「好きなことだけで生きたい」けど、簡単ではない——母から娘に送った1冊の本が人生を後押し

高校2年生のとき、母から「ちょっと、これ読んでみて」と手渡された1冊の本。当時17歳だった三村優花(仮名)さんは、この本に描かれた「女性が年齢にとらわれず自由に生きる価値観」に大きな影響を受けたといいます。これをきっかけ […]
高校2年生のとき、母から「ちょっと、これ読んでみて」と手渡された1冊の本。当時17歳だった三村優花(仮名)さんは、この本に描かれた「女性が年齢にとらわれず自由に生きる価値観」に大きな影響を受けたといいます。これをきっかけに、著者と読者の交流が始まりました。
目次
自立が教育方針の家庭
優花さんの地元は青森。母親は会計事務所でフルタイムで働く共働き家庭で育ちました。「家庭の教育方針が“自立”でした。ですから、私も学生のころから女性の社会進出やエンパワーメントに興味がありました」と語ります。
高校生のころ、地元青森で開催された女性のキャリアに関する講演会に参加したところ、偶然にもドラ・トーザンさんがパネリストとして登壇していました。
そこで新刊『好きなことだけで生きる』が紹介され、すぐに購入。この本は何度も読み返すバイブルとなりました。どんな言葉が、1人の少女の人生を後押ししたのでしょうか。
「自分が決めた人生を引き受ける覚悟」
優花さんは交換留学のカリキュラムがある関東の国立へ進学。しかし、2020年4月、新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言が発出され、半年間は地元青森でリモート授業を受けることになりました。
本来であれば2年生の9月から始まるはずだった交換留学。しかし、パンデミックの影響で留学できるかどうかまったく目処が立ちませんでした。
周囲では、交換留学が実現するか分からない中、学科を変更する人もいました。優花さんも「ドラさんの本を読んでいなかったら、くじけていたかもしれません」と当時を振り返ります。
コロナ禍での留学に悩んだ末に出した決断も、本の中の「自分が決めた人生を引き受ける覚悟」という言葉に後押しされたと言います。
結局、交換留学は3年生の秋からのスタートとなりましたが、今度は就職活動と重なるという問題が発生。しかし、「おしゃれで素敵な街」という憧れだけでなく、本から受けた価値観や考え方に触発され、「留学を諦めたら絶対に後悔する」と決断。
留学が決まると、優花さんはすぐにドラさんに「会いたい」とメールを送りました。そしてフランスで再び会う機会を得、帰国後もドラさんの日仏交流の場に招かれ、貴重な経験を積むことができたといいます。
妥協して諦めてしまったら、自分の選択を後悔することになるかもしれないことが「怖かった」。
「自分の意見を言える女性は美しい」
社会人になった優花さんは、この言葉の意味を改めて知ることになります。フランスからのリモート就活を経て、大手メディアへの就職が決まりました。
しかし、社会人1年目にして「自分の意見を言う」ことの難しさを実感することに。
「母親もバリバリ働いていましたし、私自身、学生のころははっきりと意見を言うタイプで、女性のエンパワーメントにも興味があり、ネット記事なども読み漁っていました。だから、てっきり男女平等は当たり前になっていると思っていたんです」
しかし、実際に職場に入ると、まだまだ保守的な価値観が残っていることに驚きました。新卒で配属されたのは営業セクション。全国転勤が伴うため、家庭を持つ男性社員の中には「妻は専業主婦が当たり前」という考えを持つ人もいました。
「今は教えてもらうことばかり、学ぶことばかりですが、違和感を持っている私たちの世代が黙っていたら、これがずっと続くんだなと思って……」
改めて、自分の意見を口にすることの大切さを、17歳のころとはまったく違う感覚で噛みしめています。
「人生のアップデートをしてる?」
そんな時だからこそ、この本を読み返し、今はこの言葉に後押しされているそうです。
社会人になり、希望とは異なる部署に配属され、縁もゆかりもない九州の生活が始まりました。しかし、この地は「すごく自分に合っている」と感じています。
誰も知り合いがいない中で、コミュニティを見つけることに苦戦しながらも、まずは社内で同期や他の社員との交流を図る優花さん。
「フランスに行ったときに、思い切ってメールをしてみるとか、交流会に誘われたら参加してみる。そんな行動が、大きな変化につながると実感できました」
「好きなことだけで生きる」という言葉に共感し、バイブルのように読んできましたが、実際には「好きなことだけで生きる」のは難しさも感じています。
それでも、「私は本と語学が好きです。だから本はずっと読み続けるし、語学の勉強もしています。自分のやりたいことができるチャンスが来たときに、すぐに掴めるように準備をしています」と笑顔で話してくれました。
文/長谷川恵子
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この記事を書いた人

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