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世界を魅了するシューガーアーティスト。趣味からはじめて世界一になった才能開花の秘訣

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会社員として働きながら、趣味で始めたシュガーアートで世界一へ。その秘密は「好き」を追求する情熱と、誰にも真似できない繊細な技術だった。

砂糖と卵白などを混ぜた生地で、信じられないほど繊細なアート作品を生み出す「シュガーアーティスト」。その世界で今、最も注目されているのが、大手通信会社に勤める玉川玲さんだ。会社員として働く傍ら、たった7年で世界一の座に輝いた彼女は、なぜ快進撃を続けられるのか。その唯一無二の才能と、情熱の源に迫る。

常識を覆す「クレイジー」な発想

玉川さんの代表作の一つに、レース仕立てのハイヒールがある。つま先からかかとまで、まるで本物のレースのように見えるこの作品は、一本一本、驚くほど細く絞り出した砂糖のペーストでできている。この途方もない作業は、世界中の誰も試みたことがなかったという。そして、彼女の才能を世界に知らしめたもう一つの作品が、ニューヨークケーキショーで優勝した「美女と野獣」だ。ガラスのドームを表現するために、わずか2cm×3cmの四角い枠に約40本もの極細の筋を入れた。「もう二度とやりたくない」と本人も語るほどの超絶技巧に、審査員は思わず「Crazy!」と叫んだという。

彼女がここまで細かな作業にこだわるのはなぜだろうか。そこには「他の人がやらないこと、できないことをやる」という強い信念がある。そして、その繊細な手先の器用さと、最後までやり遂げる根性が、世界最高峰のコンテストで評価される武器となったのだ。

「好き」が才能を開花させる

シュガーアートとの出会いは、美容室でたまたま見た雑誌に載っていたウエディングケーキだった。芸能人のケーキに飾られたシュガーアートに魅せられ、2007年に教室に通い始めた。それまで美術や芸術に特段の才能を感じたことはなかったというが、玉川さんは教室で誰よりも早く課題を終え、こっそりと自分の好きなものを作り始めた。

「作ることがとにかく好きで、仕事や食事、睡眠以外の時間はほとんど、常に手はシュガーアートを作っている状態でした」と彼女は笑顔で語る。この無意識に手を動かしてしまうほどの情熱こそが、彼女の上達を早めた最大の理由だ。

2010年には教室内の展示会で銅賞を受賞。「もっとこうすれば金賞を狙えるかも」という意識が芽生えた。そして、2012年のイギリスでの世界大会で「WOW!がない」「技術の多彩さが足りない」という厳しい評価を受けたことで、世界で評価されるためのポイントを学んだ。この経験が、彼女の才能をさらに磨き上げ、わずか7年で世界一へと導いたのである。

「好き」を仕事にするという選択肢

会社員として働く玉川さんにとって、シュガーアートは「副業」という位置づけだ。平日の夜や土日を使って作品を制作し、年間約100万円の収入を得ている。彼女の勤務先は副業を推奨しているため、本業とシュガーアーティストの活動を両立できている。教室やオーダー制作など、活動の場は多岐にわたる。

彼女の作品はコンテストでの受賞歴が多く、繊細な作品はアパレルメーカーからのオーダーなど、まれにしか受注されない。しかし、収入額には満足しているという。そして、自身の作品をより多くの人に届けるため、通販サイト「SugaR DayS」を立ち上げた。食品営業の許可を得るために、シュガーアート専用のキッチンがあるマンションを35年ローンで購入したという話からも、彼女の「好き」への並々ならぬ情熱が伝わってくる。

「手先は器用だったけれど、人から褒められたのはシュガーアートが唯一」と語る玉川さん。彼女の物語は、誰にでも才能があり、それがどこに眠っているかはわからないということを教えてくれる。そして、その才能は、「好き」という純粋な気持ちを原動力に、努力と情熱によって必ず花開くのだ。

取材/華太郎

編集/webメディア I am編集部

この記事を書いた人

I am 編集部
I am 編集部
「好きや得意」を仕事に――新しい働き方、自分らしい働き方を目指すバブル(の香りを少し知ってる)、ミレニアム、Z世代の女性3人の編集部です。これからは仕事の対価として給与をもらうだけでなく「自分の価値をお金に変える」という、「こんなことがあったらいいな!」を実現するためのナレッジを発信していきます。

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