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「親子副業」することで、我が子から尊敬されるだけでなく、不登校の課題解決にも

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本業を持ちながら会社を設立し、自分の子供と一緒にビジネスを展開する「親子副業」が話題です。そのメリットと始め方について考案者にうかがいました。

プロフィール

親子副業プロデューサー野田拓也

のだたくや 株式会社バビロニア代表取締役。親子副業プロデューサー。コロナ禍の最中、中学生の息子と一緒に株式会社バビロニアを設立。息子は取締役社長として就任。

親子で会社を立ち上げ、それを副業にする「親子副業」が最近注目されています。

名付け親は、野田拓也さん。コロナ禍で、中学生の息子が休校になったのがきっかけとなり、(株)バビロニアを設立。自身は代表取締役、息子は取締役社長に就任し、小中学生向けのお金のオンライン教室を創業し、軌道に乗せました。

親子副業には、ふつうの副業にはない特徴やメリットがあるそうです。また、これから親子副業を始めたいという方へのアドバイスなどについても、野田さんに解説いただきました。

自己肯定感が低かった子供に変化が

親子副業をやってみて、大きなメリットと感じたのは、収入よりもむしろ精神的な変化です。

息子は、副業を始める前は、同級生と馴染めなくて、家で1人きりのことが多く、自己肯定感が低かったのです。それが社長になって、ビジネスの経験を積んでいく中で、対人関係で物怖じしなくなり、自己肯定感も上がっていきました。

コロナの緊急事態宣言が解除されて、学校が始まってすぐ、学級委員に立候補して見事選ばれるほどでした。会計の知識など、実務的なノウハウも身についていきますが、精神的な成長も見えるのが、通常の副業と違うところでしょう。

また、親子副業を通して、親である私にも変化が生じました。

会社員生活で平和ボケした親も子供の手前……

私は、約26年間会社員一筋で、60歳まで勤め上げるつもりでした。起業するなんてこれっぽっちも思っていませんでした。金融会社のシステムエンジニアとして、社内のシステムを作ったりはしましたが、新規事業立ち上げはもちろん、営業経験すらもありませんでした。

でも、息子とビジネスを立ち上げたことで、自分も新しい世界を知り、学び、成長を感じました。自分1人だったら、「別に稼げなくても生活に困るわけでもないし」と三日坊主になっていたかもしれません。でも、子供がいる手前、さぼらず一生懸命やらざるを得ないというのもありました。

私の仕事が終わる夕方6時ぐらいから晩御飯の始まる7時ぐらいの1時間を、息子との定例ミーティングにしています。仕事のことだけでなく、時事問題とか、いろんなことを話しますが、それで親子の会話がすごく増えました。

こうして親子関係も、すごく良くなりましたし、子供からすごく尊敬されるのは、正直うれしいですね。

広がりを見せる「親子副業」

私の取り組みに刺激を受け、親子副業を始めた人が何人もいます。

例えば、最近法人を設立された方がいて、お父さんが社長、高校生の息子さんが取締役です。お母さんは、当初は副業には反対だったのです。が、私が主催した「親子副業アイデアコンテスト」に応募され、父と息子が食卓で一緒にビジネスのことを考えているのを見て、心変わりされました。今はお母さんも取締役に名を連ねています。事業内容はコーチングだそうです。

もう一人は、3月に法人を設立したばかりの方。もともとお子さんたちが、絵を書いたり、工作をしたりするのが好きで、NFTアートとして販売活動をしていました。それをもっときちんとビジネスにしようと会社にしました。中学生のお兄ちゃんが社長で、小学生の妹さんが副社長の株式会社です。作品を売るだけでなく、イベントに呼ばれて、そこでパフォーマンスもしています。

不登校生や少子高齢化の課題解決の一助として

不登校のお子さんを持つ親御さんが、親子副業に挑戦している例が多いのも特徴の1つです。

「親子副業アイデアコンテスト」でも、応募者の3分の1ぐらいがそれに当てはまりました。昔と違って、不登校の子を引っ張ってでも学校に連れていく風潮は今はありません。とは言っても、将来食べていかなくてはいけないし、家にこもっている間は、学校の勉強とは違った学びをさせたいという親御さんは少なくないようです。

でも、親子副業なら一緒にやってあげられるし、得意なことや好きなことも見つかるのではないかと始めるのですね。私としては想定外だったのですけれど、今の時代において何か1つの受け皿になる可能性があると感じています。

また、親子副業が、少子高齢化対策の一助になるのではないかとも思っています。親にとってはこれが、自分のセカンドキャリアになって、現役世代に支えられずにすむ。子供にとっては、自分の生活を支え、社会を支える力として貢献できます。各世代が活躍できる仕組みだと思います。

子供のモチベーションを知るのが親子副業の第一歩

この記事を読まれて、「自分も親子副業を始めようかな」と思った方もいらっしゃるかもしれません。著書『親子副業』に詳しく書いていますが、ここでは最初にやっておくべきポイントをかいつまんで話します。

まず、子供のモチベーションがどこにあるかを把握するのが、一番大事です。親御さんがいくらやりたいと思っても、子供が乗ってきてくれなかったら前進しません。

私の息子は、かっこいいと思われたい、もてたいという願望が強かったのですね。それで私は、「中学生で社長なら、かっこいいし、もてるよ」と、気持ちを上げていきました。そして、周りの大人から「すごいね」と言ってもらえることが嬉しいようで、それもモチベーションになっています。

他の例では、小学生の娘さんが学校で海洋プラスチック問題を教わり、将来は魚よりもプラゴミの方が多くなると聞いて、何かできないかなと思ったそうです。実際に海に行って、プラスチックのゴミを拾って、それでアート作品やアクセサリーを作り、親子副業でネット販売した方もいます。

人の役に立ちたい、人を楽しませたい、社会に貢献したい、好きなことがあるという子供の気持ちが、モチベーションの源になります。そこを見定めるのが、最初にすべきことです。

ポイントの二つめは、お父さん・お母さんの得意なことや好きなことで、お子さんの嗜好と世の中にニーズに合致するものを見極めることです。それらをうまく組み合わせて、ビジネスにならないかよく考えてみましょう。

最後は、社会貢献につなげるという意識を持つことです。大人になってから一人で起業すると、とにかく食べていくためにお金を稼ぐことが最優先になって、社会貢献という意識は遠のいてしまいがちです。対して親子副業では、社会に貢献したら、それが対価となってお金になるプロセスを、子供に見せられる余裕があります。それに、親子でやる副業は、ビジネスといっても小さいスケールだし、経営資源もない。それでも、ちゃんと社会に貢献するのだという経営理念そのものが、最初のブランディングになります。

子供を一人の人間として対等に見る

最後になりますが、「親子副業というものがあるよ」と世の中に発信してはいるものの、みんなに起業してほしいとか、起業家を育成したい気持ちはさほどありません。

その代わり、親御さんに、子育てや教育のあり方を、ちょっと考えていただければという思いが大きいです。子供が思春期に入ると、ともすれば心が不安定になりがちですし、急に親との会話がなくなる時期でもあります。

親子副業をすると、互いにビジネスパートナーになるので、対等な間柄で仕事に関してとことん話ができます。そうするうち自然と、子供を1人の社会人として見られるようになります。思春期の難しい時期だからこそ、一緒になって何かを生み出すのは、いくら稼げるかといったことよりも大事だと思います。そういう視点で、親子副業に取り組んでみることをおすすめいたします。

この記事を書いた人

鈴木 拓也
鈴木 拓也
都内出版社などでの勤務を経て、北海道の老舗翻訳会社で15年間役員を務める。次期社長になるのが嫌だったのと、寒い土地が苦手で、スピンオフしてフリーランスライターに転向。最近は写真撮影に目覚め、そちらの道も模索する日々を送る。

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