Interview
インタビュー

失敗もブランディングになる?元AKB48 起業家が語るビジネスアイデアをカタチにする方法(起業家・冨田麻友/第2話)

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元 AKB48 で起業家の冨田麻友さんが語る、ビジネスアイデアを実現する方法とは?そしてビジネスアイデアを見つける方法は?海外経験があるからこそ語れる独自の視点に迫る。

プロフィール

元アイドル、現株式会社 BEYOULIFE 代表冨田麻友

5 歳でダンスをはじめ、15 歳で AKB48 の 5 期研究生オーディションに合格し芸能活動を開始。18 歳で単身NY へ移り、3 ヵ国に住み 13 ヵ国以上の国を訪問。帰国後 CA を目指すもコロナ禍により断念、一念発起しBEYOULIFE の事業をスタート。現在英・芸・農を軸に事業を展開中。

BEYOULIFE の事業をスタートさせた、起業家冨田麻友へ聞いた、普段から心がけていることや、うまくいかなかったらどうしようと思うときの心構え、これからのビジネスに必要な力について。これからビジネスを始めたい方必読の思考法に迫る。
アイドルは正規メンバーに選ばれず、ミスコンは準グランプリどまり。グループのトップになれずにいた元アイドルが見つけた、自分が一番になれる場所とは。
*全2話、前編はこちらからどうぞ

継続よりも発信が大切!まず発信してみることで、世界は回りだす

写真/田尻陽子

BEYOULIFE の事業について、教えていただけますか?

BEYOULIFE が掲げているのは、”地方と世界を結ぶ”というテーマです。私が生まれ育った香川県や四国という地方と、わたし自身が見てきた世界を結びつける、私ならではのジャパンアンバサダー的な事業を行っていきたいと考えています。
そのための柱が、英語・芸能・農業の 3 つ。
英語事業では、個人の方や企業の海外進出支援のお手伝いや、VIP 対応をしています。
芸能事業ではアジアを中心とした海外に目を向けていて、現在ベトナムのメディア JAPO でのアンバサダー活動や巫女をテーマにしたアイドル MIKODOLL®︎のプロデュースなど、ベトナムでの活動に力を入れています。
農業事業は地元香川県三木町で、お米のブランディングを行っています。さらに、三木町とベトナムを繋ぐための取り組みを始めています。
ゆくゆくはこの 3 つの柱を組み合わせた事業の展開も視野に入れています。昨年初めて映画のプロデュースをやらせていただいて、地元で撮影を行ったのですが、これも言ってみれば芸能と農業の組み合わせの一つかなと思います。

写真/田尻陽子

これは……めちゃめちゃ忙しそうですね!
アジアへの海外進出や映画のプロデュースなど、様々なチャレンジをされていますが、普段から心がけていることはありますか?

人がやらないことをやったりとか、言わないようなことを言ったりしてみると、面白いことが起こることが多いんですね。
だから、まずは何か思いついたら発信してみるのってすごく大事だと思います。とりあえずチャレンジしてから考えればいいと思うんです。

「いいじゃん、ってなったら続くし」と思って?

そうなんですよ、いいものはきっと続くと思うんです。
例えば、今ベトナムでプロデュースしている史上初グローバルアイドルグループプロジェクトの MIKODOLL®︎ですが、最初は冗談半分で発信してみたことだったんです。でも、やりだしたらいろんな方が運営に集まってくださって、一昨年の 9 月に第一期生をデビューさせることができたんです!

写真/田尻陽子

確かにそれは、最初の発信がなければあり得なかったですね!

「元アイドルがアイドルプロデュースに失敗したとか恥ずかしいよ」って言ったら、「いえいえ、1回やったらそれが実績になるじゃないですか!」って周りの方に言われて。たしかにそうか、って思ったんです。

失敗したとしても実績になるから気にしない、っていうことなんですね。

そうなんです。AKB48 には 1 年間しかいなかったけど、短くてもアイドルとしての経験はちゃんと私の中にあるし、思いを発信したからこそ、アイドルとしての経験がこのアイドルプロデュースに繋がったんですよね。
逆に、やらなきゃと思っていることほどなかなか続けられないし、コロナ禍でできなくなることだってある。”継続は力なり”とかいうけど、別に大事なのは継続することじゃないと思うんです。

今の状況にとてもマッチしたやり方ですね!こういう新しい考え方でビジネスを進めている人がいると思うと、読んだ人も気持ちが楽になる気がします。

ネタとして使っていただけたら嬉しいです!私もまだまだ未完成なので、皆さんと一緒にがんばって、成長していけたらと思います。

失敗がブランディングに繋がる。起業家必須アイテムはネタ帳?

事業を立ち上げるとき、「うまくいかなかったらどうしよう」と思うことはありますか?

毎日思ってますよ(笑)!ほとんどギャンブルのような気分です。でも、不安は当たり前だとも思っています。

写真/田尻陽子

不安だからやらない、できない、ではなくて。

だって初めてやるんだし、不安なのは当たり前。不安に立ち向かう、とかじゃなくて、不安とともに頑張ろう!みたいな感じです。

悩むぐらいならどんどんやっちゃえ!ってことなんですね。

きっと余裕がある人のほうが悩むんだと思います。わたしは会社を立ち上げたばかりだし、実績を作って事業を回すのに必死なんですよね。どうしたら売れるのか、どうしたら魅力的になるのか、って考えるし、不安もあるけど、悩んだり迷ったりはしないですね。

始めてみたけどなかなかうまくいかない…というとき、冨田さんならどうしますか?

ネタ帳に書きますね。上手くいってないのってネタになるんですよ!トントン拍子にいったものに対して人って共感しないじゃないですか。

確かにー!

共感できないと応援してくれないので、ブランディングするためのネタとして、今の状況を苦しいかもしれないけれども、細かく書き留めておくと、後からちょっとうまくいったときに「でも実はこうだったんだよ」っていう自分の物語のネタになるので。

なるほど、ちょっとうまくいかないことさえも。

そう、それも糧になるんです。

今使えなくても、数年後に使える!

私だって、こんな風にインタビュー受けてると思わなかったですもん。2020 年なんて、CA 受けられなくて夜も眠れなかったんですよ!「なんで私が受けるときに限って採用がなくなるんだ」と思って。でもこれ、たった 2 年前の話なんですよね。

写真/田尻陽子

確かに!本当に、経験は無駄にならないですね。

すべて繋がっているので、今苦しかったりうまく行っていなかったりしても、それはネタになるんだと思えばいいんです。
大事なのはそれを内に秘めるんじゃなくて、外に出すことですね。こんなことで悩んでる迷ってるっていうのをもう外に出していくっていうことが大事ですね。

これからのビジネスに必要なものは、決断力と交渉力

アイドル時代はキャラを作ることが難しかったとおっしゃっていましたが、海外生活などいろんな経験を経て、自分というものができてきた、ということでしょうか。

できましたね。殺されないなって思います(笑)。

写真/田尻陽子

こ、殺されない?

大げさな話ですけど、日本って銃で撃たれないじゃないですか。海外で本当ちょっと変なこと言うと打たれたり暴動になったりするけど、日本ってちょっと嫌われて悪口言われて終わりじゃないですか。だから怖いものがなくなりました。

それは確かに、実際にそういうところで暮らしてみないと身につかない感覚かもしれないですね。

自分がどんなに恵まれているかとか、日本では当たり前のことが海外では当たり前じゃないとか、実際に海外に出ないとわからないし、コミュニケーションできないと対応できないんです。
これからの時代を生き抜くのに絶対に必要なのは、決断力と交渉力だと思うんですよ。海外の子たちは小さいころから決断したり交渉したりするスキルを学んでいる。この 2 つが、これからのグローバル社会にはなくてはならないスキルだと思います。

オンライン化が進んで、ますます海外との垣根がなくなってきましたしね。冨田さん自身は決断力、交渉力を海外で生活する中で培ったのでしょうか?

まさにそうですね。海外では生きていくのがやっとで、賃料が払えないときもあったんです。払えない時は、「2 ヶ月待ってくれ」って交渉しないといけない。そういう場面をたくさん経験してきました。その積み重ねが、今のビジネスにすごく役立っています。

写真/田尻陽子

それはまさに、生きていくための力ですね!日本国内でそういう力を身につける方法はありますか?

正直なところ、簡単ではないと思います。でも例えば経営者コミュニティ等に所属してみるとか、仕事以外、会社以外のつながり、コミュニティを増やして見るといいかもしれません。

冨田さんは運よくそういうコミュニティに出会ったことで事業を始めるに至った、ということでしたが、出会うためにはどうしたらいいでしょう?

とりあえずいろいろ足を運んでみることですね。人生って計算できないことがいっぱいあると思うんですよ。たくさん経験を積んで、自分がどう感じたかで物事を決めること。よく「自分の心の声を聞け」って言いますよね。それが大事だと思います。

点と点をつないだ先に。答えは自分の中にある

「自分にしかできないことって何だろう?」って悩んでいる人はたくさんいると思うのですが、それは自分がやってきたことをつなげた先にあるかもしれない、ということでしょうか。

そうだと思います。スティーブ・ジョブスのスピーチ『Connecting the Dots』の言葉「将来を見据えて点と点をつなぐことはできない。あとになって振り返ってみないと繋ぐことはできない」がまさにそれなんです。

写真/田尻陽子

確かに、冨田さんのビジネスは、これまでの経験をつないだところから生まれていますね!

プラスアルファばかりしてきた人生だった私ですが、自分の歩みを振り返ったとき「なんだか全部つながるじゃん!」と思ったんですね。これ以上プラスするより、やってきたことをブランディングした方が絶対いいと思ったんです。私にしかできないことで、社会貢献出来たらいいなって思っています。

苦手なことを克服する必要はない?

日本では会社やコミュニティの中で全てを完璧にすることが求められますが、みんな自分の得意な分野に特化したらいいと思うんですよ。できないことはできないから、みんなでできないことを補完しあってやればいい、それだけだと思います。

自分の得意なことに気づくために、なにかやっていることはありますか?

得意なことを思い出す時間を作って、それを小さなToDo リストに落とし込んでみるとか、周りの友達や両親、気を許している仲間に、「私って何が得意だと思う?」と単刀直入に聞いてみるのもいいと思いますよ。私自身も、たまに振り返りで聞いてみたりしています。

写真/田尻陽子

それならすぐにできそうですね!

あとは周りに頼ること。全部やらなきゃと思わなくていいと思うんです。できないことは最初から言っておく。
それも交渉力に繋がっていくと思います。

自分が一番でいられる場所は自分で作る

アイドルになりたかったのは、結局のところ「わたしを選んでほしい」っていう気持ちからだったと思います。

写真/田尻陽子

芸能活動を再開された今はどう感じているのでしょうか?

今は、シンプルに「喜んでもらえる」ことが嬉しいですね。以前は AKB について言われるのがすごく嫌だったけれど、今は「それで喜んでくれるなら」と思えるようになって、すごく考え方が楽になりました。

たくさんの地元の方が喜んでくれるのを見て、そう思えるようになったんですね。

たくさんの国を訪れたことも、とても貴重な経験でした。実際に海外に出ないとわからなかったこともたくさんありましたし、改めて日本人ってとても素晴らしいと思うようになりました。今の世界には、日本の和心、協調性が必要だと思うんです。

写真/田尻陽子

それはどういうことでしょう?

例えば道徳って、海外ではありえないような考え方だそうなんです。鳥居の前でお辞儀をするとか、ご飯が出てきたら手を合わせて「いただきます」をするとか。

なるほど、日本人にとっては至極当たり前のことだけど、海外の方にとってはすごいことなんですね。

そうなんです!でも発信しないと、どんなに素晴らしくても知ってもらえない。だから私は着物を着て、外国人にわかりやすく日本の素晴らしさを知らせたいと思って活動しています。

写真/田尻陽子

10 代の頃とは視点が大きく変わったんですね!自分を見て欲しかった時代から、自分が何かを紹介したいっていう。

全く変わりましたね。こんなに素敵な場所とか素敵な風景とか素敵な考え方が日本にはたくさんあるのに本当にもったいない。

今後はどのように事業を展開していく予定なのでしょうか?

先にもお話ししましたが、これからは、英・芸・農ががお互いに影響しあうような事業展開を考えています。
私のメインはやはり芸能活動です。国内で戦うというよりは中国やベトナムなどのアジアで戦いたいと思っています。今は、ベトナムで日本人タレントとして認知されるように活動しています。ベトナムには有名な日本人タレントっていないんです。それどころか、いわゆる芸能人が少ない。ベトナムでタレントとしてしっかり認知を広げていきたいです。
並行して、プロデュースしている MIKODOLL®︎をもっと有名にしたい!今でも、イベントに出演しているんですよ。農業では、ベトナムの技能実習生を地元の香川県三木町に呼べないかと考えています。日本の技術をもっとベトナムに広めたいんです。自治体とも交渉しながら進めていきたいと思っています。

英・芸・農の 3 つの軸があるっていうのがいいですね!

嬉しいです!これ、一年前は全く理解されなかったんですよ。やっと少しずつ、「こういうことだったんだね」と言っていただけるようになりました。株式会社BEYOULIFE の英・芸・農ビジネスで、私らしく社会に貢献出来たらいいなって思っています。

写真/田尻陽子

それがきっと、冨田さんご自身がナンバーワンでいられる場所でもあるんですね。

AKB では正規メンバーにはなれなかったし、ミスコンでも準グランプリどまりでトップにはなれなかった。だから自分がナンバーワンになれる場所を作りました。会社や組織に合わせるのではなく、自分で一から作っていく。私にはその方が合っているみたいです。

取材/I am 編集部
文/堀中里香
写真/田尻陽子

この記事を書いた人

I am 編集部
I am 編集部
「好きや得意」を仕事に――新しい働き方、自分らしい働き方を目指すバブル(の香りを少し知ってる)、ミレニアム、Z世代の女性3人の編集部です。これからは仕事の対価として給与をもらうだけでなく「自分の価値をお金に変える」という、「こんなことがあったらいいな!」を実現するためのナレッジを発信していきます。

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