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リスキリング

リスキリングは補助金制度を利用して賢くはじめよう。個人で利用できる制度を紹介

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リスキリングをしたいけれど、費用に不安を感じている方も多いです。リスキリングを安心してはじめるために、国が取り組んでいるリスキリングの補助金制度や、個人でも利用できる制度について紹介します。

キャリアの選択肢を増やすため、働きながら学んでスキルを身に付ける「リスキリング」。

2020年の「個人のリスキリング支援に5年間で計1兆円の予算を投じる」という表明をきっかけに、従業員のリスキリングに力を入れる企業が増えています。

企業が無料で提供する講座や学習ツールの活用がスムーズですが、学びたい講座が提携していなかったり、職場に導入されていなかったりするケースもあるでしょう。

今回は、リスキリングで活用できる補助金を解説します。

リスキリングに興味があるけれど、費用が気になり一歩を踏み出せない人は、ぜひ参考にしてください。

補助金・助成金・給付金の違い

リスキリングを行うときは国や地方自治体をはじめ、民間法人が行っている補助金や助成金、給付金が使用可能です。まとめて「補助金」と解説しているケースも多いですが、厳密には支給対象と目的が異なります。

はじめに、補助金・助成金・給付金の違いを見ていきましょう。

補助金とは

補助金とは、国や地方自治体が「政策の推進」を目的に、予算を編成して行うもの。

利用には企業からの申請が必要で、内容に基づいた審査で使用可否が決まります。助成金や給付金と比べ支給される金額は多いですが、その分審査も厳しいです。

政策推進の一環として実施されるため、申請内容が政策に沿っていないと審査に通らず、補助金は適用されません。

助成金とは

助成金とは、国や地方自治体が「企業の支援」を目的に、予算を編成して行うもの。

従業員のキャリア支援を通した雇用の安定など、課題解決に取り組む企業に助成されます。

企業だけでなく、申請すれば個人事業主やフリーランスでも適用されるケースが多いです。

補助金と違い助成金には審査がないため、要件を満たして申請すれば、原則支給されます。

給付金とは

給付金とは、国や地方自治体が「個人の支援」を目的に、予算を編成して行うもの。

企業や事業主ではなく個人として補助を受けるときは、給付金制度を利用します。

給付金の種類によっては、申請後に書類や対面による審査が行われるケースもあるので、受給要件を確認した上で申し込みましょう。

リスキリングに活用できる助成金・給付金

現在リスキリングに活用できる制度は、以下の2つです。

  • 人材開発支援助成金
  • 教育訓練給付制度

人材開発支援助成金は、要件を満たした「企業」を助成する制度。

一方で、教育訓練給付制度は雇用の安定化やキャリア形成のため、教育訓練の受講を通してスキル習得を目指す「個人」を支援しています。

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金とは、企業が従業員に対して職務に関連する知識やスキルを習得させるための職業訓練を行ったときに、費用の一部を国が助成する制度です。

人材開発支援助成金は厚生労働省の管轄で行われ、次の7つのコースで構成されています。

  1. 人材育成支援コース
  2. 教育訓練休暇等付与コース
  3. 人への投資促進コース
  4. 事業展開等リスキリング支援コース
  5. 建設労働者認定訓練コース
  6. 建設労働者技能実習コース
  7. 障害者職業能力開発コース

特に「人への投資促進コース」と「事業展開等リスキリング支援コース」は、どちらも令和4年~8年度の期間限定で助成される制度です。

「人への投資促進コース」は、高度なデジタル技術を持つ人材を育成するための訓練や、労働者が自発的に行った訓練(サブスクリプション型を含む)に対する助成。

「事業展開等リスキリング支援コース」は、新規事業の立ち上げなど、新しい分野で必要になる知識やスキルを習得させるための訓練が対象です。

いずれも従業員のリスキリングを検討する企業にとってメリットの大きい助成制度のため、期間中多くのリスキリング講座や職業訓練の開催が予想されます。

在籍企業で行われるリスキリング講座への参加を検討している方は、できるだけ講座の選択肢が多いうちに参加し、資格やスキルを習得しておくとよいでしょう。

参考:厚生労働省「人材開発支援助成金」

教育訓練給付制度

教育訓練給付制度は、スキルの習得による雇用の安定を目的に、個人に対して支給される給付金です。

申請は全国のハローワークを通して行い、厚生労働大臣に指定された教育訓練を終了した個人に対し、それぞれ受講費用の一部を支給します。

教育訓練給付制度は雇用保険に基づく制度のため、フリーランスや個人事業主の方は対象外です。

雇用保険の加入条件が1年以上ある会社員や、離職中の場合は離職から1年以内かつ、1年以上雇用保険に加入していた人が対象のため、注意してください。

給付訓練の内容と給付率は、以下の通りです。

教育訓練の種類給付率対象講座の一例
専門実践教育訓練最大で受講費用の70%(年間上限56万円)【業務独居資格などの取得を目標とする講座】介護福祉士、看護師、准看護師、美容師、社会福祉士、歯科衛生士、保育士、調理師、精神保健福祉士、はり師 など 【デジタル関係の講座】ITSSレベル3候以上のIT関係資格取得講座第4次産業革命スキル習得講座(経済産業大臣認定) 【大学院・大学・短期大学・高等専門学校の課程】専門職大学院の過程(MBA、法科大学院、教職大学院など)職業実践力育成プログラム(文部科学省大臣認定)など 【専門学校の課程】職業実践専門課程(文部科学大臣認定)キャリア形成促進プログラム(文部科学大臣認定)
特定一般教育訓練受講費用の40%(上限20万円)【業務独居資格などの取得を目標とする講座】介護支援専門員実務研修、介護職員初任者研修、特定行為検収、大型自動車第一種・第二種免許 など 【デジタル関係の講座】ITSSレベル2相当以上の情報通信資格の取得を目標とする講座 など
一般教育訓練受講費用の20%(上限10万円)【資格の取得を目標とする講座】輸送・機械運転関係(大型自動車、建設機械運転等)、介護福祉士実務者養成研修、介護職員初任者研修、税理士、社会保険労務士、Webクリエイター、CAD利用技術者試験、TOEIC、簿記検定、宅地建物取引士 など 【大学院などの課程】修士・博士 の学位などの取得を目標とする課程

教育訓練給付制度は、雇用保険の被保険者が利用できる制度です。そのため現在在職中で雇用保険に加入しているか、離職してから1年以内であることが条件です。

「一般教育訓練」は講座の受講・終了後に支給申請を行うのみですが、「専門実践教育訓練」と「特定一般教育訓練」は、受講前に訓練前キャリアコンサルティングと、受給資格確認を行います。

対象となる教育訓練は約15,00講座 の中から選択できるので、教育訓練の受講資格がある方は検討してみるとよいでしょう。

参考:厚生労働省「教育訓練給付制度のご案内」

リスキリング経験者は全体の4割

補助金制度の充実が進められているリスキリングですが、実際にリスキリングを行っている人はどのくらいいるのでしょうか。

マイナビ転職の調査によると、「リスキリングをしたことがある」のは全体の44.8%。現在もリスキリングを行っていると回答したのは、そのうちの20.6%です。

出典:マイナビ転職「リスキリングで賃金が上がるのか?経験者の昇給は1割にとどまる」

続いて、リスキリングを現在していない理由について、詳しく見ていきましょう。

リスキリングをしていない理由TOP3

リスキリングを現在していない理由には、主に以下の3つがあげられます。

  • 時間がない・忙しいから
  • 何からはじめればいいか、わからないから
  • 勉強にお金をかける余裕がないから
出典:マイナビ転職「リスキリングで賃金が上がるのか?経験者の昇給は1割にとどまる」

「時間がない・忙しいから」の回答が最も多く、全体の約4割を占める結果になっています。

次に多い「何からはじめればいいか、わからないから」と「勉強にお金をかける余裕がないから」は、それぞれ全体の2割です。

リスキリングの補助金制度が推進されても、自分から正しく知識を蓄えていかなければ、制度は十分に活用できません。

忙しい人ほど「時間の棚卸し」で時間の使い方を見直す必要がありますし、何からはじめればいいかわからない人には「人生パトロール」をおすすめします。

「時間の棚卸し」や「人生パトロール」については、以下のインタビュー記事で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。

自己負担でもリスキリングを実施したいのはわずか3割

出典:マイナビ転職「リスキリングで賃金が上がるのか?経験者の昇給は1割にとどまる」

「勉強にお金をかける余裕がないから」と答える人が多い一方で、「出費自腹でもリスキリングを実施したい」と回答したのは、わずか3割。

調査結果からは、将来のためにリスキリングをしたいと思ってはいても、プライベートの時間を割くことや、自腹で費用を出す意欲をもつことが難しいという状況が読み取れます。

まずは費用を抑えてリスキリングする方法や、教育訓練給付金などの活用できる制度の知識を備え、リスキリングに前向きな意欲を保ちましょう。

個人で学ぶリスキリング講座の見つけ方

個人で学べるリスキリング講座は、次の2つの方法で探すのがおすすめです。

  • 在籍企業が提携しているリスキリング講座を探す
  • ハローワークで教育訓練講座を探す

在籍企業が提携しているリスキリング講座を探す

在籍企業で提携しているリスキリング講座があるなら、まずはそちらの受講を検討しましょう。

業務に沿った資格やスキルを習得できますし、資格試験を受けるために万が一休暇を取らなければならないときも、職場の理解を得やすいです。

人材開発支援助成金の活用で、オンライン学習ツールが広く導入され、企業が従業員のスキル習得に力を入れるようになってきました。

希望するリスキリング講座が実施されていなくても、最新情報を入手できるよう、常に意識しておきましょう。

ハローワークで講座を探す

個人で補助を受けながらリスキリングをしたければ、ハローワークで教育訓練の講座を探すのがおすすめです。

ハローワークと聞くと、再就職先を探す求職者のみが利用するイメージを抱く方もいますが、専門性を高め、キャリアアップを目指したい方も多く利用しています。

特にキャリアアップのための資格取得を目的に受講する人も多く、実際に専門実践教育訓練給付金受給者が受講したものは、以下の4講座が多くなっていました。

  1. 介護福祉士
  2. キャリアコンサルタント
  3. 看護師
  4. 社会福祉士

特に「介護福祉士」と「キャリアコンサルタント」の受講者が多く、介護福祉士は令和4年度で9,000人以上、キャリアコンサルタントは同じく令和4年度で7,000人以上が受講しています。セカンドキャリアに向けてこれらの資格取得を希望している方は、ハローワークで講座を検討してみるのもよいでしょう。

出典:厚生労働省「教育訓練給付等について」

番外編 | 個人が無料で学べるオンラインリスキリング講座

給付金や助成金もいいけれど、「できればもっと手軽にリスキリングを試したい」という方に、無料で学べるオンラインリスキリング講座を紹介します。

日本リスキリングコンソーシアム

日本リスキリングコンソーシアムは、個人が受講できるトレーニング講座を紹介する総合サイト。

提携しているのは、総務省や経済産業省、厚生労働省、デジタル庁の4つの省庁。そのほか各自治体や後援企業が協力し、主幹事のGoogleと共同で運営しています。

掲載プログラムは無料のものから有料のものまで幅広く、会員登録をすれば誰でも受講可能です。

Microsoft Learn

Microsoft Learnとは、マイクロソフト社が提供する無料の学習プラットフォームで、マイクロソフトのアカウントがあれば誰でも無料で利用できます。

講座はAIモジュールの概念や、マイクロソフト社の提供するクラウドサービス「Azure」の基礎など、専門的なものが多く、実践的な知識をレベルに合わせて習得可能です。

ページは日本語訳されており、学習の目安時間もあってわかりやすいです。ただし、英文を直訳したような表記もあるため、慣れるまでは理解しにくい点もあるでしょう。

Google デジタルワークショップ

マイクロソフト以外のOSを利用している方には、Google デジタルワークショップがおすすめ。

Googleデジタルワークショップは、デジタルスキルについての幅広い知識をオンラインで学べるツールで、Googleアカウントがあれば誰でも無料で利用できます。

例えば「デジタルマーケティングの基礎」や「プログラミングの基礎」のほか「キャリアアップに役立つスキル」など、公開されている講座は初心者でも学びやすい内容のものが多く、幅広く活用可能です。

今後どうなる?リスキリングの補助金と個人への支援

現在、リスキリングの補助金や助成金は、企業が主な対象となっています。

個人がリスキリングの補助を受けるには「教育訓練支援給付金」を利用できますが、この制度は令和7年3月31日までの時限措置です。

教育訓練給付金制度はこれまで繰り返し延長されており、今後も延長の可能性はありますが、正式な発表はされていません。

そのような中、「経済財政運営と改革の基本方針2023」では、リスキリングによる能力向上支援について、以下のように述べられています。

「リ・スキリングによる能力支援」については、現在、企業経由が中心となっている在職者への学び直し支援策について、5年以内を目途に、効果を検証しつつ、過半が個人経由での給付が可能となるよう、個人への直接支援を拡充する。その際、教育訓練給付の拡充、教育訓練中の生活を支えるための給付や融資制度の創設について検討する。
引用:内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2023」

「個人への直接支援を拡充する」とありますが、今後どのような制度になるか現状では不明です。

補助金制度はもちろんのこと、今後のリスキリングに対する政府の姿勢についても、情報を広く意識しておくのをおすすめします。

構成・文/渡邊 真理

参考:内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2023」

この記事を書いた人

I am 編集部
I am 編集部
「好きや得意」を仕事に――新しい働き方、自分らしい働き方を目指すバブル(の香りを少し知ってる)、ミレニアム、Z世代の女性3人の編集部です。これからは仕事の対価として給与をもらうだけでなく「自分の価値をお金に変える」という、「こんなことがあったらいいな!」を実現するためのナレッジを発信していきます。

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