己紹介にアイデアを取り入れる

わたしが講義でアイスブレイクとして最初にやっていただいているのが、自分に「自分に●●マスターとつけて自己紹介する」ということ。「観葉植物マスター」「猫マスター」でも何でもいいのですが、自分のことを「●●マスター」と名付けていただき、自己紹介をしてもらいます。そうすると、結構盛り上がります。

ここで終わらず、次に、もう一度、今度は別の「●●マスター」として、自己紹介してもらいます。先ほど観葉植物マスターと名付けたなら、今度はエクセル処理マスターというように、最初にプライベートなタイトルをつけたのであれば、次はビジネス的な方向から、最初が真面目なタイトルであったら今度は面白みのあるタイトルで、自分を全然違う視点で見直すのが鍵です。

2回の自己紹介を終えたら、講座受講生に対して「1回目の自己紹介と、2回目の自己紹介、どっちの人と友達になりたいですか」と尋ねます。そうすると、多くの場合約7割の人が「2回目の方が友達になりたい」と答えるのです。

1回目でわたしは「友達になりたいと思われるようなものをベストで出してください」と伝えているので、受講生も本気で「自分」を表現できるベストなものをチョイスしているはずなのですが、2回目の方が愛すべきキャラになっている。

それはどうしてなのかというと、1回目の方が、緊張もありますし、よく見せようと思っていたりもします。だから、自分が言いたいことをとにかく伝えようとしてしまっていたりするわけです。2回目の方が、心にも余裕が出てきていて「どうすれば相手に自分のことが伝わるか」を考える余裕がある、ということなのです。

デロンギのオイルヒーターに学ぶキャリア構築

ここで、50代からのセカンドキャリアについて考えていきましょう。

わたし自身、広告の仕事を長くやってきて改めて思うのは、言葉によってものをどういうふうに売るか、どうそのブランドを好きになってもらえるか。置かれる立場やターゲットによって、ものすごく必要とされたり、全く必要とされなかったりします。

例えば、デロンギのオイルヒーター。ものすごく暖かくなるわけではないヒーターだったので、最初は全然売れなかった。でも、「一晩中つけていても空気が乾燥しない寝室用のヒーターです。火事の心配もありません」と銘打ったところ、爆発的に売れた、という話があります。

ターゲットを明確にし、適切な言葉でプレゼンをしたわけです。

素材は同じ。でも、誰にどう伝えるか、どこに置くことで活躍できて、喜ばれるのか。

これは、自分自身のキャリアを考えるときも同じことが言えますよね。

今の自分の価値をどこでどう見せるか

ただ、今いる場所、今の自分が定義してしまった自分で新たな道を考えようとしても、「自分には何もできないから」と縮こまってしまうなどして、自分が輝ける場所が見えてきません。

「●●マスター」をいくつも考えてプレゼンしてみることで、自分をある価値観を元に自己定義してみることができます。そうすると、「この場所における自分の価値は何か」に気づくことができます。

例えば「このコミュニティでこういう言い方ができる人はすごく大事にされる」とか、「この人はこの職場にいると生きづらいけれど、こっちの場所にいるとものすごくイキイキと輝ける」ということが見えてくると思います。

もし、今の自分をこれからどう活用すれば良い転職ができるかわからないと思っているとしたら、おすすめなのは、自分の仕事について、同業種じゃない人に60分の授業をやってみるということです。

誰かに60分「自分の授業」をしてみる

もちろん、実際に授業をする機会はないかもしれませんが、同業ではない人に、あなたの仕事を伝える60分の授業を行いそれに対してお金を払ってもいいと思えるように仕立てるとしたら、何を話すのかを考えてみてほしいのです。

どんな仕事でも、知らず知らずのうちに身につけた知識やスキルがあるはずで、それを初めて体験する人に説明すると結構なボリュームの授業が作れるはずなのです。そして、今まで自分がやってきたことに価値を見出すこともできます。

同じ仕事をこれまでずっとやってきた方の多くが「わたしがやっていることには全然価値がないんです」と言われますが、「仕事の中でミスがないようにどう工夫しているのか」などを棚卸してみると、多分野に応用可能な技術であったり、違う領域の人たちに価値のあるスキルであったりします。

自分の価値は棚卸しをしないと見えてこない

例えば「数字の間違いを確認し、書類に間違いがないようにするのが得意」であれば、そのスキルが活用できる世界は、経理や事務だけでなく、ITの分野であったり、校閲の仕事であったり、きっと多数見つかるはずです。

自己評価も上がって、自分にはスキルがあると思えたとしたら、それを、会社の中でアイデアとして売り込んだり、セカンドキャリアにつなげるために、同じ業種や仕事ではなく新たな分野を開拓したりすることもできるようになるのではないでしょうか。

この記事を書いた人

MARU
MARU編集・ライティング
猫を愛する物書き。独立して20年。文章で大事にしているのはリズム感。人生の選択の基準は、楽しいか、面白いかどうか。強み:ノンジャンルで媒体を問わずに書けること、編集もできること。弱み:大雑把で細かい作業が苦手。

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