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仕事と子育てでクタクタ、ネガティブ感情で闇落ちしてしまう! 「メンタル危機」を簡単に回避する方法とは

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マサチューセッツ総合病院の小児うつ病センター長として、またハーバード大学医学部准教授・脳神経科学者として働きながら3児の子育てに奮闘する内田舞氏が、心を穏やかに暮らすために実践しているセルフケアとは?

内田舞

プロフィール

内田舞

小児精神科医、ハーバード大学医学部准教授、マサチューセッツ総合病院小児うつ病センター長、3児の母。

 経済協力開発機構(OECD)の国際調査によると、日本国内のうつ病・うつ状態の人の数は年々増えており、特に新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年には、それ以前の2倍に増加したと言われている。

 メンタルケアの重要性が増していくなか、精神科医の内田舞氏が、心の状態が大崩れする一歩手前で踏みとどまるためのやさしいケアの方法まとめた書籍『まいにちメンタル危機の処方箋』から、自分のメンタルの守り方を紹介していく。

「その考えにチャレンジしてみる」のワークシート

怒りや悲しみを悪化ささせないワークシート

「怒りや悲しみなどの強い感情が湧いてきたときに、その感情に任せて事態を悪化させたり自分や誰かを傷つけたりしないための方法として、『その考えにチャレンジしてみる』というものがあります」

 と、内田氏は「考えにチャレンジする」という概念を紹介する。内田氏の過去の経験を例にしてみると、ある夜、子どもたちにいくら伝えても部屋の片付けをいつまでもせず、怒りの感情が湧いてくるのを感じたことがあったという。

 このとき、内田氏の頭にあった考えは、「子どもが私の言うことを聞かないのは、私へのリスペクトがないからだ」というものだった。そのときに、この考えに対してチャレンジしてみたという。

 ここでいう「チャレンジ」とは、普段は生まれては流れていってしまう自分の考えに対して、能動的に向き合ってみる、積極的に働きかけてみる、というイメージに近い。

 具体的な流れは、以下のようなものだ。

「子どもたちが私の言うことを聞かないのは、私へのリスペクトがないから、というのは本当?」

「いま私は、このイライラした感情を感じる必要が本当にある?」

「この場で必要なのは、子どもに私の言うことを聞かせること? それとも部屋を片付けさせること?」

 このように思考を巡らせていくうちに、徐々に冷静になっていくという。

「私へのリスペクトがない!」

「子どもは単純に遊ぶのが楽しくてやめられないだけで、私へのリスペクトを持っているかどうかとは↓

「本来の目的は言うことを聞かせることではなく、片付けてもらうこと。どうしたら子どもが片付けたくなるかを考えよう」

 自分の考えにチャレンジしてみることによって、こんなふうに思い直すことができるかもしれない。内田氏は、こうしたチャレンジを心がけることで、心に負担をかけずに暮らしやすくなると言う。

「私たちは、ネガティブな感情を自覚したとき、怒ったり叱ったり泣いたりして、相手をなんとか変えようとしてしまいます。もちろんそれが有効なときもありますが、違う対処法もあるのです。そこで一旦立ち止まって、その状況が生まれている原因と、そもそもの目的(自分が果たしたいこと、ゴール)を明らかにすると、少し心に余裕が生まれ、やるべきことが見えてくるはずです」

感情が生まれたプロセスを俯瞰してみる

自分の考えにチャレンジしてみると言っても、初めはどのようにすればよいのか迷ってしまうだろう。そんなときには、以下の6項目を軸に考えを整理してみるとやりやすい。

①場面:シチュエーション。何が起こった?

②考え:そのとき自分に浮かんだ考えは?

③感じたもの:そのとき自分が感じたものは? 小さなことでもすべて書き出してみる

④その根拠:なぜ②の考えが浮かんだのか、その根拠は?

⑤対抗する根拠:②の考えに対抗する根拠は?(「②のように感じる必要はなかったのでは」「②のように感じたのは間違いではないか」)

⑥新たな視点:④と⑤を秤にかけて、もう一度冷静に捉え直してみる

①場面

 具体的に何が起きたのかを考えてみる。余裕があれば、紙に書き出してみるのもいい。「5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)」を用いるとやりやすい。

②考え

 ①の状況下で、どんな考えが頭をよぎったか。自分を悩ませている思考はどのようなものか。

 ここでは、パッと浮かんだ考えをひとまずすべて書き出してみるのがポイント。できれば、「相手は私のことが嫌いなんだと思った。その後、なぜ嫌われなければならないんだろうと怒りがわいてきた」というような感情の変化の流れも詳しく書き留めておくといい。

③感じたもの

 ここでは、心に感じたものだけでなく、体に直接的に感じる感覚にも目を向けてみる。「胸がしめつけられて息苦しくなった」「体が熱くて、手に汗がにじんだ」「走った後のように心拍数が上がっていた」「眠くて仕方がなかった」「なぜか笑いたい気分だった」など、心身の反応を記していく。

④その根拠

自分が②のように考えた根拠は何か、エビデンス(事実)をあげてみる。根拠について考えるとき、「事実」と「意見」を分けることが大切。ここではなるべく、考えを裏付ける事実や証拠をあげてみる。

⑤対抗する根拠

 続いて、「②の考えをくつがえす根拠」、つまり、“自分の考えが間違っているといえそうな根拠”についても考えていく。実際にはいま自分は②の考えを持っているものの、あえて反対意見も探してみる、というアプローチ。

「②の考えをくつがえす事実はある?」

「もっとポジティブな見方はできる?」

「現実的に考えてみると…」

「相手からは、この状況はどう見えている?」

 具体的には、こんなふうに考えてみる。

 自身に起きた状況を客観的に捉えるのが難しければ、同じような状況にある友人に相談されたと過程し、「私ならどんなアドバイスをするか」と考えてみるのもいい。

⑥新たな視点

④(自分の考えを裏付ける根拠)と、⑤(自分の考えをくつがえす根拠)を見比べて、もう一度、起きた出来事や湧き上がってきた考えにフォーカスしてみる。

・自分はいまどう感じているか

・自分の感情や考えに、なにか変化は起きたか

ネガティブ感情がなくならくてもいいワケ

  たとえネガティブな感情がすべてなくなってはいなくても、自分の考えになんらかの変化が生まれていたり、新しい視点が加わっていれば成功だと、内田氏は言う。

 最初はうまくいかなくても、少しずつ練習することで、自然に「考えにチャレンジする」ことができるようになり、感情に振り回されてメンタル危機に陥ることを回避しやすくなるはずだ。

この記事を書いた人

I am 編集部
I am 編集部
「好きや得意」を仕事に――新しい働き方、自分らしい働き方を目指すバブル(の香りを少し知ってる)、ミレニアム、Z世代の女性3人の編集部です。これからは仕事の対価として給与をもらうだけでなく「自分の価値をお金に変える」という、「こんなことがあったらいいな!」を実現するためのナレッジを発信していきます。

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