人生を変えるI amな本「幸せって何?」子どもの問いに、親は何と答える? 親子で考える力を深める「哲学対話」

目次
子どもの不登校にどう向き合う?
「幸せってなに?」「かわいいってどういうこと?」「大人ってどんな人?」
あなたは子どもに、こんな問いを投げかけられた経験はありますか?
そのとき、すぐに答えられましたか?
『親子で哲学対話』は、そんな子どもたちの素朴で本質的な問いに、親子で向き合う方法を教えてくれる一冊です。著者は、哲学者であり教育学者でもある苫野一徳さん。きっかけは、当時9歳だった娘さんのひとこと──
「パパ、寝る前にちょっと哲学対話やるよ」
実はその娘さんは、過去に不登校を経験していました。夜になると不安に押しつぶされて涙を流し、「学校、やめた」と宣言。そんな日々のなかで出会ったのが、苫野さんが大学や学校で実践していた「本質観取(ほんしつかんしゅ)」という哲学的な対話法でした。
本質観取とは、「幸せとは何か」「信頼とは何か」「愛とは何か」など、抽象的で正解のない問いに対して、「みんなが納得できる答え=共通了解」にたどり着こうとする哲学の思考法です。
娘さんは父のワークショップに参加し、「問いを深く考えれば、納得できる答えにたどりつける」という手応えを得ていきました。そして、夜寝る前の10分間、ベッドの上で親子が語り合う“哲学対話”が始まります。
「教える」ではなく「一緒に考える」のが哲学対話
本書は、この親子の哲学対話を中心に構成されています。収録されている20のテーマは、いずれも子どもたちが日常のなかで抱く根源的な疑問。
そして、著者の苫野一徳氏と娘が対話した内容を収録したものです。
たとえば──
・「よい政治」とは?
・「信頼」ってどういうこと?
・「恥ずかしい」とはどんな感情?
・「かわいい」って、なに?
・「幸せ」は誰にとっての幸せ?
・「ファッション」と校則はなぜぶつかる?
・「存在する」とはどういうこと?
親が答えを教えるのではなく、子どもと一緒に考える。考えを深めるうちに、子どもは思考力と自己理解を深めていきます。苫野さんは、「思考や対話にはコツがある」と語りますが、本書ではその哲学対話の手順もわかりやすく解説されています。
哲学対話には難しい知識も特別な準備もいりません。必要なのは、「問いを恐れない心」と、「一緒に考える時間」だけ。親子で10分、問いについてじっくり語り合う──それは、子どもにとっても大人にとっても、かけがえのない“思考の習慣”になります。
この本は、ただの育児書ではありません。そして哲学の入門書でもありません。
それは、「子どもと、そして自分自身と、問いを通して出会い直す本」です。
哲学対話とは何か?
親子の哲学対話だけでなく、「哲学対話とは何か?」もわかりやすく解説。
哲学に関心がなかった人でも、すぐに哲学対話を日常の中に取り入れることが可能です。
本質を問うことで、いま目の前にある悩みの“輪郭”が浮かび上がり、考える道筋が見えてくる。
実際に本書の読者からは、「親子で本質観取を続けたら、子どもの不登校が改善した」という声も寄せられているそうです。
「子どもの大人が想像している以上に、よく見ているし、考えているし、悩んでいます。そして大人が思う以上に本質を見抜く力を持っています」と苫野氏は言います。
つい、大人は子どもに何かを教えなければいけないと考えてしまいますが、「教える」より「一緒に考える」ことで、より深い相互理解へとつながる。それに親が気づくことができるのではないかと思います。
「正解のない問いを、どう考えたらいいか分からない」。
そんなときにこそ、手に取ってほしい一冊です。
まずは今日の夜、子どもに問いかけてみてください。
「ねぇ、“幸せ”ってなんだと思う?」
いつ、どこで対話する?
・夕食のあと
・散歩中
・寝る前のベッドの上
たった10分でいい。「問い」から始める時間は、親子の距離を縮め、互いの思考を深めます。
本書には、「幸せ」「信頼」「かわいい」「大人」「恥ずかしさ」など20のテーマが収録されており、親子で気軽に始められるガイドとしても秀逸です。
こんな人におすすめ
・子どもとの会話に“深さ”を加えたい保護者
・哲学教育や対話型学習に関心のある教育関係者
・自分の「価値観」や「信念」を問い直したい大人

『親子で哲学対話──10分からはじめる「本質を考える」レッスン』
著者:苫野一徳
発行:大和書房
イラスト:こやまこいこ
定価:1500円+税
ページ:192ページ