「リスキリング」で大成功。地方の印刷会社がデジタルマーケティング企業に変貌
企業経営者がリスキリングに積極的だと何が起こるのか? 地方の印刷会社がリスキリングによって新事業を展開。企業のリスキリングは収益アップ、給与アップ、顧客満足度アップにつながるといいます。
リスキリングに取り組む石川県加賀市の成功例
2022年10月の臨時国会岸田政権はで、リスキリングの支援に5年で1兆円を投じると表明。そのため個人ベースより先に、企業主導でリスキリングが推進されているが、実際に働く人にはどのような影響があるのかを。リスキリングの専門家の一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表・後藤宗明さんに聞きました。
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「リスキリングの企業支援という観点では、厚生労働省が人材開発支援助成金という制度を作り、企業がリスキリングにかけた費用を助成するという仕組みができています。各自治体でも独自の取り組みが始まっていて、例えば広島県、茨城県、山梨県などが推進の取り組みをしています。特に石川県の加賀市は熱心で、そこではリスキリングという言葉を、経営者がほぼ全員知っているほどです。
リスキリングに取り組んで成功している企業の一例を挙げましょう。名古屋の西川コミュニケーションズは、もとは印刷を生業としていた会社です。それが現在では、デジタルマーケティングやAIの導入支援などをする会社に変貌を遂げています。この会社では、まずは経営者が自らリスキリングに取り組んで、結果として新事業の創出に繋がりました。その後、従業員が就業時間内にリスキリングをするようになりました。そして今では、AIやデジタルマーケティングという、新しい事業を担う人材へと転換しました。こういった事例は、数はまだ少ないのですが、増えています。
会社主導のリスキリングによって、従業員が成長事業を推進できるようになれば、お客様は喜ぶし、企業の収益は上がるし、給与も上がるしと、三方良しなのです。
ちなみにアップスキリングという言葉もあります。これは従来型のリーダーシップやロジカルシンキングの研修といったもので、もちろんこれは今も重要です。が、それだけでは、これからの技術発展や環境変化についていけないわけです。やはり、リスキリングの取り組みは必要なのです」
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リスキリングとは個人の「学び直し」を超えて、企業の事業や経営方針を大きく変革させDXさせるような成果をもたらすことになります。経営判断によるところが大きいですが、その分リターンも大きいと言えます。次回は、具体的にリスキリングって何をするのか?についてお伝えします。
後藤宗明
一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブの代表。早稲田大学政治経済学部卒業後、1995年に富士銀行(現みずほ銀行)入行。2002年、グローバル人材育成を行うスタートアップをNYにて起業、卒業生約2,000名を輩出。2008年に帰国し、米国の社会起業家支援NPOアショカの日本法人を2011年に設立後、米国フィンテック企業の日本法人代表、通信ベンチャーの国際部門取締役を経て、アクセンチュアにて人事領域のDXと採用戦略を担当。2021年、一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブを設立。著書に『自分のスキルをアップデートし続ける リスキリング』などがある。
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この記事を書いた人
- 都内出版社などでの勤務を経て、北海道の老舗翻訳会社で15年間役員を務める。次期社長になるのが嫌だったのと、寒い土地が苦手で、スピンオフしてフリーランスライターに転向。最近は写真撮影に目覚め、そちらの道も模索する日々を送る。