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人間が悩むのは脳が執着するせい!? 脳内科医が教える、悩みの意外な解決法とは

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多くの悩みごとの元凶となる執着。この執着から解放されるコツについて、加藤プラチナクリニックの加藤俊徳院長が教えます。

プロフィール

脳内科医加藤俊徳

(かとう としのり)脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。 株式会社「脳の学校」代表。昭和大学客員教授。発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニングの提唱者。小児から超高齢者まで1万人以上を診断・治療。著書に『悩みのループから解放される!「執着しない脳」のつくり方』(大和書房)などがある。

生きていれば、悩みは尽きないものです。

でも、悩みごとの少なからずが“執着”から生じると知ったら、意外に思われるのではないでしょうか?

「自分は、執着心はないほうだけど……」と考えるかもしれません。ですが、ここでいう執着は、もっと幅広いものです。例えば、

「あの人に言われたイヤなことがずっと忘れられない」

「別れた恋人や亡くなった人のことを何度も思い出してしまう」

というのも執着に含まれます。「いけない」と自覚していながら、スマホやゲームにかける時間が長すぎるのも執着といえます。ついでに言うなら、良くない人間関係をズルズル続けてしまうのも執着の可能性があります。

こうしてみると、執着がまったくないという人は、ほとんどいないでしょう。

このような、執着から生じる悩みを解決するヒントを教えてくれるのは、加藤プラチナクリニックの加藤俊徳院長です。加藤院長は、著書『悩みのループから解放される!「執着しない脳」のつくり方』(大和書房)で、脳の仕組みにもとづいたメソッドで執着を手放す方法を多数記しています。その一部を今回紹介します。

自覚しないまま執着していることは多い

執着を手放す第一歩は、「自分が何に執着しているのか」に気づくことだと、加藤院長は言います。

裏を返せば、自身の執着を自覚していないことが多いのです。

加藤院長は、父親の愛情を知らずに育ったAさんの例を挙げています。Aさんは、何かよい出来事があってもすぐに過去のイヤな経験を思い出し、素直に喜ぶことができませんでした。

加藤院長は、Aさんに「自分ではどうにもできない過去の記憶に縛られ、『自分に幸せになる権利はない』『自分は家族を持てない』などと思う必要はありません」などと諭しました。これでAさんは自身の執着に気づき、気持ちがラクになったそうです。

これとは別に、他人の価値観を追い求めるかたちの執着は「本当に多い」と、加藤院長は指摘します。例えばお金持ちを見て、「お金を持っている人はすごい」となり、自分も相当額のお金を持とうと奮闘します。これも、他人の価値観に引きずられて執着していると、まず気づくのが重要です。

未来への目標を持つことで執着は捨てられる

ひと口に執着といっても、悪い執着と良い執着があるそうです。

そして、良い執着を持つことが、悪い執着を手放す助けになると、加藤院長は説きます。

未来への夢や目標を持つことは良い執着です。悪い執着はたいがい、過去の嫌な記憶を繰り返し思い出している状態ですが、未来に思いをはせると、過去のことはあまり考えなくなります。

大谷祥平選手は、これまで数々の記録をうち立てていますが、過去の栄光には執着していないはずです。むしろ、かつての戦績を超えるべく、未来に執着していることでしょう。

対して、引退した選手や定年退職した会社員は、仕事に関しては未来への前向きな執着心が持てず、悩み苦しむこともあるでしょう。ここは、過去の業績は断ち切り、別のやりたいことへの執着を持つ必要があるというわけです。

脳番地の偏った発達が執着を生む

そもそも執着が生まれる仕組みはどうなっているのでしょうか?

加藤院長は、これを「脳番地」で説明します。

脳は、多数の神経細胞から成り立っていますが、同じような働きをする神経細胞は寄り集まって、約120の集団を作っているそうです。それら各集団を、脳番地と呼びます。そして、脳番地を機能別に整理すると、思考系脳番地、理解系脳番地、感情系脳番地など、8つの系統に分かれているのです。

人によって、よく使っていて発達している脳番地であれば、ほとんど使われず未発達の脳番地もあります。

脳番地に偏った発達があると、それに関連した執着が生じやすくなるそうです。

例えば、運動系脳番地ばかりが発達していると、同じ行動をとりやすい傾向が出てきます。言い換えると、特定の行動への執着が強くなるわけです。

いわゆるスマホ脳は、スマホを扱うのに必要な脳番地だけ発達していて、ほかの脳番地の成長はストップしている状態です。

同様に、過去の出来事での執着に苦しむ人の多くは、思考系、感情系、記憶系の脳番地ばかりを使っているそうです。過去のイヤな記憶を何度も掘り出しては、落ち込んでいるのです。

発達していない脳番地を鍛えることが執着脱出のカギ

脳番地を理解することで、執着から解放されるヒントが見えてきます。

例えば、自分の生活スタイルを変えにくい人や、人の期待に応えようとして疲弊している人は、思考系脳番地に問題があります。

そこで、思考系脳番地のトレーニングをするわけです。加藤院長は、朝一番に今日の目標を15字以内で考えることをすすめています。それは、「職場の人に大きな声で挨拶する」「本を50ページ分読み進める」といった、小さな目標でかまいません。これだけでも、思考系脳番地の活性化につながると言います。

また、空腹でもないのに間食してしまうのは、脳の覚醒が低下していると起きやすい現象です。このとき、脳は運動系脳番地を使いたがります。咀嚼も運動の1つなので、間食に走りがちになるのです。

よって、散歩やストレッチなど体を動かして、脳の覚醒レベルを上げることが、健康的な解決策となります。あるいは、通勤・通学のルートを変え、新鮮な景色を見ることで、視覚系脳番地を鍛えるのも効果的だそうです。


以上、ざっとですが、『悩みのループから解放される!「執着しない脳」のつくり方』のコアとなる内容を、シンプルに紹介してみました。もしもあなたが、根強い執着で苦しんでいるのなら、本書はとても役にたつでしょう。実践的な解決法も多いので、いくつか試してみてはいかがでしょうか?

・参考までに各章のタイトルは以下のとおりです。
第1章: 執着は脳が変わらず「ラクをしている」状態
第2章: 「良い執着」「悪い執着」を上塗りしよう
第3章: 脳番地ごとに執着が生まれる
第4章: 執着を変える脳番地トレーニング36

この記事を書いた人

鈴木 拓也
鈴木 拓也
都内出版社などでの勤務を経て、北海道の老舗翻訳会社で15年間役員を務める。次期社長になるのが嫌だったのと、寒い土地が苦手で、スピンオフしてフリーランスライターに転向。最近は写真撮影に目覚め、そちらの道も模索する日々を送る。

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