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キャリア設計

資格を活かして一生仕事を続ける「フリーランス管理栄養士」のサバイバル術。定年後のキャリアの伸ばし方

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県職員を定年退職して、現在は「フリーランス管理栄養士」として活動する中田恵津子さん。
今や 70 歳まで働くのがデフォルトとも言われる時代、フリーランスとなるきっかけや、やりがいなどについて伺いました。

数ある国家資格の中でも「管理栄養士」や「栄養士」は、みなさんにとっても馴染み深いものでしょう。
しかし、ほとんどの人にとって、この資格を持つ人の仕事は、「学校・病院の給食の献立を考える」という認識しかないのが実情かもしれません。
最近になって、この風向きが変わってきています。医療現場で、各患者の病状に合わせて、医療チームの一員として栄養指導をする人が増えつつあるなど、活躍できる分野が広がっているのです。
これにあわせ、フリーランスの立場で活躍する人も増えています。2022 年 12 月には、『フリーランスで活躍したい管理栄養士の本』(女子栄養大学出版部)が刊行。本書には、フリーランスとして職業人生を送るために、「継続性」「収入」「やりがい」の 3 つの価値が提案されています。そして、特定保健指導やクリニックでの栄養相談などで、必要な収入が得られることが示唆されています。
変わりつつある管理栄養士としての働き方について、本書の共著者の 1 人、中田恵津子さんに、お話を伺いました。

プロフィール

インタビュアー、スタートアップ広報中村優子

(なかむら・ゆうこ)元テレビ局アナウンサー、インタビュアー、スタートアップ広報。作家・林真理子さんのYouTubeチャンネル「マリコ書房」、および著者インタビューサイト「本TUBE」を運営。インタビュー動画の企画から出演、編集まで一人でこなす。年100本以上の動画制作に関わる。2022年、スタートアップ広報の会社を設立。

栄養士一筋で働いた県職員時代

フリーランス管理栄養士として活躍する田中恵津子さん(撮影/中山文子)

中田さんは、神奈川県の栄養士職として採用され、転勤を重ねながら定年まで一途に仕事をしてきました。最初は児童福祉施設に配属。そこで預かったお子さんたちを、健康的に成長させていく基盤整備のような役割を任されたそうです。中田さんは、次のように話を続けます。


「私としては、いずれは行政の健康政策に関わりたい気持ちがありました。やがて、その希望がかなえられ、保健所や教育委員会といったところでの栄養改善業務にくわえ、栄養士を束ねていくマネジメントの仕事もしてきました。


最終的には、自分の技術を生かすとともに、現場に戻りたいという気持ちもあって、県立のがん専門病院で勤務しました。そこでは、患者の栄養管理や栄養相談以外に、人材育成をしたり、栄養にかかわる事業に携わりました。雇われる形での最後のキャリアは、その病院でした」

フリーランス管理栄養士へのきっかけはボランディア

デモンストレーションを行う田中さん(本人提供)

中田さんは、退職されてすぐ、フリーランスで管理栄養士になろうと決心したわけではないそうです。フリーランスになるきっかけについては、こう話されます。


「しばらくして、講演会や専門学校での育成など、様々なことを依頼されるようになりました。最初はボランティアみたいな意識で引き受け、仕事という気持ちでは正直なかったのですね。『今までやってきたことが、社会に還元できるなら』という感じで、いろいろな依頼をこなしていました。


そうしているうちに、ある施設の栄養士さんに助言をするとか、コンサル的なことも結構入ってきたのですが、ふと気づきました。『仕事という形にしないと、一つ一つの経験が消えていって、何も残らない。成果に変えるって何だろう?』と思い始めたのです。


管理栄養士は、単に『食事を作る人』というイメージがメインになってしまっていますね。法律では、対象者 1 人 1 人の栄養管理をして、健康上の不具合を調整するという役割です。体の中に、「こういう栄養素を入れよう」というところまで介入できる仕事なのです。がん専門病院に勤務していたときも、そういう仕事をすることによって、入院日数を少なくし、病院の経営にも貢献して、自分を認めてもらうような形で仕事を進めてきました。


でも、その後いろいろ講演などしても、あまりその手応えがないと思って、管理栄養士の価値を高めていかなければ、という気持ちが湧き上がったのです。


自分の過去の経験を言いっ放しではなく、せっかく依頼をいただいている限りは、もっと責任を持っていかなくてはならないと感じました。こうして、私はフリーランスとなりました」

フリーランス管理栄養士の課題

会議中の田中恵津子さん(本人提供)

フリーランスの管理栄養士として生きていくことを決めた中田さんですが、希望もあれば課題もありました。年齢的な壁のようなものもあったかもしれません。そのあたりについて、中田さん、こう語ります。

「周囲から見た、栄養士の存在価値はいまだ低いのですね。そこを何とかして、もっと活躍される人を作っていくことを仕事にしたいと思いました。


でも、フリーランスとして仕事を続けると決めたものの、起業した若い人たちと違って、年齢が高いと、決して〈拡大〉していくわけじゃないですよね。重視したのは、〈拡大〉ではなく〈継続〉。収入の多寡はともかく、続けていくっていうことは、私にはすごい難題でした。そもそも、自分をフリーランスだと語れるまでに、すごい時間がかかりました。


いろいろ考えるうちに、自分の強みは、経験の中で得た管理栄養士という資格の活かし方を言葉に変えていくことなんだなって。」

「料理を作る人」以上の価値を知ってもらうこと

ところで、栄養士を使う側の組織でもいまだ、『栄養士は料理を作る人』という昔ながらの意識が残っているところが、すごく多いのですね。高齢者施設でも病院でも、厨房は地下にあって、見えないところにいるイメージが大きい。私ががん専門病院にいたときも、地下に厨房があり、病床が 400 床に対して、私ともう 1 人で栄養士が 2 人しかいなかったのです。
個々の患者さんに対応するには全然足りない数です。


栄養士が病棟に行って、一人一人と面談しながら栄養改善を進めていくことでメリットが生まれると、経営側に認識してもらい、10 人ぐらいまで人を増やすことができました。栄養士の意義をわかってもらう努力は、かなりしたと思いますね。そういうところに価値を見出していただけるのが、私の仕事かなって。そして、その手法をほかの栄養士さんたちに伝えていくのも、また一つの仕事だと思います。


それを実感したことが、勇気につながりました。


かつては、栄養士はどこかの組織に雇用されて仕事をするのが基本でした。健康に関しては、国が政策を作り、それに沿って市町村が、事業計画をするわけですね。その実働として外部委託が進んできていて、栄養士もスキルを上げてフリーランスで働く流れが少しずつ進展してきたと思います。


健康料理のレシピ本やブログで栄養の情報提供をしたりという方も多いですね。クリニックや自宅での療養者の栄養相談や、予防関係の講座で、多職種とチームを作って健康を改善をされている方も多いです。


私もやってみたい仕事が定まって、やっとフリーランスと名乗れるようになりました

中山文子

おすすめ関連図書:『フリーランスで活躍したい管理栄養士の本: 地域にもっと可能性がある!』(女子栄養大学出版部)


インタビューに答えていただいた中田恵津子さんと 2 人の共著者(安達美佐さん、岩崎祐子さん)による、フリーランスで管理栄養士として働くための実践ガイド。仕事の選び方から、特に必要な知識やスキルなど、経験者による豊富な知見が盛りだくさん。フリーランスになった 10 人の管理栄養士のインタビューも収載され、とても役に立つ 1 冊です。

この記事を書いた人

I am 編集部
I am 編集部
「好きや得意」を仕事に――新しい働き方、自分らしい働き方を目指すバブル(の香りを少し知ってる)、ミレニアム、Z世代の女性3人の編集部です。これからは仕事の対価として給与をもらうだけでなく「自分の価値をお金に変える」という、「こんなことがあったらいいな!」を実現するためのナレッジを発信していきます。

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