Interview
インタビュー

起業したい、起業家志望なら絶対読むべき起業のリアル国内最大のクラウドファンディング「CAMPFIRE」を作った連続起業家・家入一真の失敗哲学① 「ビジネスは、基本失敗します」?。

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CAMPFIRE、BASE など革新的なサービスで個人を応援する連続起業家・家入一真さんに「失敗哲学」を伺いました。

プロフィール

連続起業家家入一真

1978年生まれ。福岡県出身。連続起業家。国内最大クラウドファンディング「CAMPFIRE」代表取締役。JASDAQ上場企業「paperboy&co.(現GMOペパボ)」創業者。2018年6月、シードラウンド向けベンチャーキャピタル「NOW」設立など。

国内最大のクラウドファンディング「CAMPFIRE」やネットショプ作成サービス 「BASE」の共同創業など、次々とサービスを生み出し、新しい時代を作ってきた家入一真さん。連続起業家として起業を促す立場だからこそ常に背中合わせの「失敗」を誰よりも見てきた家入さんは、「失敗するのが当たり前。だからこそ、積み重ねていくしかない」と語ります。

失敗は諦めた時に「失敗」となる

ずばり家入さんの失敗を教えてください

もちろんいっぱいあります。これまでも数百とやってきたうちのいくつかが、たまたまうまくいったから、こういう場でお話させてもらうようになりましたけど、基本的に失敗しかないです。

基本、失敗ですか?

うまくいくことの方が少ないわけで、経営をはじめ人生あらゆることはうまくいかないことの方が多くて、でも、うまくいかないからって諦めたらその時点で失敗になるわけです。

諦めなければ、まずは失敗しないんですね?

そうですね。だから、うまくいかなかったらじゃあこうしようとか、次はこういう風にやってみようとか、どんどん積み上げていくのがいいと思っています。
僕はほぼ全てのことがうまくいってないけれど、20 年以上前からその思いは変わらずあって、その結果がCAMPFIREだったり BASEだったりします。諦めない限りは失敗確定にはなりません。

なるべく失敗はしたくないです……

そもそも失敗してもいいと思うんです。うまくいかなかったから終わり、でも全然いい。失敗しちゃいけない、失敗が許されない社会は一番しんどいと思うので、失敗自体はありだと僕は思っています。

でも「失敗」が怖い人は多いと思います

その恐怖はわかります。でも、この年齢になってわかったのですが、同じ失敗でも、大怪我を負って転ぶ時と軽症で済む転び方っていうのがあります。
だから、一概に失敗したらどうなるんだろうという不安に関しては、コケたとしてもどれだけのダメージがあり得るのかを考えておくのがいいかなと思います。

ダメージの予測をしておく、ですか?

10 代、20 代、30 代、40 代、50 代で立ち位置も違いますよね。自分が何を抱えていて、何を守らなきゃいけなくて、何がリスクなのかということをきちんと考えた上で行動すれば、失敗しても痛くないんです。

ただリスクを避けるのではなく、リスクを知る

10、20 代で起業するのは、経験になるし、糧になるし、いいと思うんです。でも、50 代で守るものがあるのに、起業してコケるのは訳が違います。だから僕は「みんな起業すべき、挑戦すべき」とは言えません。
例えば、その年代で急に脱サラして大きな借金をしてラーメン屋を始めますという人には「ちょっと考えた方がいいんじゃない?」って言います。

失敗は、すればするほどうまくなる

先ほど失敗してもいいとおっしゃっていましたが、失敗の仕方というのはありますか?

若いうちから失敗を重ねていると受け身がうまく取れるようになると思います。失敗する経験がないままきて、いざ大きな失敗をしてしまうと、心も含めて壊れてしまうのが一番怖いと思うんです。

受け身がうまくなれば、失敗ダメージも小さくなる!

「起業家の約半数が生涯に一度はメンタルヘルスの問題を抱える」という調査結果を、カリフォルニア大学バークレー校が以前発表しています。実際、僕も周りにもメンタルをやられた起業家がいます。

どんな時に心身を壊す人が多いですか?

会社にしろ、個人にしろ、ビジネスをしていると、資金がショートしてしまったり、社員がたくさん辞めてしまったりとかしんどいフェーズがあるわけです。一緒に起業した相手と喧嘩別れしたりとか。
それぞれが単一の事象の時はなんとか頑張って乗り越えられたりするんですが、そこに例えば家庭や恋愛がうまくいってないとか 、プライベートの問題が重なると、心がポキッと折れちゃってメンタルがやられて辞めていくケースが多いですね。

仕事もプライベートもうまくいかないと厳しいです

そこをどう自分自身で持続可能な形にしていくのかは、結構 大事かなと思います。
でも起業やフリーランスになって、そうした状況になると、あなたが選んだ道で結果失敗したんだから自己責任ですよって話になりがちですよね。

失敗するのは自分のせいと思いがちです

この自己責任論って、本当に根深くて、個人がチャレンジすることを阻んでいると思います。自己責任論の中で、追い詰められているのもあると思いますよ。

失敗も含めて経験を次世代へ繋いでいく

30 歳、40 歳で変わったことはありますか?

ちゃんと年相応の思想になりました(笑)。30 歳の頃は、ツイッターとかでもそうでしたが「みんな起業したほうがいいじゃん」とか「なにもしないことはリスクだ」とか、煽るような言い方をしていた気がします。

家入さんに憧れて起業した人も多かったと思います

僕は確かに起業をして救われました。自分の居場所を見つけることが出来た。でも、それは僕の人生であり、再現性がある訳ではないですよね。起業して上手くいかなかった、メンタルを壊してしまった、そういった大多数の存在を無視して「みんな起業した方が良い」なんて言えなくなってしまったんです。

なぜ、言えなくなってしまったんですか?

この数年で後輩の起業家が亡くなったり、僕自身の弟が若くしてこの世を去ったりしたのですが、彼自身が自分の人生の終わりをそこで決めたということを尊重するしかないんです。僕ら残された人間が、起きてしまった出来事を次にどう繋げていくかと、そういうのを積み重ねて、考え方が変わってきたと思います。

30 代は「頑張ればこうなる」という希望しかなかったのに、40 代になると残された時間が減っていく感覚です

よく言う話ですけど、あと何回ご飯を食べられるだろうとか、あと何回親に会えるんだろうとか考えるようになりますね。残された時間を逆算していくような気持ちが最近は出てきました。

家入さんはそういう気持ちでも、会社は成長していくのはどんな感覚ですか?

自分の人生をこうしたいどうしたい、という願望みたいなものは昔から薄くて。どちらかというと、自分自身がこれまで生きてきた中で感じた生きづらさをベースにして、それを解決することで社会をアップデートしたいというか。

「家入さんの生きづらさ」で社会をアップデート……

そういった流れで言うと、高校の起業部で顧問をやったり、若い子向けの奨学金をやったりとか、次世代次々世代にバトンを渡していく年齢になったんだなとすごく思います。
30 歳の時は、僕みたいに学校に行けなくなったり、会社に行けなくなった人のためのシェアハウスをやったり、第三の場所を作ることで、そこに自分もいる感覚だったんです。

ビジネスの場が、家入さんの居場所

僕と同じ境遇にいる若い子たちと一緒に立ち上げて居場所を作っていたのが、若干上からの感じになるかもしれないけど、この年になると、次にバトンを渡していくようになった。
僕もまた上の世代からバトンをもらっているわけで、社会って連綿と続いていくバトンの受け渡しだなとしみじみ思います。

うまくいかない、失敗するのが当たり前です

やりたいことを決めてから動くのと、動いてから決めるのとどちらが正解ですか?

僕は実はやりたいことっていうのを信じてないんです。やりたいことって決めた時点でそこにフォーカスされて、それ以外の可能性を排除してしまう。だから、やりたいことを決めてしまうと、結果的に視野が狭まってしまう気がします。

でも「目標を持て」と教育されてきました……

例えば、あの山のてっぺんに上ることをゴールにした時に、最短コースで行こうってなってしまうでしょう? でも、往々にして迷ったりさぼったり回り道をする中で見えてきた景色から変わっていくことがある。
実際に動いている間にどんどんやりたいことって変わっていくので、挑戦して失敗して、を繰り返す中で手段も変わるんじゃないかなと思います。

最近は、最短最速でゴールするのが良いとされる傾向にありますよね?

何も失わず、苦労もせず得られるものがあれば良いのかもしれないですが、そんなにうまくはいかないですよ。基本的に人生はコケたり迷ったりした時に得たものを次に繋げていくというマインドが大事なんだと思います。
今の時代なんか誰も予測してなかったわけで、日本だと自然災害も十分ありえる。そんな中で、起きてしまったこととどう向き合うかっていうのが大事なところですね。

うまくいかないのが前提ですか?

いきなり初打席でホームランを打ちたい気持ちはわかります。でも、ホームランどころかヒットすら打てないし、基本三振です。
毎日毎日、三振し続けても打席に立ち続けることが大事なんです。たまにさぼったり、デッドボールで怪我するもありですが、ただ、打席に立てば最終的にヒットぐらいは出るかもしれないです。さらにもしかするとホームランを打つかもしれない。

バッターボックスに立ち続けることが大事!

だから、「うまくいかないかも」ではなくて、「やればいくかも」くらいの気持ちくらいでちょうどいいと思います。

いつかうまく行きますよね?

でも、基本うまくいかないですよ!(笑)

正解を探すより、大事なこと

でも、うまく行く方法が知りたいです

CAMPFIRE は数ある中の本当に 1 つ、2つです。例えば、僕が一瞬立ち上げたサービスで、大学生たちを本屋に常駐させて注文が入ったら自転車で送るっていう『ハヤゾン』や、それのコンビニバージョンもありました。今で言う UberEats っぽいですよね。
早すぎたって言うとかっこ悪い言い訳ですけど、当時から個人の可能性を解放することを意識していたので、最近ようやくそういう時代になってきたんだなと思いますね。

家入さんにとって「正解」とはなんだと思いますか?

ビジネスに限らず、全てのことに正解なんてなくて、でも正解らしきものを追い求めていくっていう態度こそ正解……というか僕の好みの考え方です。
会社経営で例えると、今は CAMPFIRE は 200 人ぐらいの会社になってるんですけど、やっぱ日々いろんな問題が起きるわけです。こっちを解決したら今度こっちで問題が起きるし、こっちを解決したと思ったらまた別のところで問題は起きるし。もう毎日なんです。

3人しかいない編集部でもいろんなことが勃発します

ビジネスにしろ、組織にしろ、結局人と人対人。感情を持った動物である人間同士が一緒に働くから それは感情のぶつかり合いとか、プライドとか嫉妬とか妬みと色々と起きるわけです。
その中で正解みたいなものできちっとやろうとしたら、なんか、それはもう本当に感情を殺して働くっていうことになっちゃうと思うし、やっぱり「何が正解か」なんてない。
もちろん、放棄するってことではなくて、日々、正解らしきもので向き合っていく。でもやっぱ違ったっていうとこの繰り返しをやってくっていうことのみかなっていう感じです。

後編に続く。

ビジネスに一番大切なものは 〈Why〉―なぜ、それをやるのか?  連続起業家・家入一真の失敗哲学②

*2022年2月に行われたwebメディア I am (アイアム)のオンラインイベントをまとめたものです。

取材/I am 編集部

写真/有賀傑

この記事を書いた人

I am 編集部
I am 編集部
「好きや得意」を仕事に――新しい働き方、自分らしい働き方を目指すバブル(の香りを少し知ってる)、ミレニアム、Z世代の女性3人の編集部です。これからは仕事の対価として給与をもらうだけでなく「自分の価値をお金に変える」という、「こんなことがあったらいいな!」を実現するためのナレッジを発信していきます。

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