あなたは「覚えられる人」ですか? 爪痕を残せるキャリア女性が身につけている3つのスキル
ビジネス相手の記憶に爪痕を残す人と、忘れられてしまう人の明確な違いとは?スピーチコンサルタントの矢野香さんにくわしくお聞きします。
プロフィール
長崎大学准教授、スピーチコンサルタント矢野香
ビジネスでは「相手の記憶に残るかどうか」が成果を左右します。プレゼン、会議、コミュニケーションなどで「話す立場」におかれるキャリア女性が「爪痕を残す話し方」をできるようになるために、長崎大学准教授・スピーチコンサルタントの矢野香氏に3つのスキルを教わります。
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スピーチコンサルタントの矢野香です。「話し方」はコミュニケーション能力であると同時に「ビジネススキル」です。キャリア女性が「爪痕を残す話し方」をするにはどうしたらいいのかをお伝えします。
目次
爪痕を残せるのはどんな女性?
「周りから浮かず、笑顔を絶やさず、誰からも嫌われない人」。無意識のうちに、このような好印象を目指している方も多いのではないでしょうか。しかし、好感度が高い人とは、いいかえれば無難な人。相手の記憶には残りません。そんな人は世の中に大勢います。
ビジネスにおいては、好感度よりも相手の印象に残るかどうかが成果に直結します。個人事業主や起業家の方は、自分を覚えてもらわないと契約につながりません。会社や組織でも、チーム内で存在感を示せないと、望む成果にたどりつくまで遠回りになってしまいます。
では、爪痕を残せる人とはどんな女性なのでしょうか。
ひとつは、視覚を味方につけている女性だといえるでしょう。私事になりますが、NHK時代には、万人受けしそうなベージュのスーツを数多く着ていました。パーソナルカラー理論で「似合う色」と診断された色だったからです。視聴者が求めているであろう「NHKキャスターらしさ」という好印象を表現するためでした。
ところが、初めての著書を出版することになり、個人の「矢野香」を覚えてもらう必要性が出てきました。その時にとった戦略のひとつが、服で自分のアイコンをつくることでした。
キャッチフレーズなど言葉で印象に残すのは難易度が高い方法です。「今でしょ!」のセリフで知られる林修先生のレベルにならないとなかなか覚えてもらえません。それに対して視覚は、聴覚に比べ人の印象に残りやすいと心理学の実験でも実証されています。
そこで、スタイリストやイメージコンサルタントといったプロフェッショナルと相談しながら「襟元にホワイトのラインがある、紺色のスーツを着ている人」という視覚のアイコンを作りました。同じ服を13着用意し、6年間着続けました。
おかげさまで、「矢野香と言えば紺のスーツ」と覚えていただくことができました。爪痕を残せるかどうかのポイントは一貫性にあります。ビジネス相手に「やっぱり○○さんだ」という安心感を持ってもらうのです。
スキル1:視覚を記憶のフックに使う
視覚の中でも変えるのが一番簡単で、楽しみでもあるのがファッション。記憶のフックになる役割も持っています。
たとえば、「コーチングをしてくれる人、誰かいないかな?」と話題になったとします。
大勢の同業他者の中で思い出してもらうには、自分が誰に向けて仕事をしているのか、わかりやすい視覚表現をしていることが大事です。キャリアアップしたいと思っている人がターゲットなのに、コーチが花柄のふわふわした服を着ていたら違和感があります。
同じコーチングでも、キャリアアップといえば○○さん、夫婦問題といえば○○さんなど専門に合わせて思い出してもらえるよう視覚による種まきをしておきましょう。
まったく同じ服を着続けることが難しいときは、白、紺、赤など同じ色を着続けることもアイコンになります。ただし、心理学では、人の印象が定着するには最短10か月かかるといわれています。せめて1年はアイコンにした服や色は変えないようにしましょう。
企業中長期計画を立てるように、個人の中長期計画と思って取り組んでみてください。もちろん、プライベートでは好きな服を着て自由にファションを楽しむことは問題ありません。
スキル2:「自分が誰なのか」を明確にする
独立起業したい、組織のなかで存在感を出したいというときは、自分が誰なのかを明確に伝えることが必須です。ビジネス場面における人間関係では、「何を言ったか」より、「どのように言ったか」が大事。そしてさらには、「誰がいったか」が大事だからです。
「何を言ったか」は、どのような話を、どのような言葉で語ったのかという言語表現。
「どのように言ったか」は非言語表現である見た目(表情、ジェスチャー、ファッション)や声などが、どのような印象として相手に伝わっているのか。
そして「誰が言ったか」は発言したあなたが何者なのか、です。
「何を言ったか」より「どのように言ったか」を気にするのは、多かれ少なかれ誰もがやっていること。言語より非言語表現の方が、相手の印象に影響を与えやすいことが心理学の実験でも多数報告されています。
しかし、好印象だけに終わらない、爪痕を残す女性を目指すのであれば、「何を言ったか」より「どのように言ったか」より、さらに進んで「誰が言ったか」を意識していただきたいのです。
同じ内容を伝えているのに、あの人の話は響かないけれどこの人に言われると感動してしまうということがあります。それは、「自分が何者であるか」を伝えられているかどうかの違いです。
あなたは、相手に対してどういうメリットを与えることができる人物なのか。自分の存在価値を明確に表現できていますか。
スキル3:「私は○○です」と宣言する
爪痕を残す女性は、「自分が何者であるか」をはっきりと自覚しています。
自分の強みや価値観、自分はどのような点で他者に貢献できるかについて、自己分析ができているのです。それがわかっているからこそ、戦略をたてることもできます。とくに利害関係が明確なビジネス場面においては、自分を何者として相手に表現しているかは他者と自分を差別化する重要なポイントになります。
「自分が何者であるか」を表現するために、よりわかりやすい表情、ジェスチャー、ファッションといった「見た目」や声をコントロールします。さらに、よく話す言葉=自分のキャッチコピーと一致させます。とくに言語と非言語の表現に一貫性があるかどうかで信頼できるかどうかが左右されます。
「自分が何者であるか」を相手に伝えようとするからこそ、見た目や言葉といった一挙手一投足に説得力と力強さがあふれ、爪痕を残せるようになるのです。
そんな女性になるには、まず「私はこういう者です」「こういう点であなたに貢献できます」と宣言しましょう。他人の許可は必要ありません。自分で許可を出した瞬間から何者かであるあなたが誕生します。
非言語情報の表情、ジェスチャー、ファッションをコントロールする方法や、キャッチコピーの作り方は、連載でご紹介しています。ぜひご一読ください。
写真/Canva
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この記事を書いた人
- 「好きや得意」を仕事に――新しい働き方、自分らしい働き方を目指すバブル(の香りを少し知ってる)、ミレニアム、Z世代の女性3人の編集部です。これからは仕事の対価として給与をもらうだけでなく「自分の価値をお金に変える」という、「こんなことがあったらいいな!」を実現するためのナレッジを発信していきます。
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