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印象だけに終わらない、キャリアにつながる話し方

「話す内容」より「見た目」が大事。話し方の専門学者が40代キャリアに教える意外なテクニック

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人の印象は「話す内容」より「見た目」に左右される。この特性をビジネスに活かして、キャリアを伸ばしていく方法を長崎大学准教授/スピーチコンサルタントの矢野香さんが紹介。今回は「ファッションで爪痕を残す」。

プロフィール

長崎大学准教授、スピーチコンサルタント矢野香

やのかおり スピーチコンサルタント、長崎大学准教授。博士(総合社会文化)。NHKキャスターとして報道番組を17年担当した後、独立。著書に『最強リーダーの話す力』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『【NHK式+心理学】一分で一生の信頼を勝ち取る法 』(ダイヤモンド社)、などがある。

今、ChatGPTによって文章が自動生成される一方で、人とのコミュニケーションでは「話す力」が圧倒的に求められています。プレゼン、会議、コミュニケーションなどで「話す立場」におかれる40代キャリアに向けて、長崎大学准教授・スピーチコンサルタントの矢野香氏に専門分野である心理学・コミュニケーション論の研究とNHKキャスターの経験をもとに「爪痕を残す話し方」を学ぶ連載です。

* * *

スピーチコンサルタントの矢野香です。人の印象は「話す内容」より「見た目」に左右されます。「見た目は話し方の一部」で、「ビジネススキル」といえるでしょう。今回は、キャリアアップしたい女性がファッションを味方にして爪痕を残す方法をご紹介します。

人は見た目に左右されている

人と人とのコミュニケーションは、2つの要素から成り立っています。一つは言語で、もう一つは非言語。人の印象を決めるとき、重要な役割を果たしているのは非言語であることが、数多くの心理学の実験で報告されています。

では、非言語とは何かというと、視覚と聴覚の表現です。視覚は表情やジェスチャー、ファッション。聴覚は声の大きさや高さなどのこと。心理学では、コミュニケーションをとっている相手から受けとる情報は、圧倒的に視覚が優位とされています。つまり、人は「見た目」から相手がどんな人なのかを判断するのです。

たとえば、大きめのダボッとしただらしない服を着て、裾から少しほつれた糸が出ている女性と、すっきりしたラインのスーツに、アクセサリーでワンポイントをつけている女性がいたとします。このふたりが同じ内容でプレゼンテーションをしたら、ビジネスの信頼を得る可能性が高いのは後者ですよね。このように、「見た目」は「話し方」の一部となってしまうのです。

結局「見た目」なのか、と残念に思った方がいらっしゃるかもしれません。しかし、「見た目」を変えるのは簡単ともいえます。キャリア女性としてふさわしい「見た目」を味方につけたら、「話し方」もあわせて変わってきます。見た目を変える=話し方のビジネススキルを身につけることともいえるでしょう。

ファッションはあなたの個性を話す

まず、変えるのが一番簡単で、楽しくもあるファッションについてお伝えしましょう。

「こんな人がいたよね。名前は何だったかな? 」という話題になったとき、社名や名前が出てこなくても、「白いジャケットの人」「金色のネックレスの人」など、ファッションで覚えていることがありますよね。それは、視覚が記憶に残りやすいからなんです。

そこで最初の一歩としておすすめしたいのが、装飾品を会話のフックにすることです。クライアントで、ある大手企業の役員に就任した女性がいます。この方は管理職になって以来、ずっと同じスカーフをつけることにしました。本人としては、いつも同じものを身につけることに抵抗を感じていらっしゃいましたが、戦略として続けていただきました。

3ヶ月以上たったある日、後輩に「もしかして、わざといつも同じスカーフをしているんですか? 」と聞かれたそうです。そこで彼女は、「このスカーフには羽の柄があるのよ。管理職になった時、ここで満足せずさらに飛び立とうと決心して、願掛けで買ったの」と答えました。このセリフのために、同じスカーフをつけ続けてきたのです。

フックにした装飾品について質問されたときこそ、マイストーリーを話し、爪痕を残すチャンスです。この女性が羽の柄のスカーフを選んだ理由は、「飛躍」という言葉が信念で、「私のことは飛躍する○○さんと覚えてほしい」と思っていたからでした。

まず「実は○○だから」という装飾品にまつわるマイストーリーを準備する。そして、その話のきっかけとなるための同じものを毎日身につけます。理由が見つからなければ、「私にとってのラッキーアイテムなんです。これをつけていると仕事が上手くいくんです」でOK。経験や想いは一人ひとり違って当然。楽しみながら、あなたのマイストーリーとアイテムを仕掛けてみましょう。

ファッションで自分のアイコンをつくる

次におすすめしたいのが、自分のアイコンをつくることです。私事ですが、初めて出版をしたときから著者「矢野香」としてのアイコンを「襟元にホワイトのラインがある、紺色のスーツを着ている人」にしました。そのために同じスーツを13着用意し、6年間同じ服を着続けました。同じ服を着ていると、相手の記憶に残りやすくなるうえ、無意識のうちに安心感を印象づけるからです。

アイコンをつくるときには、服と仕事のイメージを一致させることがポイントになります。デザイン関連の仕事をしている人なのに、デザイン性のない無難なスーツを着ている。医療関係者なのに、うす汚れたTシャツを着ている。これでは、何となく違和感を覚えるでしょう。

また、ハイブランドを身につける場合は、そのブランドが全面に出しているスタンスに共感しているかどうかが大事です。「エルメスの素材にこだわっているところが、私の価値観と同じ」など、理由を探してください。

このように、ファッションは隠れシグナルを出しています。皇后雅子さまは、海外の来賓がいらしたとき、その国の国旗に使われているカラーを服に取り入れて歓迎の意を表していらっしゃることがあるそうです。政治家をはじめとした世界の女性リーダーも、自分のアイコンをつくっています。どの人がどんな服をアイコンにしているか探してみるのも楽しいでしょう。

セルフプロデュースの一環としてアイコンをつくり、爪痕を残す(写真/Canva)

「なりたい自分」を見つけるワーク

どんなアイテムを選んだらいいかわからない方は、簡単なワークをしてみましょう。

「社会で仕事をするとき、どんな自分になりたいか」を具体化、可視化するワークです。「自分がどうふるまうか」ではなく、「なりたい自分がどうふるまうか」を考えるのが大事なポイント。以下の3つの質問の答えを、ノートでもスマホでもいいので書き出してみましょう。

  • 「なりたい自分」をイメージします  

例:人前で堂々と話し、周囲からも頼りにされる女性リーダー

 
  • 「なりたい自分」は、どんな服を着ていますか?
 
  • 「なりたい自分」は、どんな装飾品を身につけていますか?
 

イメージできなかった方は、憧れの女性は誰かを考えたり、雑誌やWEBでいろんな女性のファッションを見たりすると、そこからヒントを得られるでしょう。

次回は、「表情で爪痕を残す」をお伝えします。

この記事を書いた人

I am 編集部
I am 編集部
「好きや得意」を仕事に――新しい働き方、自分らしい働き方を目指すバブル(の香りを少し知ってる)、ミレニアム、Z世代の女性3人の編集部です。これからは仕事の対価として給与をもらうだけでなく「自分の価値をお金に変える」という、「こんなことがあったらいいな!」を実現するためのナレッジを発信していきます。

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